
サークルがなくなることが最終目標です。そう語るのは、静岡大学LGBTサークルgrandioseに所属するM・N(静岡大学3年生)さん。活動場所が非公開なのは珍しいなと思ったら、そこには性的マイノリティの方々に対する大きな気遣いがありました。ここ静岡県で、当事者、非当事者の方々はどのような日常生活を送っているのか。静岡県の社会が少しでも生活しやすい場所になってほしい、そんな思いを話してくれました。
(※本稿ではプライバシーに配慮し取材に協力してくださったgrandioseメンバーの写真を掲載いたしません。ご了承ください)
自分のセクシャリティ(※性的指向)に正直でいられる
私たちはLGBT当事者、非当事者に関係なく性的マイノリティの居場所作りを目標にしています。活動は週に一回みんなでお昼ご飯を食べながら、メンバーの恋愛相談やLGBT関連のニュースについて話し合ったり、不定期でセクシャリティについての図書館展示や勉強会などを行ったりしています。活動場所は非公開で、連絡をいただいた方にのみお伝えしています。
サークル内での自分の名前は、正式な名前でなくても構いません。トランスジェンダーの方は性別が限定されるような名前に違和感を覚える方もいるので、自分が呼んでほしい名前で自己紹介してもらいます。セクシャリティも言える人だけ言ってくれればいいよ、というスタンスです。
様々なセクシャリティが集まるからこそ面白い
私たちは性的マイノリティの当事者だけでなく、非当事者も参加しています。非当事者の方の参加理由は、BLや百合の作品が好きだったり、LGBT問題について興味があったりと様々です。当事者、非当事者にかかわらず、みんなで集まって話し合うというのが活動の楽しみでもあります。
この前は、アセクシャル(※他者に対して性的欲求や恋愛感情を持たない人のことをいいます)のメンバーからの「好きとは何か?」という質問から議論が始まりました。パートナーの愚痴大会なんかも行われたことがあります。普段考えないようなことを真面目に議論し、多様なセクシャリティのなかにも共通点や相違点があるとわかりとても面白かったです。
同じ境遇の人が近くにいる当たり前
私はLGBT当事者ではなくて異性愛者なんですけど、ゼミの研究テーマがLGBTで先生から紹介していただいて1年生の後期からサークルに入りました。メンバーは7:3で当事者が多いと思います。今いる部員たちは入学してから人づてやツイッターを見て入ってきてくれました。
当事者の人たちは同じ境遇の人に出会って、居場所が作れてるのかなと思います。なかには、セクシャリティがわからないですっていう人もいます。活動を通して自分自身を知り、セクシャリティを見つけていくという人も少なくありません。
サークルがなくても居場所がある日常になってほしい
私たちだけでなく、私が関わっているLGBT団体の最終目標は「団体がなくなること」です。特別な居場所を作らなくても、当たり前に自分のセクシャリティと生きていける社会を目指しています。結婚や性別役割の在り方も、今では色々な形が議論されるようになりました。LGBTに関わる課題もこのような問題と同じように、数十年後には色々な形が認められる社会になっていたらいいなと思います。
大学生ぐらいになると性別違和で悩んでいる人もいると思うので、そういった人たちにサークルの存在を知ってもらって、興味があったら来てほしいなと思います。
取材を終えて
若い世代を中心に理解が広がってきたとはいえ、まだまだ性的マイノリティの方々は表に出づらいという現実を知りました。同性愛、異性愛、無性愛も当たり前な社会になって、みんなが自分を大切にできたら素敵だな。
制作:静岡時代編集部