ドーモプラスが注目の男子を紹介する連載インタビュー「レコメン図」。今回登場していただくのは「2.5次元ダンスライブ『ツキウタ。』ステージ」葉月 陽役など、舞台を中心に活躍中の俳優「鷲尾修斗(わしお・しゅうと)」さん。


7月26日に幕が上がる舞台「BRAVE10~燭~」に筧十蔵役で出演が決まっている鷲尾さんに、前編では俳優になるまでの道のりや、役作りで大切にしていることなどをたっぷり語っていただきました!


インタビュー後編はコチラ



「何者でもないけど何者にもなれる」俳優の魅力


――まず初めに、俳優を志したきっかけについて聞かせてください。


この仕事を始める前は、友達の親御さんが親方をしている現場で土木関係の仕事をしていたんですが、その時期にたまたまインターネットでオーディション情報を見つけたんです。以前から漠然と「俳優の仕事ってどういう世界なんだろう?」「芸能人ってなんだかモテそうじゃん」って思っていたのもあって(笑)。それでオーディションを受けてみたのが直接のきっかけですね。


そこから続けようと思った理由は、俳優ってどの職業にもなれるけど、どの職業でもないじゃないですか。その“何者でもないけど何者にでもなれる”っていうところに面白さを感じたんです。ホームレスにもなれるし、警察官にも、パイロットにもなれる……それはある意味、俳優という職業でしかできないことで、「いろんなことをやってみたい」という思いも自分の中であったので。





――では、もともと俳優になりたかったというよりは、偶然情報を見つけたオーディションに、挑戦してみたら受かったというスタートだったんですね。


そうなんです。最初はもう、右も左も分からない状態だったんですが、仕事を続けていく中でほかの役者さんを見るうちに、俳優という仕事の魅力に気付いて「すごくいいな」と思うようになりました。


今は舞台へ多く出演させていただいていて、僕はもともとサッカーをやっていたんですけど、舞台とサッカーって共通するところがあるなと感じたんです。チームがあって、いろいろなポジションの人がいて、そのみんなで作品を作るっていう。それに気付いてからはより「俳優っていいな」と思い、ずっと続けようという思いを抱くようになりました。





――2010年の舞台デビュー以来、コンスタントに出演作が続いていますが、その間に気持ちの変化があったんですね。


はい。あと、これまで続けてきてよく分かったのは、この職業をやっていても別にモテないということですね(笑)。サッカーをやっていた頃のほうがモテてたかもしれないです。まぁモテるモテないどころでなく、今はやることがたくさんあるのでそれどころじゃないんですけど。





長く続けていたサッカーと距離を置いた理由


――では、サッカーをされていた時のこともうかがわせてください。プロを目指していたこともあったそうですが、それが初めの夢だったのでしょうか?


そうですね。父も大学のサッカー部の監督をやっていたりして、小さい頃から遊びというとサッカーでした。兄がいるんですけど、兄もサッカーをやっているので、自分で始めようと思うまでもなく、気付いた時にはもうサッカーボールで遊んでましたから。





――あの、少し気になったんですが、鷲尾さんのお名前が“修斗”ということは、サッカーと関係があったり……。


それ、絶対言われるんですよ。僕もそうだと思ってたんですけど、ある時聞いてみたら、おじいちゃんの名前が“修(おさむ)”だからだと。僕が生まれる前、最初は「女の子が生まれる」と言われて女の子用の名前を考えていたらしいんです。


でも、いざ出てきたら男の子だったので「名前どうする?」となって「孫でおじいちゃんの名前をもらった子がまだいないから、修の字を取って“修斗”でいいんじゃない?」と。でも、ずっとサッカーしかやっていないような父なので、サッカーからきているような気もするんですけどね。





――なるほど。ではお話を戻しまして。小さな頃からサッカーをされていたということですが、その後は部活として続けていたのでしょうか?


小学校の時には地域のチームに入っていて、中学校では部活ではなく、地域のクラブチームに通っていました。高校の時には、兄が強豪校のサッカー部だったこともあって推薦でお話をいただいたんですけど、それはお断りして。


サッカーがとりわけ強くはない普通の都立高校に進んで、サッカー部に入りました。卒業後にホームステイのような感じで行ったニュージーランドでも、紹介してもらった現地の草サッカーチームにちょっとだけ入れてもらったりもして。





――それだけ長く続けたサッカーを、本気で仕事にしようと思わなかったのはどんな理由からだったのか、聞かせてもらってもいいですか?


