
ドーモプラスがブレイク期待のアーティストを定期的に紹介! 今回はアイドルや芸人と異色の東名阪企画 to Fantastic City”を行い、大成功を収めた“ジョゼ”のインタビューをお届け! 現状に満足せず、新たな世界を追い求める彼らの素顔に迫りました。
――今年はジョゼ7周年のアニバーサリーイヤーですよね。5月に行われた東名阪ワンマンツアー『7th Gradation』、10月に行われた7th Gradation東名阪企画『to Fantastic City』。ジョゼというバンドにとって欠かせない1年だったかと思うのですが、まずは東名阪ワンマンツアーのお話を聞かせていただけますか。
羽深:東名阪ツアーは新譜をリリースする際にいつもやっていることなんですけど、リリースと関係なくツアーするのはあまりない経験でしたね。
このワンマンツアーは「昔の曲をどうしてもやりたい!」っていう僕のワガママから始まったんです。「7年というキャリアを経た今の自分たちだったら、過去の曲をどう表現できるんだろう」ということに興味があったし、昔の曲も各地のみなさんに聴いてほしかった。僕等は、どの時代の曲も同じくらい大事にしているバンドなので。
――手ごたえはいかがでしたか?
羽深:本当にやってよかったですね。自分たちの曲がお客さんにどう映っているのかということを確認できましたし、なによりも自分の心の整理ができて。スッキリしました!
――お二人は、どうですか。
吉田:僕はジョゼに加入してから名古屋・大阪でワンマンをやるのが初めてで。東京じゃないところでも、ジョゼを見てくれるお客さんがちゃんといることに感動しましたね。それこそ、3つ来てくださった方もいましたし遠征してくれる人もいて。いいお客さんがジョゼにはいっぱいいるな、って嬉しくなりました。
中神:リリースツアーのファイナルでワンマンライブをしたりすることもあるんですけど、そういう時ってどうしても新曲に気持ちが持ってかれてしまうんですよね。でも今回はリリースが関係なかったので、すごいフラットな気持ちで演奏できました。
――じんじんさんは羽深さんと共に、初期からのジョゼメンバーですもんね。
羽深:そうですね。じんじんと出会ってから、もう10年経ちました。メンバーは1人変わったけど、こうやってバンドが続いてるのはすごいなって。
実は、このワンマンツアーで自分の中で整理をつけたかったっていうのもあるんです。『honeymoon』というシリーズの終わり頃が、次にどういうことをやりたいのかわからなかった時期で。“故きを温ねて新しきを知る”じゃないですけど、昔の曲の中に宝物が眠っているような気がしたんです。
だから、全アルバムからのオールタイムセットリストにしました。最初は全公演で全部セットリストが違うようにしようかと思ったんですけど、さすがにしっちゃかめっちゃかになってしまうと思ったのでバランスをとって(笑)。
――これからのジョゼは、どのようなフェーズに向かっていくのでしょうか。
羽深:ジョゼって『YOUNGSTER』を起点にして、かなり変わったと思うんですよ。根岸さんがプロデューサーについて、歌ものに対するいろはを教わったというか。今まで知らずにやってきたところを解剖して、新たな感覚を手に入れた時期だったんです。
大人になる時期だったので『YOUNGSTER』ってタイトルをつけたくらい。根岸さんが「ライブに音源を近づけたほうがいい」と助言をくださって、3ピースバンドジョゼを詰め込んだのが『honeymoon』。バンドの初期はギターのダビングを多用した曲が多かったので、それから比べるとすごい変わったなぁ……と。
今のフェーズは『honeymoon』や『YOUNGSTER』に比べると結構攻撃的な感じ。サウンド的には、すごくそぎ落とされたロックですね。昔ながらの90年代みたいなロックで、流行りの音楽とはかけ離れた作品になってます。ただ、僕等は天邪鬼なので次のアルバムが「3ピースの音にしたいか」と訊かれるとまた別なんですよね(笑)。
今は全裸で新しいジョゼを探してる状態。「これ似合うかな」「やっぱりこっちかな」って、いろいろと試してます。周りがいろいろと変化していく中で、バンドの意識も変わってきたんですよね。対バンするバンドも、来るお客さんも、音楽のとらえ方もみんな変わってきてる。そこを無視はできないなと。
――吉田さんの加入はバンドにとって大きな転換期の1つだったかと思うのですが、それから3年が経ち次の転換に向かっている印象があります。“新たなジョゼにならなければ”などといった焦りもやはりあるのでしょうか。
羽深:焦りはずっとありますよ、最初から。3ピースって限られた音でかっこよさを追求していかなければならないじゃないですか。重ねればいいってものでもないし、簡単に済まして上手くいくわけでもない。すごく難しい編成だと思うんですよ。
僕は僕の信念に沿って音楽をやっているけど、ジョゼとして明確なコンセプトって実はなくて。「こういう歌を歌っていく」という指針がない分、毎回の作品で少しずつでも器を広げていかなければならないなって思ってます。
――ジョゼにコンセプトがないのは意外ですね。
羽深:僕のパーソナルな部分を出していくことがコンセプトなので、それが1つのジャンルになれば嬉しいなとは思ってますけど(笑)。
――なるほど。『sekirara』というアルバムがあるのも納得です。羽深さんのパーソナルな部分は、すべてジョゼに出し切っているのですか?
