
ドーモプラスが注目の男子を紹介する連載インタビュー「レコメン図」。今回登場していただくのは、舞台「刀剣乱舞」江雪左文字役や、舞台「文豪ストレイドッグス」国木田独歩役など、様々な舞台で活躍中の俳優「輝馬(てるま)」さん。
8月には「七つの大罪 The STAGE」にヘンドリクセン役で出演される輝馬さんに、前編では先頃発売されたDVD「T’s Movie」、写真集「T’s Photograph」についてのエピソードや、役作りの仕方についてお話をうかがいました!
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チーム一丸! DVD&写真集の制作こぼれ話
――まずは、先日発売された輝馬さん初となるDVD「T’s Movie」と写真集「T’s Photograph」についてお話を聞かせてください。香港と日本で撮影をされたそうですが、その時のことで印象に残っているのは?
香港には初めて行ったんですが、人や環境、建物など、日本と全くちがう場所だったので、すごく新鮮でした。それに、日本だったら何か撮影をしていると注目されることが多いんですけど、香港では意外とそういうことに寛容なのか、やりやすくて楽しく撮影できましたね。
日本では廃工場で撮影をしたんですが、あまり見ないようなロケーションで刺激的でしたし、こちらでもいい感じに撮っていただけました。
このDVDと写真集の制作にあたって、携わってくれたヘアメイクさんやカメラマンさんといったスタッフの方々が本当にすばらしくて、やりたいことを存分にやらせてくださったんです。そんな人たちと作り上げたDVDと写真集なので、みなさんに見てもらえたらうれしいですね。
――特に注目してほしいポイントは、どんなところでしょうか?
写真集のうち、日本で撮ったパートがストーリー仕立てになってるんです。カメラマンさんの娘さんからお借りしたクマのぬいぐるみを、僕が救出するんですけど……(実際に写真集をめくりながら)。
――しかも、このシリアスめのカットで輝馬さんが持っているのは水鉄砲では。
そうなんですよ。ほかにも合成感がすごいカットがあったりと(笑)、遊び心がいたるところに散りばめられているので、そういう意味では新しいんじゃないかと思います。みんなで楽しみながら作ったので、それを見てもらったみなさんにも感じてもらえたらといいなと。一味ちがう写真集になっていると思いますので。
「役者は天職」そこに至るまでの意外な経緯
――では次に、役者としてのお仕事についてうかがいたいのですが、はじめに役者を目指すようになったきっかけについて聞かせてください。
大学に通っていた18歳か19歳の時にミュージカル『テニスの王子様』のオーディションを受けさせていただいて。実のところ、当時はこの業界にそこまで興味はなかったんですが「人生一度きりだからやってみよう」と挑戦してみたら合格したんです。それが役者をやるようになったきっかけでした。
そこから乾 貞治役を演じるにあたって、一定期間は続けることになると聞いていたので、大学生をやりながら舞台もやって、漠然とした思いのまま過ごしていたんですけど。それができたのも、大学の先生と制作プロデューサー、両方が理解のある方だったからだと思うので、自分は恵まれていると感じましたね。
そして、大学の卒業が近付いてこの先どうするかを考えた時に、就職活動をしないまま決めるのもと思い、研究職の内定もいただいたんですけど。「さあ、どっちを選ぶ?」という時に思ったのが「自分の好きなほうをやりたい」ということで。
研究室にこもって星を観察する研究職と、舞台に出る役者の仕事……生活の安定や、先の見通しを考えると研究職に心が揺らぐけれど、「自分が30代になった時にどっちの道のほうが楽しんでいるだろう?」と想像すると、やっぱり役者で。それに、役者は今しかできないことだけど、研究職は後からでもできないわけではないなと思ったんです。
いろいろなことを天秤にかけた上で、自分のやりたことをやって生活もしていけたら最高じゃないかと、この道を選びました。今では胸を張って天職だと言えます。
役作りで大切にしているのは「素で演じること」
――意外な経緯があったんですね。「ちょっとやってみようかな」で受けたオーディションに、あっさり受かってしまうのがすごいです。2.5次元作品から、オリジナル脚本の舞台まで、幅広い作品でさまざまな役を演じられてきたかと思いますが、役作りの上で大切にしているのはどんなことですか?
