女性を中心に圧倒的な支持を集める「檸檬とラクダ」さん。藤枝市のみならず、市外や県外のファンも多い人気店です。
みなさんは、インスタ映え必至の「標本ごはん」をご存知でしょうか? え、知らない? それじゃ人生もったいない!
現在は休業中ですが、この記事を読んで、再開される日に思いを馳せてみましょう。
標本ごはんってなに?
「檸檬とラクダ」さんの代名詞である「標本ごはん」は、その名の通り、まるで標本のようなごはんのこと。
ご自宅や地元の農家で採れる無農薬野菜を使い、自家製麹などの発酵調味料を駆使したマクロビオティック料理が、お皿の上に美しく並べられます。
健康食に興味のある方には、ぜひ食べていただきたいですね。
どこで食べられる?
「標本ごはん」を食べるチャンスは平日の3日間だけ。水曜日に「ゆるびく村」、火曜日と木曜日に「ファミリー民宿 朝比奈」で営業されています。
「ゆるびく村」は、標本ごはん+麹カレー+黒米+デザート、「ファミリー民宿 朝比奈」は標本ごはん+野菜の天ぷら+釜飯+デザートといった違いがあるので、どちらにも足を運んでもらいたいですね。異なる魅力がありますよ。
「ゆるびく村」の標本ごはん
藤枝市瀬戸ノ谷の「ゆるびく村」は、カフェや雑貨屋が点在する小さな村。
「カレーラー」と呼ばれる日替わりのカレー屋で、水曜日を担当しているのが「檸檬とラクダ」さん。
こちらが「標本ごはんと麹カレー(1,500円)」。内容は週替わりなので、リピート要素あり。
ご自宅や地元・山口農園の無農薬野菜が彩豊かに並べられています。
醤油麹や塩麹でやさしい味付け。発酵料理人である兼子さんの経験とセンスが散りばめられていますよ。
カレーにも麹が使われていて、ココナッツと麹でとってもマイルドな仕上がり。
デザートの「麹のパンナコッタ」。瀬戸ノ谷の朝採りいちごを使ったフレッシュで甘酸っぱいソースです。
健康的な食事をすることで、荒んだ生活でボロボロになっていた身体が浄化されたよう。油っこい食事から離れてリセットするのって大事ですね。
「ファミリー民宿 朝比奈」の標本ごはん
一方、藤枝市岡部町の「ファミリー民宿 朝比奈」では、火曜日と金曜日に「標本ごはん」を味わうことができます。
カフェ風の「カレーラー」とはうってかわって、こんな和室でお食事ができるんです。
まずは釜飯の準備。静かな部屋でぼーっと火を見つめるゆったりとした時間。
「標本ごはん」と天ぷらが運ばれてきました。おなじみの燻製卵やコールスロー、おからだんごなどが並びます。
見よ、この美しいオレンジ色!キラキラと輝いていますね。
朝比奈産の肉厚な椎茸をはじめ、タケノコなど旬の野菜が盛られた天ぷら。
サクサクの衣と野菜の食感がたまらない!「標本ごはん」だけでなく、天ぷらもスマッシュヒット。
驚くべきはこの椎茸。めちゃくちゃジューシューで椎茸の旨味が口いっぱいに溢れ出ますよ。
釜飯はほどよくおこげができています。
「いちごと甘酒クランブルケーキ」は、しっとりやさしい甘さで絶品。
「ファミリー民宿 朝比奈」で食べる「標本ごはん」は、食事をする環境も含めて「ゆるびく村」とはまったく違った魅力がありました。
インタビューさせていただきました
――まず「檸檬とラクダ」さんのお名前の由来を教えてください。
ひいおじいさんとひいおばあさんのあだ名が由来なんです。ちっちゃい時に名前が長くて呼べなくて、よしえもんさんの”えもん”が”れもん”になって、みんなに”おらくさん”っ呼ばれていたらくさんが”らくださん”になったんです。
店名を考えていたところで、両親たちが民宿をやっているのですが、私がお店をやっている間、抜けなきゃいけなくて申し訳ないなと思うところもあったり、先祖に繋がる名前ならお母さんたちも喜んでもらえるかな、おじいちゃんとおばあちゃん見ていてくれるかなって思いもあって、「檸檬とラクダ」という名前になりました。
――発酵食ということなのですが、発酵食に魅せられたきっかけはなんですか?