羽深:実は、そうでもないですね。今まではダサいところを見せるのが好きじゃなかったので。だから、まだやってないような歌詞の世界って全然あるんですよ。
例えば「彼女に振られた」とか「○○がめんどくさい」とか。そういうことからわりと避けて歌詞を作ってきたので、次の作品からは触れていくのかな、と。あくまでもファンタジックな表現をしたい、という節はあるんですけどね。
――実は完全に赤裸々ではなかったと。
羽深:当時は「俺のこと全部話すから、あなたも教えて」っていう気持ちで作っていたけど、今思うとまだまだ赤裸々になれたような気はしますね。ただ、僕らが脱ぐだけでなく「聴いた人が赤裸々な気持ちになったらいいな」っていう思いもあって。
どちらかというと『YOUNGSTER』の方が『sekirara』より脱げてるかも(笑)。でも『sekirara』がなかったら、そういう気持ちにはなってなかったな。
――羽深さんの曲は、「水」や「雨」、「獣」など自然にまつわるテーマが多いように感じるのですが、都会や街へのコンプレックスみたいなものってありますか?
羽深:たしかに“東京都出身”のコンプレックスは、めちゃくちゃありますね。僕は「バンドをやるために上京したんだ」っていう人間ではないので。「俺には、これしかない!」と決めて上京してた人たちを見ると、「俺は甘えだな」って謎の劣等感を感じることもあります。
――それゆえに、都会とは別の方向に進もうとしているんですか。
羽深:東京はリアルが多いですよね。僕は人混みや雑踏が大嫌いなので、少しでも忘れられる要素を求めてしまうっていうのはあるかもしれません。実際に、嫌なことがあったりすると海や水族館に行きますし。普段、目に見えてるものから目を背けたがりなんだと思います。
だから、図書館も好きで。宇宙の図鑑や天気の図鑑、深海の生き物図鑑とかをひたすら見てます。そうやっていらん知識を増やすのが好きなんですけど、逃避したがりな性格なのかもしれませんね。
――現実的な世界を見ないために、空想的な世界の歌詞を好むということですか。
羽深:そうかもしれないです。
――11月に行われたイベントのタイトルである“to Fantastic City”は、羽深さんが苦手とされている都会なイメージがあるのですが、なぜこのようなタイトルにされたのですか?
羽深:僕らがいつも見ているグレーな東京の街を、キラキラしてる街として捉えたくて。朝起きて、電車に乗って、お昼のランチを楽しみにしながら仕事して、残業をして、満員電車に乗って帰るみたいなのってお決まりじゃないですか。
でも、「1つ視点を変えればそこはキラキラしてるんだよ」っていうことを音楽で伝えられたらなと。たぶん次の作品でも、その要素は入ってくると確信しているので、早めに企画タイトルとしてつけました。
コンプレックスだった“街”と向き合う時期なのかもしれないですね。真向で対峙するというよりかは、「俺たちが彩ってやる」くらいのつもりでいます。
――Eggsさんと協力して出演アーティストを決める試みも話題になりましたね。
羽深:新しい出会いが欲しかったんです。正直、若い人たちの音楽を僕はあんまり聴かないので、若手アーティストを知らないんですよね。今の音楽シーンを知りたい、「勉強させてもらいたい」という気持ちだったので、変な欲はなかったですね。
吉田:“to Fantasic City”で出会った人たちと、また新しいシーンを作っていけたら面白いよね。
――今の若い世代に比べると、ジョゼはかなりお兄さんですもんね。
羽深:そうですね。僕らの同期はほぼいません。だからこそ、ここまで進んできてる覚悟を持ち続けたいな。久しぶりに会った友達に言われるんですよ。「まだバンドを続けてるのはすごい」って。でも、ダラダラ続けることだったらできると思うんです。たくさん転んで立ち上がって、一歩一歩自覚を持って進んで行きたいですね。
――次に進むための一歩としての企画なんですね。今回が7周年だったので、次は10周年でしょうか。
羽深:おー! 10周年か。
中神:なんか大御所みたいだね(笑)。
――DOMOはアルバイトのメディアなのですが、みなさんは今までにどんなアルバイトをしてきましたか?
