
ドーモプラスがブレイク期待のアーティストを定期的に紹介! 今回は4月25日に2nd ミニアルバム『I』を発売した、多国籍メンバーからなるエレクトロ・ポップバンド「A11yourDays(オールユアデイズ)」、メンバーのMasaya(Ba.)さんとUK(Key.)さんのインタビューをお届け。Masayaさんのバンドリーダーとしての苦悩や、UKさんがコンポーザーとして考えていることなどについて、語っていただきました。
ライブでより楽曲が魅力を増すわけとは
――前作の『you,』に比べて『I』は、サウンドも楽曲自体もすごくシャープになった印象がありました。今作の曲作りは、どのようなことを意識して作りましたか。
UK:曲作りにかんしては、けっこういつも通りにやってて。サウンドのシュッとした感は、YUTAROさん(所属事務所の代表)がアレンジを一緒にやってくださった影響が大きいですかね。
Masaya:雰囲気が変わったよね。いい意味でもともと想像していた曲のイメージとけっこう違うものになったので。
――A11yourDaysの楽曲はライブ映えするイメージが強いのですが、そういうことも意識されてますか。
UK:今回の『I』に関しては意識しましたね。普段はSOGYON(Vo.)さんが歌っているのをイメージしながら曲を作ってます。「ライブっぽい曲を」って言われれば意識しながら作りますけど、普段は遊びの延長線かな。
Masaya:楽曲がライブ映えするのは、SOGYONの存在が大きいと思います。2人で「この曲どう振る舞ったらいい?」っていう話をするし、ライブでこうしようっていうシミュレーションもすごいしてるから。UKが作った曲とSOGYONのやりたいことの、いい塩梅を見つけていくって感じですね。
――あまりにもSOGYONさんのパフォーマンスが自然なので、最初のころ作詞作曲は彼がやっているのだと思っていたんですよ。
Masaya:SOGYONが曲を作り始めたのは、バンドが始まって半年経ってくらいかな。それまでは全部UKの曲だったんです。
――UKさんは曲作りをされて長いんですか。
UK:ちゃんと作るのはA11yourDaysが初めてですけど、遊びみたいな感じでなら中学生のころからやってました。そのころはギターを弾いてて。
Masaya:SOGYONよりギター弾けるもんね(笑)。
UK:ギタリストになりたかったんですよ。
――そこからなぜキーボードになったんですか。
UK:母がピアノやエレクトーンの先生をやっていたので、ピアノを弾ける環境があってちょいちょい触ってはいたんです。ギターでバンドを組んでいたときキーボードをいれたいっていう話になったんですけど、誰も弾ける人がいなかったので「じゃあ私やるわ」って。気づいたらパートがキーボードに変わってました(笑)。
普段は見えないメンバーの素顔
――A11yourDaysのスタジオってどんな感じなんですか。
Masaya:機材が多いから始まるまで時間がかかるけど、それ以外は普通ですよ(笑)。準備が終わるまで俺がくだらないことを言ったり、JOHN(Gt.)をいじったりタバコを吸ったり。
始まったらライブのセットリストを1から通して、バンマスのUKを中心に気になったところを詰めていって。スタジオだけど話し合いが多いときもあるしね。だれがSOGYON以外でMCするとか、そんなやりとりをしてます。最近はスタジオも落ち着いたよね。
――落ち着いた要因はなんだと思いますか。
UK:慣れだと思う。
Masaya:このメンバーといることが多いから、人としての扱いがだいたいわかるようになりました。「今日、UKめっちゃ暗い! 挨拶しても返ってこない」とか(笑)。
UK:(挨拶)してるよ? ちっちゃく。
Masaya:SOGYONが「おはよう」って言ったのに対してUKの声が小さくて、「なんで無視するの?」ってなったこともあったよね。
UK:SOGYONさん朝は機嫌悪いから……(笑)。
――SOGYONさんって、すごい芯が強そうですよね。
Masaya:よく言えばすごい素直なんですけど、単細胞なんですよ。決まってることがあったら120%でいける。1から10は得意だけど、0から1は苦手っていうタイプかな。
――Kohey(Dr.)さんは、どんなかたなんですか。
Masaya:ザ・ゆとりです。
UK:やめなさいよ(笑)。
