様々なバイトでの胸キュンシチュエーションストーリー。第8回は、小林 亮太（The Best Average）くん、亜舞 琴美ちゃんが登場する「レコードショップ編」。前編に続き、【後編】をお届けします！

えっとぉ。このレコードは、こっちで……。

これだけのスペースでも、覚えるの大変だなぁ。お客さんに訊かれたらどうしよう。

カランカラン~♪

「いらっしゃいませー」

私がとっさに顔をあげて挨拶すると、店に入ってきた男性はそのまま私に話しかけてきた。

「すみません……。このレコードが、ここのお店にあるってネットで見てきたんですけど……」

「え、えっとぉ……」

突然の質問に戸惑い慌てふためいていると、後ろから声が飛んできた。

「なんの盤になりますか？」

レコードのことを盤と呼ぶことがあるよ！

「これなんですけど……」

お客さんがスマホを差し出す。

「あぁ、それだったらこっちですよ！」

りょうたは1㎜の迷いもなく、そのレコードを見つけ出しお客さんに手渡した。

「これで、お間違いないですか？」

爽やかな笑顔でお客さんに接客をしているりょうたは、立ち振る舞いが上手な小さい頃の彼を見ているようだ。

本当に昔っからこういうところだけはしっかりしてるんだよなぁ。

「あー、それです！ じゃぁ、それください。」

「ありがとうございます。こちらへ、お願いします」

「こちら2,500円になります」

でも、すごかったなぁ。こんなにいっぱいレコードあるのに、全然迷わなかったもん。

そんな風にどこか上の空で、私は任務をこなしていた。

「ふーっ……。終わった。」

小さい段ボール1つ分のレコードをしまうだけなのに、随分と時間がかかっちゃった。

次は……。あ、あれも外にだすやつだ。りょうたに文句つけられる前にやっておこっと。

さっきより大きいけど、いけるっしょ!!　せーのっと。

気合を入れて箱を持ち上げた瞬間、体が大きくゆらいだ。

うわっ！ ヤバい!! 倒れる!!!

「セーフ……」

「セーフ、じゃないから！ ったく、なに小さい体で無理してるんだよ。」

りょうたが呆れているのをよそに、私は思わずにやりと照れ笑いをしてしまった。
不意に後ろから抱きしめられ、彼の香水がふわっと香る。

もう小さかった頃の、りょうたじゃないんだな……。


「お前、小さい頃から変わってないのな。そういう一人で頑張ろうとするとこ。困ったことあったら、頼ってくれていいから。ほら、貸して」

小さい頃のりょうたのままかと思ってたけど、なんだかんだ大人になってたみたいだ。

「琴美、運んだからしまって」

マイペースな幼馴染の声が私を呼ぶ。

「はーい♪」

今日1番、女の子らしい声で返事をする。

ちょっとかっこよくなった幼馴染とのアルバイト、悪くないかもしれない。


Text：坂井彩花
Photo：くさかべまき

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