今回取り上げるのは沼津市内浦、海に面した日本情緒あふれるお宿「安田屋旅館」。mitecoとDOMO+(ドーモプラス)にてすでに公開されている『ラブライブ!サンシャイン!!』聖地巡礼レポ記事(前後編)でもちらっとご紹介しました。
主人公・高海千歌(たかみ ちか)の実家の題材として白羽の矢が立ち、今月上旬から第2期がスタートしたなかで、「聖地巡礼」スポットとして若者に大注目されているこちらの旅館。
明治20年創業の歴史、国登録有形文化財という筋目正しい宿でありながら、アニメの聖地として注目されることについてどう感じているのか? 安田屋旅館支配人の安田和訓さんにお話を伺ってきました!
題材になった背景と当時の戸惑い
馬場
まずは、安田屋旅館様が『ラブライブ!サンシャイン!!』の題材になった背景を教えていただけますか?
安田
背景ってほどのことは知らないんですけど、制作の方が一度、一般のお客様として下見にいらしていたみたいで。そのあと「使ってもいいですか」とお話をいただいて、まあ少しでも宣伝になればいいかなって気持ちで「どうぞ」とお返事をしました。
馬場
歴史ある旅館様ですが、アニメの聖地となることに戸惑いみたいなものはなかったでしょうか。
安田
お話をいただいたときは、こんなに影響力のあるアニメだってことを知らなかったんです。なのでぬいぐるみを抱えていらっしゃる方や、キャラクターの誕生日会をしたいとおっしゃる方が来てくださったとき、最初は困惑しましたね。
アニメ第9話「未熟DREAMER」にて、キャラクター達が会議を開いていた場所。
馬場
やっぱり、お客さんの層は変わりましたか。
安田
そうですね。これまでは年配のご夫婦やファミリー層がほとんどでしたけど、今では7、8割が若い男性グループで。それに目の前が海水浴場ってこともあって昔は夏の時期に忙しかったのが、去年からは「ずっと土曜日」の状態。
馬場
ずっと土曜日?
安田
これまでは土曜日が忙しくて、平日そんなに忙しくないって月もありまして。でも今では毎日が土曜日のような具合なんです。嬉しい悲鳴ですね。
馬場
すごい効果。あの、こちらに入ってまずびっくりしたのがそこのコーナーなんですけど。半端じゃない量の『ラブライブ!サンシャイン!!』グッズですね・・・。
安田
ああ、ポスターとタペストリー、雑誌はうちで買ったものですけど、あとはお客様が置いて行ってくださったもので。どんどん増殖しているんですよ(笑)。特に「ラブライブを前面に押し出そう」と企画してやっているわけではなく、みなさん「よかったら」と寄贈してくださって。
馬場
ここだけ異空間ですねえ。旅館様として多少路線が変わった部分もあると思うのですが、抵抗はなかったですか?
安田
「路線変更」と言われることが結構あるんですけど、旅館として路線を変えることはしていないんですよ。ラブライブファンの方だから、ファンの方じゃないから何をして差し上げるということはなくて。同じお客様として対応させていただいています。まあ喜んでいただけるかなと思い、グッズコーナーは設けていますけど。
馬場
実際にお客さんの反応はいかがですか。
安田
ファンの方は「聖地」という目で見てくれているのか、嬉しそうにしてくださることが多いですね。ありがたいです。
「聖地」でつながるファンの交流の場
馬場
安田屋旅館様でなにか『ラブライブ!サンシャイン!!』に関するイベントをなさることはありますか?
安田
うちとしてイベントというのはやっていないんです。ただキャラクターの誕生日になると、ファンの方同士でお祝いなさっていることはありますね。このあいだも梨子ちゃんの誕生日に、ここのラウンジで午前0時を迎えたいとおっしゃったお客様がいたり。
馬場
熱心な方ですねえ。ラウンジはいつでも開放しているんでしょうか。
安田
いえ。普段は12:00~17:00まで、ラブライブファン交流会をする場合には20:30~22:30までですね。
「ラブライブ!サンシャイン!!ファン交流会」が行われているラウンジは、作中にも登場。
馬場
交流会なんてものがあるんですね!
安田
場を提供させていただいているだけですけどね。集まりたいという方がいらっしゃった日には開催してます。
馬場
じゃあお客さん同士が、安田屋旅館様を通してつながることもあるんでしょうか。
安田
あると思いますよ。交流会だけじゃなく、日帰りの入浴でいらした方が、お風呂場で知り合ったファンの方と仲良くなったというお話もありますし。
そういうのを聞くと、家のなかでアニメを観るだけじゃなく、現地に行く行動力を持っていらっしゃる。地元の人と親しくなったり、こうした交流の場で誰かとお話をしたり。ラブライブのファンはそういう風に、ポジティブな方が多いなあと感じますね。
ラブライブをきっかけに「いつかまた来たくなる」旅館へ
「電撃G's magazine 2015年11月号」で登場キャラクターが浸かっていた「思い出の湯」。
馬場
安田様も『ラブライブ!サンシャイン!!』はご覧になりましたか?
安田
ええ。8割近くのお客様がラブライブのファンとなると、接客をする者として観ないでいるわけにもいきませんから。いや、観たら観たで面白くなってきちゃってる自分もいます(笑)。僕はここの出身なので、本当に見たまんまだなと。ストーリーや登場人物がわかれば、お客様とお話することもできますしね。
馬場
でも確かに、観ておかないと困ることもあるかもしれませんね。
安田
そうですね。リアルタイムで放映していたとき「今日は妙に忙しいなあ」と思ったら、前日の放送でうちが映っていたり。あと、キャラクターが地面に倒れこむシーンを再現したファンを地元の方が見て、「人が倒れている」「それを写真に撮っている」っていうので心配して声をかけたってこともあったみたいで(笑)。
忠実に再現していただいているぶん、ファンの方も同じアングルで写真撮影をしたがるので、作品を知らないと「この方は何をしているんだ?」ってことも起こり得ますしね。
馬場
それは地元の方もビックリしたでしょうね(笑)。アニメで安田屋旅館を知って実際に訪れた方が、リピーターになることってあるでしょうか?
安田
何度も来てくださる方は多いですよ。週1ペースで、お休みのたびに来てくださるお客様もいますね。これはうちの目標でもあるところなので、ありがたい話です。
馬場
目標ですか?
安田
アニメは沼津を知ってもらうきっかけに過ぎないと思っていて。沼津に来て、安田屋旅館に泊まって「いいところだな」と思ってくださった方のうち5人に1人でも、10人に1人でもいつかまた来てくれたら。ブームは未来永劫続くものではないので、アニメを通して沼津を知ってくださった方に「また来たい」と思ってもらえるようにと常々考えています。
安田屋旅館さんでは、支配人の安田さんだけでなくほとんどのスタッフがファンの方に対応できるよう『ラブライブ!サンシャイン!!』を視聴済みとのことでした。ただ宿泊するためだけの施設ではなく、お客さん同士のつながり、そしてお宿とお客さんとの触れ合いも大切にしているのだなあと。
そんな旅館だからこそ、お宿の一角で溢れかえる膨大な量のグッズからは、『ラブライブ!サンシャイン!!』ファンの作品への愛と、宿への感謝の気持ちがヒシヒシと伝わってきました。
記事中にもありますが、日帰り入浴も可能なので沼津市内浦に訪れた際にはぜひお立ち寄りくださいね。
©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
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