Masaya:よくも悪くもゆとりですね。ただ“人として”みたいなことに1番敏感なのはKoheyだったりする。「こういうふうに筋を通したらいいんじゃない?」って的を得たことを言うのは彼ですね。それは本当にすごいなって思ってます。
JOHNが1番何もない……(笑)。基本的にイエスマンで「いやぁ……」っていうことがないんですよ。だから物事が決まったときに、JOHNだけ事後報告っていうこともよくあるし。「よろしく!」って言ったら「おっけー!」みたいな。無茶ぶりしたときくらいでしたね。「いやぁ……」って言ってたの。
――本当に個性豊かなメンバーなんですね。
Masaya:バラバラだよね。普通に生活してたら、絶対に友達にならないもん。
UK:それは私も。結成当初から思ってた。
Masaya:プライベートで一緒に遊ぼうとも思わない。唯一、遊ぶとしたらKoheyかな。メンバーで「誰とだったらシェアハウスできる?」って話したんですよ。Koheyは俺で、俺もKohey。そしたらSOGYONが俺って言って。俺はお前はムリだと(笑)。それくらい生活では合わないです。バンドメンバーとしては好きですけどね。
ようやく出会えた信じられる人
――Masayaさん、そういうメンバーをまとめていくのって大変じゃないですか。
Masaya:そうですね。それこそYUTAROさんとかいろんな人に相談してます。でも事務所に入ってからは、そこまで大変っていう感じではないかな。いろいろと任せられるんで、「ありがとうございます」って感じ。いまは決まったことをやるだけだから、前とは違った視点で物事を見れるようになってきました。一歩引いて「ここ足りない」とか「もっとこうしたらいいかも」って落ち着いて見えるのはいいなって。
――事務所に所属されるまでは、どんな感じだったんですか。
Masaya:俺がマネージャーみたいな。連絡全般にバンドの窓口、ライブハウスのブッキングとか全部やってました。
――すごい……。ハードワークですね。たくさんの事務所からお誘いがあったと思うのですが、いまの事務所を選んだ決め手はなんでしょうか。
Masaya:社長のYUTAROさんですね。感覚的にこの人とならやっていけると思ったんです。俺ら本当にダメダメなんですよ。人間性ダメだし社会性ないしコミュニケーション能力ないし。話さないし友達作らないし、ひどいものですよ。
でもYUTAROさんは、そんな俺らのことを「いいじゃん、面白くて好きだよ」って。大きい会社の人だと癇に障るようなことも、「音楽がよければいいんじゃない」って許してくれる。社長もミュージシャンだから、そういう考えを持ってる人なんですよね。
だから、この人についていきたいなって。YUTAROさんなら社長として兄貴として、俺も含めたメンバーを任せられる。そういう人をずっと探してたし、「ようやく出会えた!」っていう感覚があったので。
――とても仲がいい事務所ですよね。
Masaya:このあいだ、YUTAROさんが「俺、本当は心理学を学んでいたんだよね」って言ったので、どうせ嘘だと思って「あ、そうなんすか」って言ったんですよ。そしたら「うん、夢のなかで」って(笑)。そういうのをよくしてくるんですよね。
――A11yourDaysは一歩一歩確実に進んでいくイメージがあるのですが、実際のところどうですか。
Masaya:ビビりなんですよ。自分たちの人間性を考えず突っ込んだ先のことが心配過ぎて。周りの理解やメンバーとの話しあいって、やっぱり必要じゃないですか。その結果コツコツ進んでいくスタイルになったというか。
ただ最初のころから階段飛ばしはしたくないってSOGYONと話してましたね。最終的には足下を見れてるやつのほうが強いと思っていたので。
――事務所に所属を決めたのは“思い切り”ではなかったのですか。
Masaya:そこはないですね。2016年の夏くらいから、自分たちでやっていくことの限界を感じていたので。CDを作ることができてもクオリティはどうなんだって思ったし。マネジメント的なことに関してもさっき話した通りなので、“信じられる大人が欲しい”と思って探してました。
自分が後悔しない生き方なら、それが正解
――ところで、今回取材をさせていただいているDOMOはアルバイトの求人メディアなのですが、お2人はいままでアルバイトって、どんなことをしてきましたか?
