ドーモプラスが注目の男子を紹介する連載インタビュー「レコメン図」。今回お迎えしたのは「ミュージカル『刀剣乱舞』」和泉守兼定役など、さまざまな舞台で活躍中の、俳優「有澤樟太郎(ありさわ・しょうたろう)」さん。今年8月には「七つの大罪 The STAGE」バン役での出演が決まっている有澤さんに、前編では役者の道を目指したきっかけや、役作りとの向き合い方についてじっくりお話をうかがいました!


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ヒーローに憧れた少年が、役者を目指したきっかけ


――有澤さんは、どんなきっかけから役者を目指されたのでしょうか?


僕は兵庫県から東京に出てきたんですけど、幼少時代にすごくヒーローに憧れていた時期があって。仮面ライダーや戦隊モノが大好きで、ずっとその憧れの気持ちは持っていました。そこから時が流れて、やっていた部活を途中で辞めてしまって「これから何をしようかな」と思っていた時、母がオーディションの広告チラシを僕のところに持ってきて「こういう仕事をやってみたらどう?」って言ってくれて。


ヒーローに憧れていたし、テレビも好きだったので、それまでにも役者という仕事に興味はあったんですけど、自分からはなかなか言えなかったんです。そうしたら、母のほうから勧めてくれたので「こういう仕事を目指していいんだ」って、自分としては背中を押されたような気持ちになったんですよね。そこで、やるからには中途半端じゃなく、本気でやろうと。事務所の求人やオーディションを自分でめちゃくちゃ調べて、プロフィールを送ったりしていました。



――そこで縁があって、今の事務所でお仕事を始められたのですか?


それが、そういう書類って送っても数が多いのでなかなか見てもらえないんでしょうね。連絡も来ないですし。それがもう、悔しくて。だから「とりあえず上京しよう」と思って、高校卒業後に引っ越してきたんです。当時はまだ演技については基礎的なことも何も知らなかったので「自分がまずやるべきなのは“事務所に入ること”じゃないな」と。なので、養成所に通うことを決めて、上京しました。そこで学んだことが、今に繋がっているなと思います。




役と出会って、新しい自分と出会う


――2015年の「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』」国見 英(くにみ・あきら)役で本格的な役者デビューをされて以来、いくつもの作品に出演されていますが、これまで演じてきた役柄で特に印象に残っているのはどの役ですか?


よく振り返ってみるんですが、その時その時でやっている役はどれも「すごくいい役に出会えた」「この役が一番印象的だな」と思いながら演じているので……これっていうのはなかなか決めきれないんですよね。でも、これでステップアップできたなと思った役だと、やっぱり「ミュージカル『刀剣乱舞』」の和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)役でしょうか。


あとは「厨病激発ボーイ」では中村和博という痛すぎる厨二病の高校生を演じたんですけど、この役はすごく楽しかったです。彼は白い手袋をしてるんですけど、その手袋の下の右手には暗黒神がいるって言いふらしてる役で。厨二病って、愛せるじゃないですか。僕にもそういう「カッコいい言葉を言ってみたい」みたいな時期がありましたし(笑)。


ただ、それを表に出していなかっただけで、僕自身もかなり厨二病だったんだなって感じさせてくれる作品でした。それに、くだらないことをやっているようでいて、メッセージ性も強いストーリーだったので、お客さんも楽しんでくれたみたいで良かったです。僕にとってのターニングポイントにもなりました。



――演じるにあたっては、普段の自分とは全くちがう役柄のほうが、面白さがあったりするのでしょうか?


面白いですね。「自分にもこういう一面があったんだ」って気付かせてくれたりもしますし、そういうのって役者の特権だなって思います。そんなことを考えていると時々、世の中にはまだ自分の本性を出してない人ってたくさんいるんだろうなって思ったり……(笑)。


――隠しているのか、はたまた自分でも気づいていないのか(笑)。ちなみに自分と全く性格のちがう人物を演じていると、普段も役柄に影響されてしまったりという経験はありますか?


役に関わっている期間はそうなります。例えば、和泉守兼定をやっていると、土方歳三の刀だけに男らしくて、ちょっとオラオラしている感じがあるので……自分は普段がおおらかな性格だと言われるので、まぁオラオラとまではいかないですけど、ちょっと短気になったり。不思議とそういうところはあるなと思います。今はちょうど次の作品に入る前なので、素の自分ですね。




舞台に立つ時には「120%その役になりきる」


――役作りをする上で、有澤さんが大事にしているのはどんなことでしょうか?