羽深:めっちゃいろんなことをやりましたよ! 1番最初にやったのは郵便局の仕分けですね。あの、お正月の年賀状をわけるやつ。その給料で買ったエフェクターとかまだ持ってるので、感慨深いですね。
あとは、ポスターを貼るバイト、イベント会場でイスを並べるバイト、住宅展示場の設営とか。きぐるみの中に入ったこともありますよ(笑)。かわいいキャンペーンガールの子もいて、あれは楽しかったですね。アルバイト好きだったなぁ……。
吉田:今までやったのは、コンビニや居酒屋ですね。もう2度とやりたくないのは、引っ越しのバイト。大学に入る前に短期の日雇いバイトをしてたんですけど、その中に引っ越しのバイトが入ってて。
僕、めちゃくちゃ細いじゃないですか。だから絶対にNGだって言ってるのに、引っ越しの仕事を受けないと他の案件を回してくれないんですよ。しょうがなく受けたら、1軒終わった段階で腕がプルプルになっちゃって、わけわからない駅で降ろされて一人で帰りました。ちゃんと自分の体にあったバイトをしなきゃダメですね。
羽深:それ大事。
吉田:でも、基本的に僕は1つのバイトを長くやるタイプだったので、派遣以外はどれも続けてましたね。コンビニは1、2年やったし、居酒屋も4年くらい。
羽深:僕は点々としてたな(笑)。あ、1番オススメのバイトありました。プールの監視員! 室内プールの監視員は、めっちゃ楽なのでオススメですね。平日シフトならおばちゃんがプカプカ歩いているだけなので、それをぼーっと見て終わりなので(笑)。
――じんじんさんは、どうですか?
中神:僕は3年くらい、うどん屋さんで働いてました。天ぷらも売りのお店だったんですけど、ひたすら賄いを食べてましたね。あとは印刷会社で働いたこともありますよ。
羽深:初耳だわ(笑)。
中神:付き合いのある企業に「そろそろ名刺なくなりませんか?」って、営業するバイトをしてました。
羽深:じんじん、しゃべり得意だもんね! しかし、いろんなアルバイトやったなぁ……。花火大会の設営もしたし。
吉田:いったい何個やってんの(笑)。でも、それだけ数を経験しているとやめるのも相当早いよね。バイトが続く続かないって本当に性格がでると思う。僕は同じコミュニティで仲を深めていきたいタイプだから、1つのバイトを長くやる派だな。
中神:僕も完全にそっち。バイト初めの「はじめまして」な感じって気を使うじゃないですか。バイト先を点々としていると、ずっとその繰り返しになっちゃうから嫌だなって。
バイトって長く続けるほど、バイト先がリラックスできる空間になると思うんですよ。点々とする人を否定する気はないけど、僕は1つのバイトを続ける派です。
羽深:確かにじんじんの言う通り、仕事を覚えちゃって空間に馴染むのが1番楽だよね。
中神:居心地がいいとストレス的なものってなくなってくるじゃん? 俺なんて最終的に、何も言わずにうどんを食べてたもん(笑)。
気づくと私たちは日常を選びがちになります。代わり映えしない無難な服に身を包み、スタバへ行くとお気に入りのドリンクを頼み、なんとなく同じ時間に就寝する。日常から一歩踏み出して“変わる”ということは、どうしても恐怖が伴うものです。変わったその先に待ってるのは、成功か失敗かわからないのですから。それでも現状に満足せずに変わっていこうとするジョゼは7年というキャリアだけではない強さを感じました。新たな街へ向かって進み続ける彼らのライブに、ぜひ足を運んでみてください。
取材・文:坂井彩花
Photo:高村 勇一郎
東名阪ワンマンツアーで見つけた宝物
――今年はジョゼ7周年のアニバーサリーイヤーですよね。5月に行われた東名阪ワンマンツアー『7th Gradation』、10月に行われた7th Gradation東名阪企画『to Fantastic City』。ジョゼというバンドにとって欠かせない1年だったかと思うのですが、まずは東名阪ワンマンツアーのお話を聞かせていただけますか。
羽深:東名阪ツアーは新譜をリリースする際にいつもやっていることなんですけど、リリースと関係なくツアーするのはあまりない経験でしたね。
このワンマンツアーは「昔の曲をどうしてもやりたい!」っていう僕のワガママから始まったんです。「7年というキャリアを経た今の自分たちだったら、過去の曲をどう表現できるんだろう」ということに興味があったし、昔の曲も各地のみなさんに聴いてほしかった。僕等は、どの時代の曲も同じくらい大事にしているバンドなので。
――手ごたえはいかがでしたか?