「原作を大切にする」「原作をよく読み込む」という手もあるとは思うんですが、僕は何も考えないでやるのが一番いいと思っていて。
「この役だから、こういう話し方にしよう」とあまり作りすぎずに、その役がどういう立ち位置で、どういう人間なのかという“ベースとなる関係性”をある程度理解したら、あとは素でやることを大事にしています。
社会でも、会社の社長が目の前に現れたら「あ!おはようございます!」って自然になるじゃないですか。それと同じだなと思うので。
――では現実社会の人間同士の関係性を、お芝居のベースにして考えていくんですね。
そうです。昨年、少年社中さんという劇団の「モマの火星探検記」という作品をやらせていただいた時に“部下を一度殴る”というシーンがあったんですけど、イライラしすぎちゃって一度どころじゃおさまらなくて(苦笑)。
でも、やっぱり気持ちに沿わないことをやると違和感が出るものだし、演出家さんや周りの人もそういう部分を分かってくれる人だったので「それはそれでいいよ」と。だから、ヘンに作りすぎずに、人間性を大切にすることを、僕は心がけています。
――では、その作品に原作があるかどうかでは、役作りの仕方は特に変わったりはしないということでしょうか。
……と思うじゃないですか、変わるんですよ(笑)。ざっくり言うなら、2.5次元作品だったりすると作る側の人がいるわけで、その人たちの意見も取り込んで役に反映していかないといけない。
ただ、原作がない作品でも意見をいただく相手が演出家さんや周りの先輩方に変わるだけなので、大きな差はないと思ってるんですけど。“誰から言われるか”ということが変わるだけで、僕の中での役の作り方自体は同じなんです。
――もっと複雑に作りこまれているのかと思っていたのですが、とてもシンプルな考え方なんですね。
シンプルですね。楽しいと思うことをやりたいように1回やってみて、それでダメって言われたら、ちがう方法を考える。普段の生活でも、意識的に引き出しをたくさん作るようにしながらやっています。
型破りな朗読劇が役者としてのターニングポイントに
――これまでの出演作を振り返って、ターニングポイントとなった作品はどれだと思いますか?
仕事のターニングポイントというか、人生のターニングポイントになったのがまずはミュージカル『テニスの王子様』。この作品が僕の中ではすごく大きいです。体力的にも技術的にも、乾はあの時だからできた役だなと思いますし。
そして役者としてのターニングポイントが、これは朗読劇なんですが、石丸 さち子さん演出の「旅するリーディングシリーズ劇場で海外文学Vol.1ロシア『魅惑のチェーホフ』」です。
石丸さんは、泣くなら泣く、叫ぶなら叫ぶと「とにかく全部出せ」という方なので、本当に体力を使いましたね。ヘトヘトに疲れましたけど「自分ってこんなこともできるんだ」「ここまでやれるんだ」という感覚に到達できましたし、あんなにキツくて愛があって、一生懸命になれるものにはそうそう出会えないなと思える作品でした。
枕元に台本を置いて、寝る前も起きた時も「いやー、ちがう!」ってなりながら、稽古場に通ってましたから(笑)。
――朗読劇でそこまで体力を使うとは、なかなかない体験なのでは。
朗読だけど飛んだり跳ねたり叫んだりして動くんですよ。それも普通の舞台以上に。ステージにはイスもないし、普通のお芝居のように出入りもありましたし。
汗びしゃびしゃの、涙ボロボロになりましたけど、その汚さがいいなと。人間らしさを感じさせられて、これまでの人生で強く印象に残った作品になりました。
――これだけ出演作がある中で、挙げられたのが朗読劇だったことに少し驚いたのですが、それだけインパクトがあったんですね。
そうなんですよ。あと、これは僕は出演していない作品なんですけど、石丸さんが演出されて、AKANE LIVさんという元宝塚歌劇団の方が出演されていた「Color of Life」という作品が、観ていてすごく好きだなと思いました。
真っ白い素舞台に、イス2脚と小道具しかないところでやる二人作品で、それで1時間半芝居をするんですよ。この作品にも僕の中での役者人生を変えられたなと感じています。
仕事をしていると「この仕事よかったな」とか「この人好きだな」っていう巡り会いがあると思うんですけど、僕にとってはこの作品もそうですね。
初舞台で直面した大ピンチ
――これまでお芝居をしてきて、一番嬉しかったのはどんな瞬間でしたか?
