ドーモプラスが注目の男子をご紹介する連載企画「レコメン図」。今回ご登場いただくのは、「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」や音楽劇「金色のコルダBlue♪Sky」などに出演し、幅広い役柄をこなす俳優「上田 堪大(うえだ・かんだい)」さん。5月には舞台「蘭 RAN 〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜」への出演も決まっている上田さんに、前編ではお芝居に目覚めたきっかけや、役者としてのターニングポイント、そして観劇の魅力について熱く語っていただきました!


インタビュー後編はコチラ

映画の撮影現場で芝居の面白さに目覚める


――大学生の頃に俳優を志して、卒業とともに上京されたということですが、俳優になりたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか?


前々からテレビで活躍している人への憧れがあって。木村拓哉さんが大好きでカッコいいなと思っていたので、初めのうちは「俳優になりたい」というよりも、マルチに活躍できたらいいなと思っていたんです。


僕は京都出身で、地元の大学に通っていた頃にモデルをしていました。というのも、いとこの姉ちゃんがとあるオーディションに僕の書類を送ったんですよ。書類審査は通ったんですが、その後で落ちてしまって。それが悔しくて何かしたいと思った時に、大学卒業は親との約束だったので、地元でもできることをと思って始めたのがモデルだったんです。



当時のお仕事で「大奥」や「源氏物語 千年の謎」「のぼうの城」といった映画に出演……まぁ、ほとんど映ってるだけでエキストラみたいな感じではあったんですが、出演者の方のナマのお芝居を間近で見られる機会を得られて。その時に「お芝居って面白いな」って感じるようになったんです。


もともと歌が好きだったこともあって、アーティストにも興味があったんですが、今はもうお芝居の楽しさを知ってしまってどっぷり浸かってます(笑)。




「アイス1本生活」を乗り越えて臨んだ初舞台


――2013年に「霜月の星の下〜果たして龍馬は命日に殺されたのか〜」で初舞台を踏んだということですが、その時の気持ちはいかがでしたか?


本当に何もかもが初めてで、舞台の上手・下手(かみて・しもて)というような用語の意味すら分からなかったので大変でしたね。でも、舞台の稽古期間はだいたい長くても1ヶ月くらいで、去年は最短4日だったこともあったんですけど、初舞台の時には2ヶ月あったんです。それまでにもお芝居のワークショップに行ったりはしていたんですが、その稽古期間中に改めて、舞台やお芝居の基礎的なことをみっちり教えてもらいました。



――後々のことも考えると、かなり実りのある時間になったでしょうね。


そうなんです。そしてこの時に“アイス1本生活”も経験しました(笑)。


――え、それはどういう……?


当時はアルバイトをしていたんですが、稽古が始まると時間的にシフトに入れなくなるんです。給料日の1週間前くらいには冷蔵庫が空っぽになってしまって、たまたま冷凍庫を開けたら、前に買ってあった7〜8本入りの箱入りアイスがありまして……。「よし、これで何とかなる」と、1日1本ずつ食べて5日間くらいしのぎましたね。歯ごたえのあるグミで、空腹感をごまかしたりもしながら(笑)。



――それはツラすぎますね……周りの方も心配されたのでは。


僕、相当痩せましたからね。上京して1年くらいは、わりとよく京都に帰ってたんです。大学時代にアルバイトで貯めていた貯金を、僕が自分で下ろせないように親に管理してもらっていたので、交通費をそこから出して(笑)。帰るたびに「どうしたの?! メシ食えてる?」「とりあえずご飯に行こう!」って、みんながそんな感じでしたね。




役者として真のスタートラインとなった「Count Down My Life」


――舞台に出演されるようになって今年で5年目になるかと思うのですが、その間にストレートからミュージカル、2.5次元作品まで、かなりの数の作品に関わられていますよね。その中で印象に残っているものについて聞かせてください。


2014年に出演させていただいた「Count Down My Life」で初めてミュージカルに挑戦したんですが、この作品が僕のターニングポイントだったなと思います。歌が好きなはずなのに「こんなに難しいの?」って思うくらいに手こずって、中でも三拍子の曲は覚えるのに必死でした。朝起きたら稽古場に行って夜の8時9時まで稽古をし、家に帰ってからも朝5時まで復習するんですけど、それでも覚えられないくらい難しかったです。3週間の稽古期間のうち、1週目はずっとそうやって過ごしてましたね。


ストーリーは脚本家になる夢を追う29歳の主人公の話なんですが、そこで描かれる人間模様が僕は大好きで、本当にいい作品なんです。主演をされていた先輩の菊地創さんは、実は僕を舞台の世界に招いてくれた人でもあるんですよ。まだ仕事が全然なかった頃に、お店でお会いして仲よくなって。ある日店に行ったら創さんから「あ、堪大! 知り合いの演出家さんがイケメン紹介してくれって言ってたから、推薦しておいたよ。舞台頑張ってね」って声をかけられ、それが初舞台へと繋がったんです。


