人と人が行き交う街中で、ふと足を止めるのはどんな時でしょうか?


信号待ち。ショーウインドーに飾ってあるものに目を奪われた。いろいろある中で、何だかわからないけど、おもしろそうなことをやってるなと気付いた時に、足を止める方は多いと思います。


街中を歩いているとき、ふと足を止めずにいられない。そんな大道芸と演劇と音楽が絡み合った不思議な世界を、今回はご紹介します。


静岡の街中、七間町通り。歩行者天国の七間町路上を「劇街ジャンクション」がジャック!


ジャンルを超えた不思議な力、「劇街ジャンクション」が出来るまで。



「ジャンクション」とは、ラテン語で「つなげること」という意味があります。


本来、大道芸は路上で、演劇は劇場で、音楽はライブハウスでと、別々に活動し同じ土俵に立つことのない組み合わせですが、そういった思い込みを打ち破り、ジャンルを超えて「つなげること」で、もっと自由に、もっと面白い何かが生まれるのではないか? そう考えたのがこの「劇街ジャンクション」の発起人、大道芸人のあまる氏です。


その舞台に選んだのが、七間町。映画館や小劇場、ライブハウスが点在し、洒落たカフェが立ち並ぶ七間町通りは「つなげること」に、うってつけの場所だったのです 。


出演者はもちろんのこと、あまる氏の活動に賛同する七間町の飲食店から、テイクアウトメニューを考案してくれるなど、街ぐるみの協力を得ることが出来ました。


こうして、常々「人と人とのつながり」を何より大切にしてきたあまる氏を、ジャンルを超えた不思議な力が後押しして、「劇街ジャンクション」が始まったのです。


毎回違う特別ゲスト。第3回は、大道芸ワールドカップの常連「シルヴプレ」


2017年9月から開催されている「劇街ジャンクション」も、3回目。


今回の特別ゲストは、爽やかな白い衣装、コミカルかつ軽やかな動作で、観客の目を捉えて離さないパントマイミストの柴崎岳史氏と堀江のぞみ氏のコンビ「シルヴプレ」さん。大道芸ワールドカップで大人気の「シルヴプレ」が、七間町路上で見られるなんて驚きです。




シルヴプレのネタと言えば、大道芸ファンにはおなじみの縦横無尽に動き回るテニスのパントマイム「ダブルス」が有名ですが、「ハイ!」も見逃せません。


セリフは、タイトル通り「ハイ!」のみなのに、「ハイ」「はい」「Hi」と、声のトーンやイントネーションの違いだけで、パントマイムのシチュエーションがドンドン変わっていくドラマに、観客の目はもう釘付け。大道芸では当たり前の「客上げ」で、突然舞台に上げられたお客さんも、「ハイ」「はい」「Hi」と2人に食らい付き、3人芝居で観客の笑いを誘っていました。




観客の数が時間を追うごとにどんどん増えて、シルヴプレの公演が終わる頃には人だかりが出来ていました。


でも、劇場やライブハウスだと観客の定員に制限があるけれど、路上なら関係なし。


「劇街ジャンクション」は、七間町に訪れる人々が、ほんのひと時、楽しい時間を過ごせるようにとの願いを込めて催されているのです。


寒さを吹き飛ばすアツいパフォーマンス。3時間のライブリレー


出演者は、主に静岡県内で活動する大道芸人や演劇団員、ミュージシャンの方々です。


可愛らしい容姿からは想像出来ないくらい力強い歌声を響かせるのは、「あやあね」さん。歌と、「新しい自分」というキーワードで上手に観客と空間を共有しながら、独特の世界観を表現してくれました。



炎のギタリスト、「原大介」さんのギターは不思議な存在感を持っていて、道行く人が次々と足を止めてその音色に聞き惚れていました。



今回はミュージシャンの参加者が多く、ド派手な衣装で登場して観客の度肝を抜き、終始アツいノリで会場を盛り上げてくれるのは「鈴木NG秀典―だ―。と、わんぱくゴリラ―ず。」



「ドラムサークル☆鈴木知子」さんは「みんなであったまろう」をテーマに、客席近くに置いたドラムで誘う観客参加型の楽しいイベントで、演者と観客との一体感を演出してくれました。




静岡で演劇活動する劇団「劇団渡辺」が繰り広げるのは、おそらく誰も見たことのない日本昔話。見るからに悪そうなふてぶてしい狸と可愛いうさぎのバニーちゃんによる、ぶっ飛んだ「カチカチ山」を路上演劇で披露。



発起人の「あまる」氏は、鉄板中の鉄板。抱腹絶倒の女装ネタ、「妄想片思い女子のひとり言」をコミカルに演じる「サユリ」で観客を沸かせてくれました。



フィナーレには、オリンピックを意識しての聖火リレー。




途中、風が邪魔して火が点かないというハプニングをも笑いに変えて、大道芸には欠かせない、火を吹くダイナミックなファイヤーショーで、3時間に渡る公演に幕を閉じました。




観劇の合間に、テーブル席でコーヒーやおでんでひと休み


劇街ジャンクションでは、近隣の協力飲食店からのテイクアウトはもちろん、出店でも美味しいものが味わえます。


歩道に点在するベンチの他に、テントの下にはテーブル席が用意されており、近隣のカフェからテイクアウトした熱いコーヒーや甘いチャイと、出店のganmoバーガーや熱々静岡おでん、その他いろいろな美味しい軽食で、ゆったりと時間を楽しむことが出来ます。




今回は、新年を迎えて初めての劇街ジャンクションということもあり、あそviva劇場から甘酒がサービスされました。生姜の利いた熱い甘酒は、観客に大好評だったようです。


小腹を満たしたら、七間町通りをお散歩するのはいかがでしょうか。お洒落なショーウインドーを見て歩いたり、出店しているお店でお気に入りの雑貨を探したり、即興で似顔絵を描いてもらったり、路上に描かれるライブアートが出来上がっていくのを眺めるなど、観劇の他にも楽しみ方はたくさんあります。



普段は目的地へ向かって足早に通り過ぎてしまう通りを、少し立ち止まってゆっくりと街並みを見て歩くと、意外な新しい発見があるかもしれませんね。


まとめ


「劇街ジャンクション」の魅力が伝わったでしょうか。さて、今期の劇街ジャンクションは次が最終回。日時は2018年3月10日(土)、小雨決行。まだ観たことがないという方は、ぜひ七間町へ。


次回の特別ゲストは、「Daggle KOMEI」さんと、「わっしょいゆ~た」さん。その他の出演者アーティストなど詳しい情報は決まり次第、あそviva劇場ホームページに掲載されますのでこちらからどうぞ。


今期は3月で最終回ですが、これからも「劇街ジャンクション」は不定期に街のイベントと共に続けていくそうです。


街にハミ出す劇場のチカラ。街と一緒に、大道芸も演劇も音楽も一度に味わえる、贅沢で不思議な空間。それが、「劇街ジャンクション」なのです。


寒さも和らぐ3月に、お花見に出掛けがてら、七間町へと足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?


<ライター>

猫たぬき
時に、舞台の脚本を書くシナリオライター。趣味、主婦業。静岡に住み始めて十年以上経つのに未だ関西弁が抜けない生粋の関西人。いつまでも新鮮な目で静岡を見つめ、楽しくおもしろい記事を綴っていきたいと思います。

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