羽深:本当にやってよかったですね。自分たちの曲がお客さんにどう映っているのかということを確認できましたし、なによりも自分の心の整理ができて。スッキリしました!
――お二人は、どうですか。
吉田:僕はジョゼに加入してから名古屋・大阪でワンマンをやるのが初めてで。東京じゃないところでも、ジョゼを見てくれるお客さんがちゃんといることに感動しましたね。それこそ、3つ来てくださった方もいましたし遠征してくれる人もいて。いいお客さんがジョゼにはいっぱいいるな、って嬉しくなりました。
中神:リリースツアーのファイナルでワンマンライブをしたりすることもあるんですけど、そういう時ってどうしても新曲に気持ちが持ってかれてしまうんですよね。でも今回はリリースが関係なかったので、すごいフラットな気持ちで演奏できました。
――じんじんさんは羽深さんと共に、初期からのジョゼメンバーですもんね。
羽深:そうですね。じんじんと出会ってから、もう10年経ちました。メンバーは1人変わったけど、こうやってバンドが続いてるのはすごいなって。
実は、このワンマンツアーで自分の中で整理をつけたかったっていうのもあるんです。『honeymoon』というシリーズの終わり頃が、次にどういうことをやりたいのかわからなかった時期で。“故きを温ねて新しきを知る”じゃないですけど、昔の曲の中に宝物が眠っているような気がしたんです。
だから、全アルバムからのオールタイムセットリストにしました。最初は全公演で全部セットリストが違うようにしようかと思ったんですけど、さすがにしっちゃかめっちゃかになってしまうと思ったのでバランスをとって(笑)。
全裸で探す新しいジョゼ
――これからのジョゼは、どのようなフェーズに向かっていくのでしょうか。
羽深:ジョゼって『YOUNGSTER』を起点にして、かなり変わったと思うんですよ。根岸さんがプロデューサーについて、歌ものに対するいろはを教わったというか。今まで知らずにやってきたところを解剖して、新たな感覚を手に入れた時期だったんです。
大人になる時期だったので『YOUNGSTER』ってタイトルをつけたくらい。根岸さんが「ライブに音源を近づけたほうがいい」と助言をくださって、3ピースバンドジョゼを詰め込んだのが『honeymoon』。バンドの初期はギターのダビングを多用した曲が多かったので、それから比べるとすごい変わったなぁ……と。
今のフェーズは『honeymoon』や『YOUNGSTER』に比べると結構攻撃的な感じ。サウンド的には、すごくそぎ落とされたロックですね。昔ながらの90年代みたいなロックで、流行りの音楽とはかけ離れた作品になってます。ただ、僕等は天邪鬼なので次のアルバムが「3ピースの音にしたいか」と訊かれるとまた別なんですよね(笑)。
今は全裸で新しいジョゼを探してる状態。「これ似合うかな」「やっぱりこっちかな」って、いろいろと試してます。周りがいろいろと変化していく中で、バンドの意識も変わってきたんですよね。対バンするバンドも、来るお客さんも、音楽のとらえ方もみんな変わってきてる。そこを無視はできないなと。
羽深創太のパーソナルという1つのジャンル
――吉田さんの加入はバンドにとって大きな転換期の1つだったかと思うのですが、それから3年が経ち次の転換に向かっている印象があります。“新たなジョゼにならなければ”などといった焦りもやはりあるのでしょうか。
羽深:焦りはずっとありますよ、最初から。3ピースって限られた音でかっこよさを追求していかなければならないじゃないですか。重ねればいいってものでもないし、簡単に済まして上手くいくわけでもない。すごく難しい編成だと思うんですよ。
僕は僕の信念に沿って音楽をやっているけど、ジョゼとして明確なコンセプトって実はなくて。「こういう歌を歌っていく」という指針がない分、毎回の作品で少しずつでも器を広げていかなければならないなって思ってます。
――ジョゼにコンセプトがないのは意外ですね。
羽深:僕のパーソナルな部分を出していくことがコンセプトなので、それが1つのジャンルになれば嬉しいなとは思ってますけど(笑)。
――なるほど。『sekirara』というアルバムがあるのも納得です。羽深さんのパーソナルな部分は、すべてジョゼに出し切っているのですか?
