ドーモプラスが注目の男子を紹介する連載インタビュー「レコメン図」。今回登場していただくのは、『ミュージカル「スタミュ」』辰己琉唯役や、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』の紫之創役、浪漫活劇譚『艶漢』吉原詩郎役などを演じる俳優「櫻井 圭登(さくらい・けいと)」さん。


9月には『あんステフェスティバル』への出演が決まっている櫻井さんに、前編では役作りについてのお話や、team柊の仲間とのエピソードなどをたっぷりうかがいました!


インタビュー後編はコチラ

「表現者」として選んだ俳優の道


――まずは櫻井さんが俳優の仕事を始めたきっかけを聞かせていただけますか。


中学校まではサッカー部だったんですが、高校に入ってベースを弾くようになったのがきっかけで、バンド活動を始めたんです。ベースもやりつつ、基本的にはボーカル担当で。歌が好きだったので、ずっと歌手になりたいと思っていたんですけど、僕より歌が上手い人がクラスの中だけで3人もいて、そこで諦めました(苦笑)。でも、どうしても「表現者になりたい」という思いがあって。


僕はもともとゲームが大好きで、プレイしながらそのストーリーでよく泣くんですけど。そうやって、人を感動させることができる何かを、自分も作りたかったんです。自分の作品が、誰かにとっての明日の活力になってくれたらいいなと。そこで、何か方法がないかなと思っていた時に俳優というお仕事を見つけて、今に至るという感じです。





――実際に俳優として活動を始める前には、オーディションを受けたりもされたのでしょうか?


そうですね。いろいろ調べるうちに、まずは事務所に入らないといけないということを知って、やるべきことは分かったから、あとはやるだけだなと。それからいろいろな事務所のオーディションを受けるうちに、今の事務所にたどり着きました。





――表現をする仕事、作り出す仕事はさまざまある中で、“俳優”を選んだ理由はなんだったのでしょうか?


うーん、なんででしょうね……。歌手については「歌で誰かに思いを伝えられる」というざっくりした気持ちだったんですけど。戦うRPGのゲームをしている時に、アクションをやってみたいなと思ったり、そういったことを掘り下げて調べてみたら、最終的に自分の求める答えが役者だったのかもしれないです。


作品の一部になりたいという気持ちが強かったのもありますけど。今は、どんな役をいただいてもその人物の人生を歩めるような、実力のある役者になりたいなって思っています。





役作りは「その役の人生をいっしょに歩んでいくこと」


――人の心を動かすお芝居をするために、役作りの上で大切にしていることはどんなことですか?


僕は現在25歳なんですけど、これまでにいろいろな経験をしてきて、この年齢にもなると役作りの仕方も変えていかないといけないのかなと考えることも多かったんです。でもやっぱり一番大事なのは、その役の気持ちを自分がちゃんと理解してあげることなんだなって改めて思って。


台本は何度も何度も読んで、その台本に対しての隙をなくしたい気持ちがありますし。何を言われても「僕はこう思ったのでやりました」というのを提示できるくらいに読み込まないと、役になったとは言えないんだと思うので。





――役を自分の中に落とし込めるまで、繰り返し読むんですね。


たまに病んでる役だったりすると、本当に病んじゃうんですけど(笑)。でも、それくらいその役を愛して、ちゃんと誠意をもって演じていきたいと思ってます。


――役を自分の中に取り込む段階では、台本の文字を追うことのほかに、考えたり、やってみたりしていることはありますか?


最近しているのは、まず台本を読んでその内容や役についてきちんと理解をしてから、一度自分が思ったことを捨ててみることです。なんというか……街を歩いたりしていると、ふとした瞬間に「こういう考え方もあるな」って思ったりして。


そうやって、いろんな角度からその役の心情を見てみるようにしてますね。外を歩くのは気分転換も兼ねつつなんですけど、そういう時が一番、自分の中で納得できる考えが生まれたりすることが多くて。





――視野を絞って集中しながら、煮詰めるように役を作っていくというよりは、いろんな角度から眺めたり、情報を取り入れたりできるように、気持ちが開いた状態で役にアプローチするんですね。


昔はこう(視野を狭めるジェスチャー)だったんですけど、開くようにしました。同じ景色を見ていても、この役だったらどう見るのかなって考えたりしながら、街を歩いたりしてます。





――そうやって役の目線で過ごしてみるというのは、楽しさもありそうな気がします。2011年の初舞台以来、さまざまな役柄を演じられてきましたが、演技に幅を持たせる上で心がけていることはありますか?