2.5次元作品に関わらせてもらうことが多いんですが、最初のうちは「自分とちがう性格だから、振り切って演技をすればいい」って思ってたんですよ。「熱量だけでいけば、絶対その役になれる」と。でも、そうではないなって気付き始めて。


舞台の上に立つからには、心がけるべきなのは“100%役になりきる”ということで、“自分だったらどうするか”という部分は絶対にいらないなと思ったんです。もしも”自分だったらこう思う”みたいな感情や仕草を入れてしまうと、どうしても“自分”っぽくなってしまうので、結果としてどんな役を演じても同じになっちゃう。だから、100%……むしろ「120%その役のまま、舞台に立とう」っていうコンセプトは、自分の中に置いています。



――120%に近付けるためには準備が必要だと思うのですが、具体的にどんなことをされていますか?


こう言うと意外かもしれないんですが、僕はあまり台本を読み込まないんです。もちろん、最初は役作りの一環としてしっかり読みますし、歴史物だったりしたらあれこれ調べたりもしてベース作りはしますけど。そこから自分なりに「こう演じてみよう」と考えたことをいろいろ挑戦していくと、しゃべり方や仕草であったり、自然と役が身についていくので、それを演出家さんに提案してみるという感じです。なので、役が固まるまでは提案をたくさんしようと、自分の中では思ってやってますね。



――では稽古中に試行錯誤を重ねていく中で、役に近付けていく感じなんですね。


稽古中に限らず、本番期間でもそうです。公演中のお客さんのリアクションって、自分の中ではとても大きな要素ですし、本番に入ってから変わる役者もたくさんいますけど、やっぱりそれも自然なことだと思うので。それが千秋楽までずっと続いていくので、初日と千秋楽での芝居は全然ちがうと思いますね。


――役として生き、周りの共演者と関わり合う中で、役が定まっていくという感覚でしょうか。


そうなんです。やっぱり、みんなが変わっていくので。そこが舞台の良さだと、僕は思うんです。自分の中だけで作り込むというよりは、相手からもらうものが多いなと思います。同じ内容の公演をやっていても、毎日違った芝居が見られたりする。そういうことに気付けるようになったのも最近なんですけどね。それで余計に楽しくなりました。




初日ならではの緊張感が「嬉しいし、楽しい」


――では、これまで役者をしてきた中で、一番嬉しかった瞬間はどんな時でしたか?


たくさんあるのですが、僕、公演初日の雰囲気が大好きで。迎えるたびに「やってて良かったな」と思うんです。いろいろな作品に関わってきた中で、初日に自信100%で臨めたものや、自分の中に不安がある状態で挑んだものとさまざまあるんですけど、お客さんの拍手やリアクションを見たりすると「やっぱりやってて良かったな。ナマって素敵だな」と。そう思える瞬間が初日なんです。千秋楽ももちろん感動するんですけど、どちらかというと僕は初日のほうが気持ちが入りますね。



――役作りしてきたことを、初お披露目する場でもありますしね。


やっぱりみんなも気合入ってるし。なんというか……学生時代の文化祭で出し物をする時も、ああいうのってだいたい1回きりだから、みんなすごく気合が入るじゃないですか。そういうところは(舞台でも)変わらないなって思いましたね。みんなで作り上げてきたものを、お客さんに見てもらうっていう嬉しさがあるし。千秋楽は逆にそれまでの集大成を届けるから、カンパニーの熱量もあるんですけど……僕はわりと、いつも通りやろうっていうのを心がけてます。



――初日のほうが、有澤さん的にはテンションが上がった状態で臨めると。


周りもテンション上がってるし、初日ならではの緊張感も感じられるので、楽しいし嬉しいです。そして、無事に終わるとホッとしますね。ありがたいことに、これまで出演した作品で「初日コケたな」っていうことはなかったですけど、やっぱり不安はあるので。




プレッシャーと弱点に正面から向き合い、模索した役作り


――先ほど、印象に残っている役でも和泉守兼定役を挙げられていましたが、先頃「ミュージカル『刀剣乱舞』〜結びの響、始まりの音〜」を終えられての心境はいかがですか?