羽深:実は、そうでもないですね。今まではダサいところを見せるのが好きじゃなかったので。だから、まだやってないような歌詞の世界って全然あるんですよ。
例えば「彼女に振られた」とか「○○がめんどくさい」とか。そういうことからわりと避けて歌詞を作ってきたので、次の作品からは触れていくのかな、と。あくまでもファンタジックな表現をしたい、という節はあるんですけどね。
――実は完全に赤裸々ではなかったと。
羽深:当時は「俺のこと全部話すから、あなたも教えて」っていう気持ちで作っていたけど、今思うとまだまだ赤裸々になれたような気はしますね。ただ、僕らが脱ぐだけでなく「聴いた人が赤裸々な気持ちになったらいいな」っていう思いもあって。
どちらかというと『YOUNGSTER』の方が『sekirara』より脱げてるかも(笑)。でも『sekirara』がなかったら、そういう気持ちにはなってなかったな。
――羽深さんの曲は、「水」や「雨」、「獣」など自然にまつわるテーマが多いように感じるのですが、都会や街へのコンプレックスみたいなものってありますか?
羽深:たしかに“東京都出身”のコンプレックスは、めちゃくちゃありますね。僕は「バンドをやるために上京したんだ」っていう人間ではないので。「俺には、これしかない!」と決めて上京してた人たちを見ると、「俺は甘えだな」って謎の劣等感を感じることもあります。
――それゆえに、都会とは別の方向に進もうとしているんですか。
羽深:東京はリアルが多いですよね。僕は人混みや雑踏が大嫌いなので、少しでも忘れられる要素を求めてしまうっていうのはあるかもしれません。実際に、嫌なことがあったりすると海や水族館に行きますし。普段、目に見えてるものから目を背けたがりなんだと思います。
だから、図書館も好きで。宇宙の図鑑や天気の図鑑、深海の生き物図鑑とかをひたすら見てます。そうやっていらん知識を増やすのが好きなんですけど、逃避したがりな性格なのかもしれませんね。
――現実的な世界を見ないために、空想的な世界の歌詞を好むということですか。
羽深:そうかもしれないです。
新たな出会いのある幻想的な街
――11月に行われたイベントのタイトルである“to Fantastic City”は、羽深さんが苦手とされている都会なイメージがあるのですが、なぜこのようなタイトルにされたのですか?
羽深:僕らがいつも見ているグレーな東京の街を、キラキラしてる街として捉えたくて。朝起きて、電車に乗って、お昼のランチを楽しみにしながら仕事して、残業をして、満員電車に乗って帰るみたいなのってお決まりじゃないですか。
でも、「1つ視点を変えればそこはキラキラしてるんだよ」っていうことを音楽で伝えられたらなと。たぶん次の作品でも、その要素は入ってくると確信しているので、早めに企画タイトルとしてつけました。
コンプレックスだった“街”と向き合う時期なのかもしれないですね。真向で対峙するというよりかは、「俺たちが彩ってやる」くらいのつもりでいます。
――Eggsさんと協力して出演アーティストを決める試みも話題になりましたね。
羽深:新しい出会いが欲しかったんです。正直、若い人たちの音楽を僕はあんまり聴かないので、若手アーティストを知らないんですよね。今の音楽シーンを知りたい、「勉強させてもらいたい」という気持ちだったので、変な欲はなかったですね。
吉田:“to Fantasic City”で出会った人たちと、また新しいシーンを作っていけたら面白いよね。
――今の若い世代に比べると、ジョゼはかなりお兄さんですもんね。
羽深:そうですね。僕らの同期はほぼいません。だからこそ、ここまで進んできてる覚悟を持ち続けたいな。久しぶりに会った友達に言われるんですよ。「まだバンドを続けてるのはすごい」って。でも、ダラダラ続けることだったらできると思うんです。たくさん転んで立ち上がって、一歩一歩自覚を持って進んで行きたいですね。
――次に進むための一歩としての企画なんですね。今回が7周年だったので、次は10周年でしょうか。
羽深:おー! 10周年か。
中神:なんか大御所みたいだね(笑)。
初めてのアルバイトで買った思い出のエフェクター
――DOMOはアルバイトのメディアなのですが、みなさんは今までにどんなアルバイトをしてきましたか?
