みなさんご存知の通り、「勤務時間は1日8時間、1週40時間まで」「それを超えたら残業代(時間外手当)が支払われる」というのが基本のルール。このルールとは別に、「変形労働時間制」という制度もあります。
この制度はルールが少し複雑で、制度を導入している企業でさえ、正しく理解できていないことがしばしば。残業代を減らそうと制度を悪用する企業もあるかもしれませんので、働く側がきちんと学んでおくことが大切です。
パートにも関係する「変形労働時間制」とは?
例えばキャンプ場で働く場合を考えてみましょう。12月から2月など、冬場は仕事がヒマになりますが、ゴールデンウィークや夏休みなどは、週1日休むのがやっとの繁忙期。働く時間も自動的に長くなります。
このように、曜日や季節によって忙しさの差が激しい職場では一般的なルールがそぐわないことがあります。忙しい時はしっかり働き、閑散期には無理に働くことがないよう、会社や従業員にとってより働きやすい環境を整えられるのが「変形労働時間制」のメリットです。
1年単位・1か月単位の変形労働時間制とは
1年単位の変形労働時間制とは、1週40時間の労働時間を1年間の範囲で平均してカウントすることができる制度です。例えば夏の繁忙期は1週60時間働き、冬は1週20時間勤務などというように、季節変動に応じた調整が可能です。
1年間の間に1週40時間、1日8時間を超える日があっても構わないという制度です。
1か月の変形労働時間制も同様に、1週40時間=1ヵ月(4週)160時間の間であれば、40時間を超える週、8時間を超える日があっても構いません。例えば忙しい週末は1日10時間、余裕のある平日は1日6時間にするといったように、状況によって調整することができます。
上記のように、決められた範囲であれば1日8時間、週40時間を超えたとしても残業代(時間外手当)は支払われません。
なお、1年単位の変形労働時間制は必ずしも1年単位でなくても構いません。1か月~1年以内で自由に設定することができますし、1か月単位の変形労働時間制も1か月以内の一定の期間で適用することができます。企業がこの制度をうまく導入することで、残業代を削減することが可能です。
変形労働時間制の基本ルール
上述の通り、変形労働時間制には1年間単位と1か月単位の2種類があります。例えばキャンプ場などは1年を通じてシフト調整の必要がありますので、1年単位の変形労働制を導入するとよいでしょう。
この制度にのっとって働く場合、会社は一定期間のシフトをあらかじめ従業員に提示する必要があります。例えば1か月の変形労働時間制の場合、翌月1か月分のシフト表があらかじめ決められ、従業員はそのシフト表通りに働きます。
この決められたシフトは必ず守らなければなりませんので、突然「来週のシフトは9時~15時だけど、10時からに変更してもらえない?」などというのはルール違反。
「変形労働制で働いているのにシフト変更がよくある」という場合は、会社が法律違反をしている可能性が大です。
残業代の支払いを逃れようと、ルールを守らず制度を悪用する企業もありるかもしれません。「うちは変形労働制だから」と言われている場合で疑問があるときは、労働基準監督署などに相談してください。
変形労働時間の残業代はどうなる?
労働基準法では、原則、1日8時間以上働いた場合、8時間を超えた部分には残業代(時間外労働手当)が支払われます。しかし変形労働時間制では、あらかじめ合意した勤務表で「1日10時間」という日がある場合、10時間を超える部分については残業代がつきますが、10時間以内であれば残業代がつきません。
また、「今日予定を超えた時間分、明日早く帰っていいから相殺(そうさい)しよう」などということもできません。
変形労働時間制は正しく活用してパートも会社もハッピーに
忙しさに合わせて働くことができる変形労働時間制は、会社にとってもパートにとってもうれしい制度。しかし、正しくルールを把握していなければ、不利益になることもあります。自分の身を守るためにも、制度を正しく理解しておきましょう。
参照:1年単位の変形労働時間制 -厚生労働省