そんな創さんとの初共演が叶ったのも「Count Down My Life」だったので、そういう意味でも思い入れが強い作品になりましたね。憧れもあったし、いざいっしょに芝居をして肌で感じるものもありました。それに、自分の役を掴むのに時間を費やした作品でもあったので、印象に残っています。



――さまざまな思いの込もった作品になったんですね。


ターニングポイントであり、本当の意味でのスタートラインにも立てたというか。もちろんそれまでも真剣にはやってましたけど、右も左も分からない状態から、だんだん舞台というものを楽しめるようになったところで「自分の役、自分の芝居を掴むってどういうことなんだろう?」という問いの答えをずっと探していて。この作品で「自分の芝居とはどんなものか」を学べたなと感じています。




大先輩との共演にも、全力で、貪欲に


――今後はどんなお仕事に挑戦していきたいですか?


やってみたい役で言うなら、そろそろいい歳なので今だからこそできるビジュアルの役をやってみたいですね。これまでやってきた「あんステ」(=「あんさんぶるスターズ!オン・ステージ」/鬼龍紅郎役)であったり「コルダ」(=音楽劇「金色のコルダBlue♪Sky」/土岐蓬生役)であったり「ダイヤのA」(=「ダイヤのA The LIVE」/真田俊平役)であったり、全員高校生じゃないですか。先生役になる前にもう少し生徒役をやっていたいですね(笑)。


演じたことのない役柄に挑戦したいという気持ちは常に持っているので、だからこそこれまでいろいろな役をやらせていただけたのかなと感じています。生徒役以外でも、この先できなくなるだろう役に、今のうちにぜひ挑んでみたいです。


あとは、やっぱり映像作品に興味がありますね。上京してきた時からやってみたかったことですし、舞台以外でもお芝居ができる場を広げていけたらと思います。



――では、今後は映像作品にも積極的にトライしていきたいと。


そうですね。でも僕、舞台は絶対にこれからもやりたいんですよ。


――舞台って独特ですよね。同じ作品でも、1回1回の公演全てにちがいが感じられますし。


同じ台本で演じていても間がちがったりするし、例えば「あんステ」だったらアドリブシーンがかなりあるんです。自分も観劇するからこそ分かるんですけど、昼公演ではお客さんの中にはまだ身体が起きてない人もいると思うので「分かりやすく笑ってもらえるようにしよう」って考えたり。夜公演では「もうさすがに起きてるでしょ?(笑)」って、セリフとして取り入れてみたりもしてますね。


アドリブ以外でも、自分も含め出演者のコンディションによってもお芝居のテンポは変わってくると思うし、実際やっていて身体で感じるんです。だから、間延びしないよう、常にベストの状況でやろうという意識を持って臨むようにしてます。



――次に、5月に出演される舞台「蘭 RAN 〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜」についてお話を聞かせてください。大阪松竹座、新橋演舞場と歴史のある会場での上演で、セリフもたくさんあるとうかがいましたが、こちらで演じる「中耕介」役への意気込みはいかがですか?


とにかく、めちゃくちゃ緊張してます。どれくらいかというと、いつもは手汗を全くかかない僕が、制作発表の時に初めて手汗をかいたくらいに(笑)。出演が決まった時に「こんなすごい劇場に立てて、しかもこんな豪華なキャストのみなさんといっしょにやれるんだ!」って考えたら、すごくワクワクしたんですよ。先輩方とも舞台の板の上に立てば役者同士として向き合うことになるので、尻込みせず、どんどん挑戦していきたいなと思います。


それに僕が演じる耕介は、出演者のみなさんと万遍なく絡ませていただける役どころなんです。こんな機会もなかなかないと思うので、先輩ならではの空気感や芝居のやり方を、盗めるものは盗ませていただく姿勢で貪欲にいきたいですね。




「舞台から受け取ったものを明日を生きる糧に」上田流・観劇ノススメ


――2.5次元作品で上田さんのことを知ったファンの方々が、今回の作品でも劇場に足を運んで、広い意味での舞台のよさに気付いてくれたらいいですよね。


僕も心の底から思ってますね。2.5次元っていうのは、原作という“答え”があるじゃないですか。その原作を好きな方たちが舞台を観に来られる中で、自分たち役者がまずすべきことは、演じる役を知ること――僕は「役を愛する」って言葉をよく使うんですけど。


自分の役を愛することで「この人ならこういう歩き方をするだろうな」「こう立ち止まって、こう話を聞くだろうな」とイメージを膨らませて、その上で自分自身と擦り合わせて……そうやってプラスαでできた、みなさんがまだ知らないキャラクター像をステージから届けるんです。こういう感じで、三次元の僕たちの身体に、二次元の役が融合されるから、多分“2.5次元”っていう言葉になったんだろうなと僕は思ってるんですけど。