多々あるんですけど……単純に楽しいんですよね、この仕事が。誰かに出会えた、こういうことができた、観てもらえた、というようなことも嬉しいんですけど、もっと根本的なもので。
自分が楽しいと思うことを仕事としてできていること、そういう仕事に巡り会えたことが、本当によかったなと思います。まさか、田舎から出てきた18歳の男の子が役者をやることになるなんて、思ってもみなかったですからね!(笑)
――人生って分からないところが面白いなと思います(笑)。では、これまでの役者人生で、最も印象に残っているできごとを聞かせていただけますか?
19歳か20歳の時に初舞台だったんですが、その会場がTOKYO DOME CITY HALLという2000人以上入る大きな会場で。初日の二人しか舞台上にいない時に、大失敗をしてしまったんです!
もしも今なら、10年やらせていただいてきた中で、アドリブもききますしどうにかなりますけど、当時は生まれたての子どもみたいなもんですよ。応用も利かず、舞台上には二人しかいないから助けてくれる人もおらず……どうしていいのかも分からず、あの時は地獄でしたね。
――そんな経験をしたら、後は何があってもまぁまぁ大丈夫って気持ちになれそうですね。
もう無敵です。後輩がちょっとセリフを噛んだり、飛ばしたり、殺陣やダンスをミスっても「あの地獄を思ったら、全然余裕だよ!」ってよく言ってますね(笑)。
先輩との飲みの場でも“今までに経験した地獄だった話”みたいに、だれが一番大変な経験をしたか張り合ったりすることがあるんですけど、そこでもよく話題に出してます。
原作愛とともに挑む「七つの大罪 The STAGE」その見所は
――8月に上演される「七つの大罪 The STAGE」、ヘンドリクセン役への意気込みを聞かせてください。
今、絶賛稽古中なんですが、座長の納谷健(メリオダス役)をはじめとする〈七つの大罪〉のメンバーもすごくしっかりしているので、ストーリーの中での自分の役のバランスを取りながら、みんなと板の上で馴染んだ芝居ができるように心がけてやっています。
演出家が僕の大好きな毛利亘宏さんなので、鑑賞しやすくて、愛のある作品になるんじゃないかと思いますね。
――輝馬さんは「七つの大罪」の原作がとてもお好きだとうかがいました。
そう、大好きなんです。僕はもともとアニメをよく観るんですが、この作品も観ていて。出演のお話をいただいた時には本当に飛び上がるほど嬉しかったので、すぐに「やります!」とお伝えしました。
――アクションの要素もけっこうありそうですよね。
ストーリー全体でいうと、やはり得物(=武器)を使うものなので、アクションはかなりあります。素手でも、魔術的な手段でも戦いますし。そういった意味では、すごく盛り上がって、見ごたえもあるんじゃないかと思いますね。
それに……詳しくは伏せますけど、観てくれたお客さんをいい意味で裏切りそうな要素もあるので、それを楽しみに劇場へ来てくれたらと思います。
爽やかな挨拶とともに取材場所に現れた輝馬さん。お芝居についての真面目なお話から、取材陣を爆笑させた初舞台の地獄的エピソードまで、軽妙な語り口で次々と聞かせてくださいました。
後編では、お芝居へのモチベーションについてや、オフタイムの過ごし方、アルバイト経験などについてのお話をうかがっていますので、どうぞお楽しみに!
取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)