単純に自分の中で限界が見えたんです。この先続けていても多分上までは行けないだろうし、それにサッカー選手って意外と寿命が短いということもあって。その後のことも考えた時に「これをずっと続けるより、もっといろんなことをやって人生を終えたい」という気持ちになったんです。





土木作業の仕事で学んだこと


――その選択の上で、今の鷲尾さんがあるんですね。俳優業の前にされていた土木関係のお仕事には、どんな流れで携わることになったのでしょうか?


海外から戻ってきた後、特にやることもなく過ごしていたら、友達の親御さんが「暇だったらやるか?」って声をかけてくれたんです。その友達もいっしょに働いていたので、そこで4~5年続けていました。


――わりと長い間続けていたんですね。正社員として働いていたんですか?


うーん……土木って正社員というものがあまりないんですよ。日雇いみたいな形でアルバイト求人紙にも載っていたりすると思うんですけど。それをずーっと続けていくと、自分で独立して親方になるっていうのが、多分よくあるケースなんじゃないかと。僕がやっていたのは家の基礎だったので、そこまで免許だったりがいらない部分だったので、アルバイトに近い感覚でやってましたね。





――現場仕事は厳しいというイメージがありますし、その時の経験で学べたこともたくさんありそうですよね。


今、この職業をやっていてためになったなと思うのは、社会人を一度経験していることです。それはだいぶ大きいですね。舞台では上下関係も大切ですし。


それに、土木は家を建てるという裏方仕事なので、同じように裏方として働いてくれているスタッフさんたちの気持ちが分かるという面でも、その経験が生きているかなと思います。釘を打ったり、インパクトも普通に扱えるので、舞台監督さんの手伝いもできますし。僕、図面さえもらえたら、舞台セットが組み立てられるんですよ(笑)。





作品に合わせた役作りへのこだわりとは


――それでは、いよいよお芝居のお話について聞かせてください。これまでさまざまな役柄を演じられてきていますが、役作りで大切にしていることはどんなことですか?


今、2.5次元作品と、原作がないオリジナル脚本の舞台の両方に出演させていただいているんですが、役の作り方が僕の感覚では全くちがっていて。オリジナル脚本の舞台は、いわゆる教科書のようなものが何もないんです。


全部自分の想像で作ることになるので、例えば警察官の役だったら、まず警察官について調べたり、「警察24時」を見てみたりしながら、立ち方はどうなのか、歩き方はどうなのか、どんなしゃべり方なのかというのを、自分の中にどんどん取り込んだりしますね。多分、自分だけで考えて作り込もうとすると、経験値が足りなくなるんです。なので、実際にやっている人を見るのが一番かなって。


だから僕はあまり芝居のプランを立てたりはせずに、何も考えないまま稽古場に行く感覚に近いです。お芝居は人と人との会話なので、相手がどう出るのか分からない段階でプランを作っても、その通りにならなかった時にそこから外れられなくなっちゃうので。ニュートラルな状態で、相手とちゃんとキャッチボールをして芝居を作るっていうのが、大事だと思っています。





――役を演じる上で、警察官役だったら警察官になるための素地だけを集めておいて、中身は空のままの状態で臨むんですね。


そんな感じです。それで、中身は稽古で作っていくという。人間の性質として、それまでに作ってきたものを大事にしたがるので、事前にあんまり固めちゃうと、そこから抜け出しづらくなると思うんですよ。――と、これがオリジナル脚本の舞台の場合ですね。


で、2.5次元作品のほうは、教科書のようなものがたくさんあるんですよ。アニメ化されているものだったら、立ち方も動き方も、声や仕草まで全てがその教科書にあるわけで。ファンの方はそのキャラクターのイメージを持って劇場に来られるので、やっぱりそれは裏切っちゃいけないと思うし、原作者の方や作ってくれた方々の思いもあるので、僕は基本的には原作に忠実に演じたいという考えです。声も大事だと思うので、地声とは変えますし。声優さんの声を何回も聴きながら、なるべく似せられるように練習しています。


それに、僕らは(キャラクターを)借りているので。元となっている声優さんや、アニメを作っている方々への敬意も込めて、原作に対して忠実に演じるというのが、僕なりの2.5次元での役作りなのかなと思います。





――ちなみに、声を似せるには、具体的にどんなトレーニングをするのでしょうか?