羽深:めっちゃいろんなことをやりましたよ! 1番最初にやったのは郵便局の仕分けですね。あの、お正月の年賀状をわけるやつ。その給料で買ったエフェクターとかまだ持ってるので、感慨深いですね。
あとは、ポスターを貼るバイト、イベント会場でイスを並べるバイト、住宅展示場の設営とか。きぐるみの中に入ったこともありますよ(笑)。かわいいキャンペーンガールの子もいて、あれは楽しかったですね。アルバイト好きだったなぁ……。
吉田:今までやったのは、コンビニや居酒屋ですね。もう2度とやりたくないのは、引っ越しのバイト。大学に入る前に短期の日雇いバイトをしてたんですけど、その中に引っ越しのバイトが入ってて。
僕、めちゃくちゃ細いじゃないですか。だから絶対にNGだって言ってるのに、引っ越しの仕事を受けないと他の案件を回してくれないんですよ。しょうがなく受けたら、1軒終わった段階で腕がプルプルになっちゃって、わけわからない駅で降ろされて一人で帰りました。ちゃんと自分の体にあったバイトをしなきゃダメですね。
羽深:それ大事。
吉田:でも、基本的に僕は1つのバイトを長くやるタイプだったので、派遣以外はどれも続けてましたね。コンビニは1、2年やったし、居酒屋も4年くらい。
羽深:僕は点々としてたな(笑)。あ、1番オススメのバイトありました。プールの監視員! 室内プールの監視員は、めっちゃ楽なのでオススメですね。平日シフトならおばちゃんがプカプカ歩いているだけなので、それをぼーっと見て終わりなので(笑)。
――じんじんさんは、どうですか?
中神:僕は3年くらい、うどん屋さんで働いてました。天ぷらも売りのお店だったんですけど、ひたすら賄いを食べてましたね。あとは印刷会社で働いたこともありますよ。
羽深:初耳だわ(笑)。
中神:付き合いのある企業に「そろそろ名刺なくなりませんか?」って、営業するバイトをしてました。
羽深:じんじん、しゃべり得意だもんね! しかし、いろんなアルバイトやったなぁ……。花火大会の設営もしたし。
吉田:いったい何個やってんの(笑)。でも、それだけ数を経験しているとやめるのも相当早いよね。バイトが続く続かないって本当に性格がでると思う。僕は同じコミュニティで仲を深めていきたいタイプだから、1つのバイトを長くやる派だな。
中神:僕も完全にそっち。バイト初めの「はじめまして」な感じって気を使うじゃないですか。バイト先を点々としていると、ずっとその繰り返しになっちゃうから嫌だなって。
バイトって長く続けるほど、バイト先がリラックスできる空間になると思うんですよ。点々とする人を否定する気はないけど、僕は1つのバイトを続ける派です。
羽深:確かにじんじんの言う通り、仕事を覚えちゃって空間に馴染むのが1番楽だよね。
中神:居心地がいいとストレス的なものってなくなってくるじゃん? 俺なんて最終的に、何も言わずにうどんを食べてたもん(笑)。
気づくと私たちは日常を選びがちになります。代わり映えしない無難な服に身を包み、スタバへ行くとお気に入りのドリンクを頼み、なんとなく同じ時間に就寝する。日常から一歩踏み出して“変わる”ということは、どうしても恐怖が伴うものです。変わったその先に待ってるのは、成功か失敗かわからないのですから。それでも現状に満足せずに変わっていこうとするジョゼは7年というキャリアだけではない強さを感じました。新たな街へ向かって進み続ける彼らのライブに、ぜひ足を運んでみてください。
取材・文:坂井彩花
Photo:高村 勇一郎