世界一周旅行を5年前にしたんですけど、フライドポテトとフライドチキンばっかり食べていたんです。それが間違いなくお腹に当たらない上に、どこの国でも安定して美味しいし、安価だったので。
そうしたら日本に帰ってきて何にも油ものが食べられなくなってしまって、和食ばっかり食べていたんです。そうした時に、友人が作ってくれた甘酒と醤油で炒めた野菜がすごい美味しくて、砂糖を使わなくてこんなに甘みが出るんだというところにびっくりして、そこから私も甘酒を作るようになったんですね。
作っていたら母に「自分で麹を作ればいいんじゃない」って言われたんですけど、私にはそんな発想がなくて、麹は専門店でしか手に入らないと思っていたんです。母がそんなに簡単に言うんだったらと思って作りはじめたらもう楽しくて、1日目仕込んだ時と3日目に見る姿が違って、ボフッてなるんですけど、それが楽しくていまだに楽しんでいます。
――麹を使うのと使わないので大きな違いはどういったところに出てきますか?
例えばですけど、塩麹を使う時は塩の代わりに使うんですけど、お塩を使うだけでは出せない甘みとコクを持っているんです。たいがい麹というのは、コクとか奥行きをすごい出してくれるので、単純にちょっと甘みを引き立てるための塩をパラって加えるのと同じように代わりに塩麹を入れると、すごい奥深さや甘みも出てくれて美味しいので、そういう意味で使っています。
――独立される前はどういった活動をされていたのでしょうか?
高校卒業してから東京で一人暮らしをしていまして、六本木でOLをしていた時に、週末だけイタリアンのレストランで働いていました。仕事よりそっちのほうが楽しくて、その時にキッシュが大好きだったのでキッシュ屋さんを開きたくて、そういうのもあって食に興味がありました。
仕事をしている時に先輩に見せられた本が「世界一周航空券」で、それを渡された時に、「あ、私、2年後に会社辞めて行かなきゃ」って思って、本当にやめて世界一周旅行をしました。
日本に帰ってきて、両親が民宿で「待ってるよ」っていう圧力がすごかったから(笑)、アパレルとか興味があったし、なんか違うお仕事がしたいなって思いました。料理屋さんは、いずれできればいいなって思っていたんですけど、結局は両親の元で民宿を手伝うことになりました。
そこから、友人のお兄ちゃんが飲食店で人を募集をしているっていう話を聞いて、すごくやりたかったので、すぐ「やります」って言ったんです。どんなお店かもわからないのに。あとから「カレー屋さんなんだけど」って言われて、「カレーかぁー、無知だけど大丈夫かな?」って思いながら始まりました。
――標本ごはんに込められたこだわりとか思いを聞かせてください。
単純に私がちょっとずつたくさん食べたいっていうのがきっかけですね。女の子はやっぱりそういうのが好きじゃないですか。そこから始まったんです。
お野菜ごとに味が変わるんですけど、甘酒があったり塩麹があったり醤油麹があったり味噌があったり、発酵食もいろいろ種類があるので、そういうのを散りばめられたらなって思いました。
――標本ごはんでツアーをしていたんですね。
「森・道・いちば」という愛知でやっている音楽フェスとマルシェが合わさったようなイベントがあるんですけど、実行委員の方がたまたま「コラボ料理をしませんか」ってお声をかけてくださって、本当の標本箱で、38種類のおかずをお出しするっていう形で、一緒にコラボをさせていただきました。
その後「器とか絵の個展はあるけど、ごはんの個展はないよね」っていう話になって、「標本ごはんでツアーしながら日本まわらない?」って言われて、「あ、まわります〜!」って即答したんです(笑)
――今後の展望を教えてください。
そうですね、私はひたすらお料理を作れたらいいんですよね。誰かに食べてもらって、「麹ってこんなにすごいんだ」って思ってもらえればいいんですけど、発酵食がブームになっているので、波に乗っちゃった感があって嫌なんです(笑)。嫌というより、ブームがあるものってたいがい去るじゃないですか。もともと日本には醤油や味噌の発酵食があるので、それを絶えず繋げていけたらなって思いはありますね。
――読者のみなさんへメッセージをお願いします。
山の中でいつでもお待ちしております(笑)
※6月から休業されているので、再開される日を心待ちにしていましょう。
__________________________________
とにかく人との縁に恵まれている兼子さん。それは兼子さんの人を惹きつける魅力があってこそだと思いますが、決断力と実行力がすごくて、ひたすら感心してしまいました。
世界一周を決めた時やお母さんに「自分で麹を作れば」と言われた時、カレー屋に誘われた時など、あらゆるターニングポイントで即決しているんですよね。
キラキラと輝く兼子さんを見ていると、自分の決断と行動でこんなにも人生がおもしろくなるんだなって感じました。
まとめ
「檸檬とラクダ」さんは、地元の食材と発酵調味料を使った「標本ごはん」と兼子さんの魅力がたっぷりの素敵なお店でした。
しばらく休業に入りますが、再開の際には、またパワーアップした兼子さんに出会えるような気がしてすごく楽しみです。