例えば、「あんステ」(=『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」)の紫之創(しの・はじめ)と「スタミュミュ」(=『ミュージカル「スタミュ」』)の辰己琉唯(たつみ・るい)では、全然真逆のタイプにみられるとは思うんですけど、僕自身はそう感じていなくて。


創くんはアイドル、辰己はミュージカル俳優をそれぞれ目指している。考え方はそれぞれちがっていても、(夢を目指す)その気持ちはきっと同じだと思いますし。役作りの時には毎回“その役の人生をいっしょに歩んでいく”っていうことをしているので、自分の中ではそんなに演技の幅については考えていない感覚ですね。


それに、正直なところ、ビジュアルの要素もあるじゃないですか。だから創くんを演じる時には美容はカンペキにして、かわいくなりたいなとやっぱり思います。彼は普段あまり見ないような中性的な男性なので、そこはちゃんとお客さんに提示できるように、身体作りはしなきゃいけないなと。


辰己については“王様のような実力派、学校でナンバーワン”と言われているミュージカル俳優の卵なので、徹底的に実力をつけなきゃと思って。稽古場の段階から、ダンスも歌も誰にも負けないくらいの気持ちで、ひとつひとつ練習しました。





――ダンスについては、創くんのかわいらしいダンスと、辰己のセンターでキレキレに踊るダンスで全く印象がちがいますが、見せ方の工夫はあったりします?


創くんの時には女性アイドルのダンスをよく見ましたね。ハートを作る仕草にしても、女性アイドルの方って、やっぱりちょっとちがうんですよ。ふんわりしているというか。そういう細かい部分を、いろんな動画を見て取り入れたりしました。





役者としての転機となった『艶漢』吉原詩郎役


――これまで出演された作品を振り返って、特に印象に残っている役柄や、自分の中で大きな存在になっている役はありますか?


浪漫活劇譚『艶漢(あでかん)』の吉原詩郎ですかね。22〜23歳だった初演当時はただがむしゃらにやってたんですけど、今になって冷静に考えると、人前でほぼ全裸になる役なんですよ(笑)。そういう経験って、人生であんまりないことだと思うんです。


それに、この作品で、楽しみながらお芝居を作っているたくさんの方々と出会えたことで、自分の価値観も変わりましたし、ある意味では真に役者としての仕事を全うできたような気がしていて。自分の心も、演技の実力的な面でも、一段上のステップに上がれたのかなと思います。





――櫻井さんにとってのターニングポイントとなった作品なんですね。


劇中の世界観はけっこう闇が深いので、そういう作品が好きな自分には合っているのかなとも感じました。演っていて楽しかったです。主演という形で出させていただいたんですが、周りにインパクトの強い役者さんが揃っていて、実力的にも大先輩なので学ぶことがたくさんありましたし、芸能界を生きていく上で「自分はこうしたい」という考え方がはっきりしている方が多かったので、すごく刺激的でした。


役者を続けるにあたり、自分がどうしていくかについても考えたし、今でも考えているんですけど、この作品で共演した方たちと出会っていなかったら、今とは全然ちがったんだろうなと思います。





――出会いは財産ですよね。座長としてのプレッシャーはありましたか?


最初はありましたね。今はもう「楽しもう」っていう思いだけなんですけど。いつかはもっと、そんな先輩たちをも包み込めるような実力と器を持って演じられるようになりたいです。


――露出が多い役ということで、本番に向けての身体作りも大変だったのではと思うのですが、いかがでした?


あれはもう……(笑)。毎日サラダチキンと、あとは春雨しか食べてませんでしたね。腹筋は毎日200回くらい。ダイエットをしながら筋肉もきれいに見える形を目指していたんですけど、なかなか難しかったです。


筋肉にもいろいろあるので「身体の横のナントカ筋が〜」とか「こう鍛えると、ここに筋肉がつく」みたいなことを、稽古前にみんなで調べたりして。たまにめまいがするくらいだったので、夏にやったりしたら、体力的にも死んじゃうんじゃないかと(笑)。それくらいストイックな人が集まっていたので、自分もストイックに取り組めました。





――かなり追い込んだ状態だったんですね。メンタル面ではどんな役作りをされていましたか?