50公演という長いステージで、約3ヶ月を同じ仲間と過ごしてきたんです。特にみんなの仲が良くて、カンパニーの雰囲気もとても良かったので、終わってみると寂しいですね。演じている時にはかなり体力も使うし、終演後はもう舞台袖から動けなくて「あぁ……このままもう、溶けそうや……このまま寝ちゃっていいかな」「帰りたくない、このまま劇場に住みたい」って思ってましたけど(笑)。



――それほどまでに、公演中は全てのパワーを使い果たしてしまうんですね。


感情がすごく表に出る役で、熱量も大事だし、妥協や油断が一切許されないキャラクターだったので、毎公演全力でやってました。で、終わってみると……自分、Mなんちゃうかなと思うんですけど、なんか……もう一回やりたいなって(笑)。もはや生活の一部と化していたので、1日の休演日なら「明日また頑張ろう」っていう気持ちなのに、1〜2週間空くと「公演がないの、なんだか寂しいな」って感覚になっちゃうんです。


それに、朝起きた時にビクッとするんです。「うわ、やべ! 劇場行かないと!」って(笑)。休演日にも「寝坊した!」ってびっくりして飛び起きたりしてましたね。



――そこまで意識に刷り込まれているとは(笑)。仲の良いカンパニーだったということですが、何か公演期間中の印象的なエピソードはありますか?


自分の時間を大切にしつつ、みんなとの時間も大事にする人ばかりだったので、ご飯に行くにも常に誰かといっしょでした。地方で昼公演だけの日なんかには、僕は野球を観に行ったりしてたんですが、6人がキレイに2人ずつに分かれて行動してたんです。ご飯に行くメンバー、温泉に行くメンバー、そして僕は伊万里くん(=長曽祢虎徹役/伊万里有さん)と野球を観に行って。


別々にいたはずなのに、なぜか自然と最後は6人いっしょにいたので、みんなで夜ご飯に行ったんですけど「あれ? 誰か連絡とったっけ?」「なんで全員いっしょにいるの?」みたいな(笑)。集まる予定は全然なかったんですけどね。それくらい仲が良かったです。



――和泉守兼定役はどんなところが印象に残っていますか?


時代物をやるのが初めてだったんですが、土方歳三をはじめ、歴史上に実在していた人物が舞台に登場するわけじゃないですか。そこに作品の重みや、責任感のようなものを一番感じました。それに、人気のあるキャラクターですしコンテンツとしてとても大きいですから。


――やはり、そこにまつわるプレッシャーもありましたか?


ありましたね。作品自体が、公演のたびに「前作を超えた」と言われ続けてきた作品なので、これまで積み重ねてきたものを今回で壊すことは決してできないと思いました。その上で今回の台本を見て「これは絶対にイケる」と感じたからこそ、今回の作品では前作を大幅に超えないといけないなと感じましたし。最初の顔合わせの時に、演劇界でもきっと評価してもらえる作品になると思ったので、その分稽古でもプレッシャーは感じましたね。



――役作りでは迷ったり悩んだりすることも多かったそうですが、どんな部分に難しさを感じましたか?


前回出演した「ミュージカル『刀剣乱舞』〜幕末天狼傳〜」では、感情も抑えめだったんですが、今作に関しては感情を表に出し、喜怒哀楽の全部が詰まっていたんです。ということは、自分自身が薄い人間だとそれが役にも出ちゃうという(苦笑)。だから、形だけじゃ絶対成立しなかったので、周りの人からいろんなものをもらって、役を作っていきました。


それから、さまざまなことを感じて受け止めることの多いキャラクターだったので、苦戦した部分もありましたね。自分では怒っているつもりでも、そうは見えないと。相手の役に対してちゃんと愛がないと、怒っているようには見えない。相手のことを大事だと思えるような関係性が成立していないと、その感情には至れないので。だから、怒るって一番難しいんじゃないかと思いましたね。ただ怒鳴ってる威勢のいい兄ちゃんみたいになってしまうのはすごくイヤだったので、そこはかなり苦戦しました。



――その部分に関しては、自分なりに納得のいくところに辿り着けましたか?


正解かどうかは分からないんですが、やりきることはできたと思いますし、自分の中では答えを見つけられたような感覚はあります。ただ、怒ったりするシーンでは「まだまだ自分の弱さが出るな」と感じたので、自分の弱点が見つけられたという意味では良かったかなと思ってます。



穏やかな口調で言葉を選びながら、お芝居に対する自分の気持ちを語ってくださった有澤さん。「初日の緊張感が嬉しいし、楽しい」というフレーズからは、芯の強さと、内に秘めた情熱を感じました。後編では目指す役者像や、オフの過ごし方、アルバイトについてのお話などをうかがっていますので、お楽しみに!


取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)


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【プロフィール】
有澤樟太郎(ありさわ・しょうたろう)
1995年9月28日生まれ 兵庫県出身。
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」国見 英役、ミュージカル『刀剣乱舞』和泉守兼定役など人気作品に出演。
8月3日〜「七つの大罪 The STAGE」バン役、9月13日〜朗読劇「予告犯」ゲイツ役、9月7日 DVD「有澤樟太郎 IN オーストラリア VOL.1」をリリース。

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