音楽のライブに行ったら楽しいと感じるように、舞台からも喜怒哀楽などいろんな感情を受け取ってもらえると思うんです。以前「ヘルプマン!」という舞台に出たことがあって、老人介護の話なので、人によっては正直重たいと感じる人もいたかもしれません。


僕自身、実はこの舞台の稽古が始まる前にちょうど祖母を亡くしていて。でも、みなさんの中にもそういう経験をしている人はきっといるでしょうし「生きている間に、自分がこうしてあげたらよかったな」とか、舞台から感じ取ってもらえたものもたくさんあったと思うんですね。


何かひとつ、観たお客さんに持って帰ってもらえるものがあって、それがきっと明日を生きる糧になるって僕は考えてるんです。



――なるほど、すごく分かります。


それから、今回の作品にも原作がありますけど、時代設定が江戸時代ですし、設定画みたいなものもないので、脚本家さんが書いた作品を読んで、僕が想像して、僕が表現する……そういうものを観に来てもらえるのは、すごくありがたいなと感じます。


2016年の7月に、レストランでお芝居をする“劇メシ”という企画に出演したのですが、当時の、舞台を観劇したことのない日本人の割合が何パーセントかご存知ですか?


――うーん……70パーセントくらいですか?


96パーセント程だそうです。


――え! そんなに?!


僕もウソだと思ったんですよ。だけど「そうなんです」って言われて。僕たちは仕事上、演劇が身近なだけで、世の中の大多数の人は舞台を観たことがないんです。だから“劇メシ”は、劇場よりも身近なレストラン、それもキャパシティー30人という至近距離で観られる状態で、リアルなお芝居がどんなものか、そしてその熱量を知ってもらいたいというコンセプトの舞台でした。それも僕にとってはすごく新鮮だったし、いい刺激になりました。


お客さんとの距離が近いから、いつも舞台でやってる時よりかなり緊張するんです。でも、この機会に舞台のよさや、映像では得られない観た後の心の満足感を知ってもらえたらと思って。映画も観た後には「いい映画だったなぁ」と余韻が残るように、舞台にはそれ以上のものや、もっとちがうものがあるんじゃないかと思うんです。



映像だったら、みんな同じ角度から同じものを観ますよね。でも舞台となると、例えば応援してる俳優さんだけを観ている人もいれば、全体を観ている人もいるし、座席によって見え方もちがいますよね。だからどちらかというと舞台のほうが、人によって観ているものが分かれるし、感じ取ってもらえるもの、持って帰ってもらえるものに幅があると思うんですよ。


そういうところが面白いので、これからも舞台は何があってもやり続けたいですね。2.5次元という入り口から入ってきたお客さんが「上田堪大が出てるんだったら、観に行ってみようかな」と舞台に足を運んでくれて、観劇の楽しさをもっと知ってもらえたなら、とても嬉しいです。



――そうやって、観劇が好きな人、演劇を身近に感じる人が増えていったらすてきですね。


そうですよね。自分自身も、仕事を抜きにしても観たい作品は「観たい!」って思いますから。そして、お客さんとして観劇して「あぁ楽しかった〜」って気分に浸ったり。


ファンの方にも「お芝居を観る時には、どんなふうに観てるんですか?」ってよく質問されるんですが、意外と僕は「面白いなぁ」ってお客さん目線で観ている時もあるんですよ。その時の気分や、作品の内容によっては「この人のこの言い回し、好きだな」「今のこの間、すごくいい!」って思ったりしながら観ていることも、もちろんありますし。そうやって自分自身も観劇を楽しんでいるので、その楽しさをより多くの方に知ってもらって、舞台を観に来ていただけるお客さんの人口が増えることが、僕の一番の幸せかなと思います。



お芝居への気持ちを真摯な言葉で語ってくれた上田さん。観劇をしたことがない人の割合も衝撃的でしたが「もっと幅広い層に、観劇の楽しさを知ってほしい。自分もその一助になれたら」という思いが、ひしひしと伝わってきました。後編では、休日の過ごし方や「あんステ」カンパニーについて、アルバイトでのエピソードなどのお話をたっぷりうかがっていますので、お楽しみに♪


取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)



インタビュー後編はコチラ

【プロフィール】
上田 堪大(うえだ かんだい)
京都府出身。1988年生まれ。
2013年に初舞台を踏み、「金色のコルダ Blue♪Sky」、「ダイヤのA The LIVEⅢ」、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』、「K-MISSING KINGS-」、「チンチン電車と女学生」、「蘭 ~緒方洪庵 浪華の事件帳~」の出演等、舞台を中心に活躍中。


【出演舞台情報】
舞台「蘭~緒方洪庵 浪華の事件帳~」

5月6日(日)~13日(日)大阪松竹座
5月16日(水)~20日 (日)新橋演舞場

<スタッフ>
原作:築山桂『禁書売り』『北前船始末』(双葉文庫)より
脚本:松田健次
演出:錦織一清
音楽:岸田敏志

関連するワード