最初はただただ演出家さんがおっしゃることを受けて「これをやればいいんだ」ってがむしゃらに思っていたんですけど。2作目(浪漫活劇譚『艶漢』第二夜)の時に、自分からもっと何か提示できないかなと思うようになって。「演出家さんとぶつかってもいいから、自分のやりたいことをまず提示しよう」って勇気を出して伝えたら、思っていたよりしっかり受け止めてもらえたんです。


ちゃんと自分で責任をもって意見を出すことで、それまで破れなかった自分の殻を、その第二夜で破れた気がしますね。自分を出すことはとても怖かったですけど、大事なことなんだと知りました。その後、演技をしていく上でもいいきっかけになったなと思います。





――それでは、俳優のお仕事をされていて、櫻井さんが一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?


やっぱりカーテンコールでお客さんの拍手をいただいた時ですね。何か伝わってくれていたら嬉しいなと感じますし、お客さんの笑顔や泣いている姿を見ると、この仕事をやっていてよかったなと思えます。


それから、舞台上で相手役の役者さんと(演技を通して)対話ができたり、心が通じ合えた瞬間も好きなんですよ。相手の感情が揺れ動くのが分かって、お互いがいっしょにその時その場を作っているんだと実感できるのがすごく嬉しくて。役者さんによって演技への考え方や姿勢も違ってくるので、面白いなと思うし、興味が尽きないです。





公演を重ねて築いた「team柊の絆」


――先頃『ミュージカル「スタミュ」-2ndシーズン-』に出演されていましたが、それにまつわる思い出深いエピソードがあったら聞かせていただけますか。


2ndシーズンの前に、僕が演じる辰己が作中で所属している“team柊”の、単独レビュー公演(=team柊 単独レビュー公演「Caribbean Groove」)があったんですが。稽古期間が2週間くらいしかない中、ソロ曲も含めてかなりの曲数があったので、1日3曲くらいずつ一気に振り入れをしたり、それと並行して歌のレッスンも進めたりと、5人みんなが本当にがむしゃらになってやっていたんです。


しかも、この時の会場になった舞浜アンフィシアターは、ステージに円形に回る部分や、奈落からせり上がって登場するシーンがあったりと、普段はあまり経験しないようなこともあって。稽古場で「このシーンで、ここ回ってるから」って説明してもらっても、みんな初めての会場だったので実感がわかないんですよ。「え? 今、僕どこにいるんだろう?」みたいな。





――何となく状況が想像できます(笑)。


振り付け、演出をしてくださったのが、会場に慣れている方だったので「またここに戻ってくるから」と教えてくださったりして、戸惑いがあった中でもスムーズに進んだのがありがたかったです。そうやってみんなで乗り越えながら、ほぼ毎日いっしょにご飯に行っては「あそこはこうしたいよね」と何度も話し合いをしましたし。稽古が終わっても「もう帰るよ!」って声をかけられるまでは、みんなで残って自主練をずっとしていたり。


「スタミュミュ」本編の初演では、4人のことを深く掘り下げては知ることができていなかったと思うんです。みんなとても努力家で、だから好きなんですけど。それが単独レビュー公演で「本当はこういう子だったんだな」、「案外情熱的で、負けず嫌いなんだな」とか、これまで知らなかった部分を知ることができて、5人の仲がすごく深まりましたね。そういう意味でも、あの公演は演れてよかったなと思いました。





――みなさん仲がいいのが伝わってきますし、チームワークもよさそうですね。


でも、意外とみんなドライな部分もあったりするんですよ。5人それぞれ役作りの仕方もちがうし、それでぶつかったりもしましたけど、お互いを人として認め合えるから、それも乗り越えられるというか。


そんな5人が揃うなんて、なかなかない環境ですよね。そういう意味では、team柊のリーダーとして真ん中に立たせていただいて、みんなのことをよく見ることができたのが、すごく勉強になったなと思います。





――稽古中など、役柄以外の場面でも櫻井さんはリーダーとしての役回りになることが多かったですか?


大事なところはちゃんとまとめようと思うんですけど、みんなもしっかりしてるので……。それに、僕より年上の丹澤誠二さん(戌峰誠士郎役)にはいろいろ相談にものっていただいて、大人の意見をちゃんとくださったのでありがたかったです。


年下のなおや(北川尚弥/申渡栄吾役)、ゆづ(星元裕月/卯川晶役)、あきら(高野洸/虎石和泉役)も、仕事に対して情熱や野望のある子たちなので、僕自身も負けていられないなってすごく刺激を受けましたし。この5人じゃなきゃteam柊は作れなかっただろうなというのは、今でもずっと感じています。





役として、役者として。「変化し進化していくこと」


――1作目、レビュー公演、2作目と出演を重ねていく中で、辰己琉唯役と向き合うにあたり、心境や役作りの面での変化はありましたか?