UK:アルバイトはカラオケ屋さんしかやったことがないんですよ。高校も通信制だったし大学もいってないので、バンドをしながらバイトをするって感じでしたね。
Masaya:俺もカラオケ屋さんやったよ。居酒屋もやったしダクトの掃除も。-20℃の倉庫に入ってベルトコンベアを組み立てたりもしましたね。
UK:いっぱいやってる人ってすごいよね!
Masaya:飽きるんだよ(笑)。
UK:飽きるっていう概念がない(笑)。
Masaya:あとは人間関係が辛くなったらやめたりするよ。バンドはやめられないけど、バイトはやめられるじゃん。円満にやめたのは歌舞伎町のバーくらいかな。実質半年くらいだったけど、働いててめっちゃ楽しかったし濃かった。
――そこの歌舞伎町のバーは、なぜ長く続いたんでしょうか。
Masaya:店長のことがすごく好きだったんです。まだ30歳手前で若いんですけど、めっちゃ面白くていい人。パッと見ふざけてるように見えるんですけど、すごく大人で。なんならバンドのことも相談してたんですよ。
一緒に働いてたやつらも、いいやつばっかりでしたね。いうても歌舞伎町だし働く前はちゃらんぽらんなやつとかチャラいやつらばっかりだと思ってたんですけど、案外俺と同じようなやつが多くて。カメラマンを目指してるやつとか、世界一周するためにお金をためてるやつとか。そういう人がいっぱいいて、すごく刺激になって面白かったです。
――歌舞伎町に対して偏見が払拭された?
Masaya:そうですね。歌舞伎町の人ってあまり良いイメージを持っていなかったんですけど、案外いい人が多くて。お酒を飲めば本音を話してくれるから、悪い人ばかりじゃないんだと。なんなら普通に生活している人たちより、しっかりした考えの人が多いですよ。遊ぶときは遊ぶってメリハリがついてるし、かっこいいなって思いました。会話するって大事ですね。
――UKさんは、アルバイトをしていたときに印象的なエピソードってありますか。
UK:カラオケ屋さんで働いていたときに、ファンの方に遭遇しちゃったのはびっくりしましたね。1回目にドリンクを持っていったときにガン見されたので「なんだろう」って思ってたら、2回目に行ったときに「UKさんですよね」って言われて(笑)。まじかー……、ってなりました。
Masaya:バレるよね(笑)。俺もバイト中ファンのかたに声かけられたもん。「黙っておいてね」って。
UK:人違いです、って言おうか迷ったけど特徴的な顔してると思うから。偽物のフリをしたら逆に印象が悪くなる気がしたので認めました(笑)。双子設定作るところまで考えたんですけどねー……。
――では最後にドーモプラスの読者のかたにメッセージをお願いします。
UK:大学に行ってない身としては、自分が後悔しないような生き方だったらそれでいいと思います。
Masaya:やりたいことがあれば頑張ればいいし、それがみつからないなら無理して探さなくていいんじゃないかな。いつか見つかるからのんびりやってて大丈夫ですよ。
ブロードウェイのミュージカルや大画面で全国上映される映画など、人々を楽しませるエンターテインメントはキラキラした世界が注目されがちです。しかし、それらが輝かせているのは人目につかない練習期間や影で支える存在があるからということは紛れもない事実。A11yourDaysがステージ上で眩しいのは、見えない時間や支えてくれる人をおろそかにせず、コツコツ進んできたからなのだと思わせられました。非現実を感じさせてくれるA11yourDaysのライブに、ぜひ1度足を運んでみてください。
取材・文:坂井彩花
Photo:タカハシハンナ