テレビでアニメを流しながら、ボイスレコーダーで自分の声を録ったものを流して、その聴き比べをひたすら繰り返す感じです。どこから声を出すと似るのかをいろいろ試したり、声が高いキャラクターだったら喉仏を上げるというか、少し上から出すようなイメージでやってみたり。息の抜き方にも気を配りますし。声優さんにも独特なしゃべり方をされる方がいるので、本当に声については追究しますね。


ある程度、2.5次元作品やアニメが好きな方には声優さんが好きな方が多いので、お客さんの中にも声を聴いて恋をしている人が多いのかなと思うんです。それなら声を似せて役作りをしたら、より一層世界観に入り込んでもらえると思うし、会場が大きな劇場だったりすると、いくら細かく表情を作っていても、後ろの席の人にはなかなか伝わらないので。声ならマイクを通して伝わるし、一番いいんじゃないかと思って、こだわって練習しています。





役者をやっていて嬉しかったのは「原作を動かせたこと」


――これまでの出演作を振り返って、特に印象に残っていたり、ターニングポイントになったと感じているのはどの役柄ですか?


まずは、ミュージカル「忍たま乱太郎」の中在家長次役ですね。大きな作品のオーディションに受かった初めての舞台だったので、そこからいただける仕事が増えましたし、僕のスタート地点だったのかなと思ってます。


それから、最近では「ツキステ。」(=「2.5次元ダンスライブ『ツキウタ。』ステージ」の通称)の葉月 陽役。こちらもオーディションだったんですけど、上演を重ねるうちにいろんな人に僕自身が認知されるようになって、作品自体もどんどん大きくなってきているなと感じます。この2作が自分にとってのターニングポイントになっていると思いますね。





――役作りやキャラクターの人となりで印象に残っているものはありますか?


舞台『CLOCK ZERO~終焉の一秒~』という乙女ゲームが原作の作品に、楓という役で出演させていただいているんですが、1作目の時にはほとんどモブのような状態で、そもそも僕の役はゲーム中でも攻略対象のキャラクターではなかったんです。舞台に登場するのもアドリブのシーンが中心の、日替わりネタをやったりする賑やかし担当みたいな感じで。


そこから今までに5作上演しているんですけど、僕の役がお客さんからだんだん認知されるようになってきて、4作目が終わった後くらいに、原作者の先生から原作のゲームがリメイクされると聞いて、しかも「楓の攻略ルートを足しました!」と。舞台で楓の人気が出たから、それを原作者の先生が気に入って攻略ルートを作ってくれたんです。そうやって“原作を動かせた”というのが、役者をやっていてすごく嬉しく思ったことでしたね。





――鷲尾さんの演技や、それを観たお客さんの思いが、原作サイドに届いたのかもしれませんね。「ツキステ。」ではダンスも披露されていますが、ダンス経験はもともとあったのでしょうか?


いや、ダンスは舞台でやったのが初めてでした。


――では持ち前の運動神経でクリアされたと。


あとは、キャスト全員のあくなき努力ですかね(笑)。ダンス経験があるのは、12人のキャストのうち、2人くらいでしたから。稽古場に着いてすぐにダンスをやって、稽古して、終わった後にもダンスやって帰るというのを、1ヶ月の稽古期間中にみんなでひたすらやっていたので。それが舞台上でも表れたんじゃないかと思います。





取材があったのは東京の梅雨明けが発表された日。炎天下の屋外での撮影にも、快く応じてくださった鷲尾さん。2.5次元作品とオリジナル脚本作品では役作りの仕方が大きくちがうというエピソードからは、鷲尾さんの芝居への探究心が感じられ、とても興味深かったです。


後編では舞台「BRAVE10~燭~」への意気込みや、ちょっと意外なオフの過ごし方、アルバイト経験についてのお話をうかがっていますのでお楽しみに。


取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)


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【プロフィール】
鷲尾修斗(わしお・しゅうと)
1987年12月27日生まれ。東京都出身。
ミュージカル「忍たま乱太郎」中在家長次役、2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ 葉月陽役など人気作品に出演。
7月26日〜「BRAVE10〜燭〜」筧十蔵役、8月22、23日 朗読劇『学園デスパネル』【横浜公演】に出演が決まっている。


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