静東ストレンジャー、それは「知られざる静東(静岡県東部)の魅力」をストレンジャー(よそ者)ならではの視点と感性で発掘する特命取材団。
長年暮らした東京を離れて東部(沼津市)に移住した、中部(静岡市)出身者のSage(セージ)が今回もお届けいたします。
駄菓子……老若男女を問わず、この響きに心ときめかす方は多いことでしょう。
「あれが一番好きだったなぁ……」
「あそこでみんなと一緒に食べたっけ……」
「あの人によく買ってもらってたよ……」
このような記憶がよみがえり、心が温かくなる方も大勢いると思います。
今回ご紹介するのは、そんな魔法のアイテム「駄菓子」を通じて人と地域をつなぐスポット、JR沼津駅南口エリアの「新仲見世商店街」にある「昭和レインボー」というお店です。
こちらは単なる「駄菓子屋さん」ではありません。
まずは外観をご覧ください、ここを見るだけでも今が令和だという現実を忘れてしまいそうになります。
店内はもっとすごくて、まさに「昭和ちびっこ文化のカオス状態」なんですよ。
壁面をすき間なく埋め尽くしているのは、懐かしいアニメのシール、人気キャラクターのお面やメンコ、時代を彩ったアイドル歌手のブロマイド等々……当時を知る世代ならば感涙必至なアイテムの数々。
どちらを向いても色とりどりで「レインボー」という店名がダテじゃないことが分かります。
昭和レトロイベントも主催する名物店長さん
こんなワクワクするお店のオーナー兼店長が、田中剛さん(55)です。
手にしているのは売れ筋の駄菓子だそうですが、ベストセラーは昔からあまり変わらないそうです。
田中さんは単にお店を営むだけではなく、「昭和レトロをテーマとした商店街活性化イベント」も定期的に開催しています。
すでに恒例化されている「昭和レトロまつり」には昭和の特撮ヒーローを演じた俳優さんたちも毎回出演し、それを観ていた元・子どもはもとより、初めて作品を知った現役の子どもたちの心までもガッチリ掴んでいます。
また、昭和レインボーは「県外から訪れたアニメファンの立ち寄り所」という役割も果たしています。
沼津市が舞台となった某人気アニメの愛好者が数多く集まる「ファンサロン」でもあるのです。
ここで初めて会ったファン同士が意気投合することも多々あるそうで、「静岡東部の新たな玄関口」としても注目を集めています。
本来の「駄菓子屋メイン顧客」にも大好評
大人のお客様から支持されている昭和レインボーですが、駄菓子屋さんのメイン顧客である「お子さんたち」も大切にしています。
この取材中にも小学生のお客様が連れだってやって来ましたが、田中さんはしっかり「優しい店長さん」として振る舞っておられました。
田中さんによると、放課後の児童ばかりではなく「習い事帰りの親子連れ」などもよく訪れるのだとか。
頑張ったご褒美としてお母さんから好きなお菓子を買ってもらったりしているそうで、その微笑ましい様子が目に浮かびます。
近隣のお客様ばかりではなく「ウワサを聞いてバスに乗って来店する親子連れ」などもいらっしゃるといい、昭和レインボーというのは「親子の思い出をつむぐ場」にもなっているわけですね。
普通なら接点の生まれない同士も繋がる場
昨今は「人と人の関わりが希薄な時代」などと言われていますが、どうやら昭和レインボーに関してその心配はないようです。
お店には「下は園児から上は80代後半まで」という幅広いお客様が訪れるといいます。
年齢差およそ80歳の両者は通常ならば接点を持ちづらい同士ですが、昭和レインボーだと「年代を超えて交わることも珍しくない」のだとか。
大昔のメンコに刷られた時代劇スターに興味を持った我が子から「これ、何ていう人?」と訊かれたお母さんが答えに窮していると、近くにいたおじいさんが「これはね、××××という俳優さんなんだよ」と教えてあげる……なんてシーンも、昭和レインボーでは見られるのだそうです。
新たな絆が生まれたケースは他にもあります。
お店に出入りするなかで「昭和歌謡曲」の魅力に目覚め、当時のレコードなどを集め出したという平成生まれの若者がいるそうなんですが、なんとその情熱を田中さんに見込まれて、現在では昭和レトロイベントのスタッフを務めているんだとか。
当初はお客さんとして「楽しむ/迎えられる側」だった人が、やがて「楽しませる/迎える側」になるなんて、すごく素敵な話だと思いませんか?
支援者も徐々に増えてきて楽しみな今後
どんなジャンルであっても「新しく何かを始める」というのはたやすいことではありません。
昭和レインボーにしても例外ではなく、最初はなかなかコンセプトを正しく理解してもらえなかったといいます。
しかし開店から無事2周年を迎えた現在では、商店街の皆さんも田中さんのイベントを楽しみにしてくれているんだとか。
その象徴が、新たに店頭に設置されたこちらの「超アンティークなテレビ」です。
昭和レトロがブームになって以降「レトロっぽく作られた新品」が多数出回るようになりましたが、こちらのテレビは「正真正銘の年代物」なんですよ。
所持していた方が昭和レインボーの活動に共鳴し、「こちらなら有効活用してくれそうだから」と寄贈してくださったんだとか。
まさに「継続は力なり」というやつで、2年間の地道な活動が周囲の信頼を勝ち取ったわけですね。
この貴重なテレビは映像が映せるように改造され、権利元から許諾を得た昭和時代のテレビドラマや記録映像を流す「街頭テレビ」として活躍しています。
「駄菓子や懐かしいオモチャなどを通じて『世代を超えた人と人の繋がり』を創る」
「昭和レトロのパワーで沼津駅周辺に活気を取り戻す」
昭和レインボーはこんな使命を担ったお店だと私は思います。
あなたも一度お店に足を運び、その目で確かめてみませんか?
お子さんがおられるならば是非ご一緒に!
店内の商品やグッズを通じて「これまでされてこなかった会話」が新たにできるようになるかもしれませんよ!?