ありましたね。初演の時には、辰己琉唯は学園内トップチームのリーダーとして、誰にも負けないような実力を持っている存在だということで、自分の中では「王様のような強い人なのかな」と思っていたんですけど。


1年くらい経って単独レビュー公演、2ndシーズンの時に「辰己も人間だしなぁ」って。弱い部分もあるはずだし、人から信頼される人がそんな帝王みたいな性格なんだろうかと考えたんです。


だから、初演と2作目では(自分が演じる)辰己はかなり変わったんじゃないかと。何かつらいことがあっても自力で正しい答えを見つけて、周りに提示する――そんな器の大きくて、笑顔で人をまとめ上げるリーダーになりたいなと、2ndシーズンの時に思ったので。初演の時とは顔つきが全然ちがっているかもしれないです。





――先頭に立って風格で仲間を率いていくタイプのリーダーから、後ろから背中を押してあげるタイプのリーダーになったという感じでしょうか。


あ、多分そうです。みんなを包み込むような部分もありつつ、それぞれにちゃんと刺激をもらっているというか。お互い高校生同士なので。そういうリアルな感じをもっと取り入れたいなと思って、team柊の5人で話し合ったりもしました。





――5人それぞれ、役がブラッシュアップされて変わっていったんですね。


そうですね。やっぱり、1年経つと顔つきも変わりますし。大人っぽくなったり、性格も少し変わったりしていて、そういうのがすごく面白いなって。多分、僕も変わったとは思うんですけど。


――ちなみに、特に変化を感じたのはどなたでしょうか?


誰ですかねぇ……、あ。あきらは初演の時はけっこう物静かなイメージだったんですけど、今では一番しゃべります(笑)。たまに「うるさいなぁ」って思う時もありますし(笑)。電話越しによくいっしょにゲームをするんですけど、すっごくうるさいんですよ。でも、今のあきらのほうが、僕は断然好きですね。


こうやって変化を感じられるのは面白いなぁと思うんですけど、自分も周りから見たら全然前とはちがうのかなと思うと、ちょっと恥ずかしいですね(照笑)。自分じゃ分からない部分なので。





――シリーズ作に出演されていると、共演者の方とまた作品を作り上げられる楽しさがありそうですよね。周りの変化に刺激を受けそうですし。


そうですね。いっしょに演っていると変化が目に見えて分かる分、負けたくないなって気持ちも生まれます。また次までに、自分も成長していなきゃなというプレッシャーも感じますし。そういう意味では、シリーズものの作品って故郷みたいなものになっていくのかなと思いますね。


成長して考え方も変わったみんながまた集まって、お互いに変化した部分をすり合わせていくので、シリーズならではの難しさもあるのかもしれないですけど。でもそれが、作品のさらなる深みにつながっていくんじゃないかと思います。





8月の酷暑の取材日。スタジオに現れた櫻井さんは人見知りということでしたが、終始柔らかな笑顔でインタビューに応じてくださいました。役作りについてのお話や、team柊のみなさんとのエピソードからは、自分の役柄や共演の役者さんを慈しみながらお芝居と向き合う、櫻井さんの横顔が垣間見えた気がします。後編では役者の仕事を通じて出会った大事な人たちや、休日の過ごし方などについてうかがっていますので、どうぞお楽しみに!


取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)


インタビュー後編はコチラ

【プロフィール】
櫻井 圭登(さくらい・けいと)

1993年2月8日、東京都生まれ。
主な出演作に「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」紫之創役、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」ワールドツアー うちはサスケ役、浪漫活劇譚・歌謡倶楽部「艶漢」主演 吉原詩郎役、ミュージカル「スタミュ」辰己琉唯役、映画「死んだ目をした少年」田中聡役、ドラマ「ファイブ」第4話 真人千和役など、映像や舞台など幅広い分野で活躍している。
今年は「RE:VOLVER」東京公演 10月18日~22日、大阪公演 10月27日~28日の出演が控えている。
official twitter:@SakuraiKeitoO


【櫻井圭登さん動画コメント】

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