
「DOMO」と「Live House浜松窓枠」がオススメするアーティストのSpecialインタビュー企画! 今回は2017年7月26日にPHONO TONESとのスプリットアルバム「Dr.Jekyll」をリリースした“ADAM at”のインタビューをお届け! 同氏の地元である浜松市より、音楽活動の開始から今回のリリースにいたるまで、ガッツリお話をおうかがいしてきました。
――ADAM atとしての活動開始のきっかけについて聞かせてください。
ADAM at:もともとは音楽イベントを企画するイベンターだったんです。地元が浜松(静岡県浜松市)なんですが、ここ窓枠さんやそのほかのライブハウスでイベントをやらせていただいてまして。地元のバンドを何組か呼んで、それに東京のバンドも含めてやるようなスタイルのイベントですね。
――はじめはアーティスト活動ではなかったんですね。
ADAM at:そうなんですよ。全然やるつもりはなかったというか……。で、はじめるきっかけになったのはといいますと、自分のイベントで前座をやるようになったことがきっかけでした。
――前座ですか! でもイベントを企画する側の方が前座というのはすごく異色に感じるのですが……。
ADAM at:そうですよね。でも、きちんと理由もございまして。というのも、地方都市は地下鉄なんかがないので基本は車移動になるんですよね。だから、仕事終わりにライブハウスに来ようとしても、たまたま渋滞とかに巻き込まれると、目当てのバンドに間に合わなくなっちゃうのが地方なんです。
それで、「これはなんとかしたいな」と思って「あ、自分ピアノ弾けるじゃん」となったのがADAM atとしての活動のはじまりです。
――ちなみにそれっていつごろのことなんですか。
ADAM at:2011年ですから、いまから6年くらい前ですね。しかも12月24日だったんですよ(笑)。クリスマスイブですよ。自分のイベントなんですけど「こんな日に人が来るわけないじゃん」って。でも、僕にとってはスタートになった思い出深い日ですね。
――ADAM atさんといえば、ピアノの綺麗な音色が特徴のインストバンドだとも思うのですが、ご自身はいつごろからピアノをはじめたんですか?
ADAM at:5歳からですね。浜松市が“音楽の街”なんて呼ばれていたりもするんですが、そんな街のカラーもあってか、まあ親に習えと連れていかれまして(笑)。でも、まったくもって面白くないんですよ。特にレッスンが嫌いで……。あるじゃないですか。手の形がどうとか、弾き方の話ですね。あれがとにかく嫌でした。
当時ってファミコン全盛期だったから友達はみんなどこそこの家に集まってゲーム三昧。「なんで俺はピアノに行かなきゃならんの」と思いましたね。思ったどころか、実際に逃げ回りました。レッスンの日になると友達の家に出かけて行って。
――確かに遊び盛りの男の子にとっては嫌な日だったかもしれませんね(笑)。一方でADAM atさんは、“とにかく踊れる”というのもひとつのキャッチコピーかと思うのですが。今は楽しくやれていますよね。
ADAM at:おかげさまで、とても楽しくやってますよ。やっぱりクラシックよりもジャズ。もちろんスカみたいな踊れる音楽が大好きで。そういうものを取り入れてどんどんフリーな感じでやっていったら自分も楽しくなれたんです。
――地元、浜松市のお話が出ましたが、幼少期はちょっとピアノに関しては苦い思い出もありつつ、でも地元でイベンターとして活動なさったり、今年の4月には浜松のライブハウス窓枠さんでワンマンライブも成功させたりと地元への愛着も感じます。
ADAM at:窓枠さんは昔からある浜松のライブハウスのひとつで、ずっとライブはやりたかったんですよ。実は、この前ワンマンライブを開催するまでは一回もワンマンはできていなくて。だから、お話をいただいて、実現できたときはやっぱり光栄でしたし嬉しかったですね。素晴らしい、良い光景でした。
――お客さんの反応も地元と他の地域では違うのでしょうか。
ADAM at:そうですね。地元だからこその盛り上がりも感じたし、僕自身も熱くやれたなと思います。
しかも、今だからというのもあって、その日は東京はもちろんいろいろな地方からもお客さんが足を運んでくださって。そのうえ遠方から来てくださった方が、普段僕が飲みに行っている居酒屋とか餃子屋にも足を運んでくれていたみたいなんです。
浜松は良いところで好きな街。今でも住んでいるくらいなので、そうやって僕のつながりで少しでも地元に元気が出たら嬉しいことですね。
――直虎かADAM atかみたいな。
ADAM at:いや、おこがましいですよ、それは(笑)。でも、そうやって僕が発信した情報で広まるものがあるのであれば貢献したいと思ってますね。いつかは観光大使……なんて思っちゃったりしてなくもないです(笑)。
――地元といえば、今年はワンマンライブだけでなく静岡市で開催されるフェス「マグロック 2017」にも出演が決まりました。こちらにも思い入れはありますか。
ADAM at:マグロックは地元へのフィーチャーが強いイベントなので、呼ばれて光栄だなあと感じています。前日開催のフジソニックは特に地元色が濃くて、静岡にゆかりのあるバンドだったり、アーティストだったりを呼んでいるのでそういうイベントがあること自体も誇りですし。
あと、僕が呼ばれたことはもちろんですけど、これをきっかけに県内の音楽活動をしている他の方々もどんどん進出していってほしいなって気持ちがあります。これは地元出身だからかなとも思ってますね。
――ADAM atさんに続いていってほしいみたいな。
ADAM at:僕をひとつの目標にしてもらってもよいですし、この道を通っていってほしいな、なんて考えたりもしています。
――少し話が変わりますが、7月26日にインストバンドのPHONO TONESさんとコラボしたスプリットアルバム「Dr.Jekyll」をリリースされましたが、ずばり聴きどころはどこでしょう?
ADAM at:僕らインストバンドっていうのは、歌詞がないバンドで、BGMとかで聴くぐらいしか普通のリスナーって興味を持たないジャンルじゃないかって思っているんです。今回のスプリットアルバムは、そんなジャンル・シーンにいる2組が集まって盛り上げようとしているわけなんですけれども……。
我々としても“歌がなくても歌える曲”をコンセプトに、“これ誰なんだろう?”みたいに思ってもらえるようなキャッチーさは意識して曲作りをしています。
聴きどころは曲ごとにもあるんですが、僕側の「Dr.Jekyll」※では“通勤・通学中に聴ける音楽”というのを意識しました。仕事に行く朝ほど憂鬱なものはないと思うんですけど、裏を返せばここでなにか気分を変えられるようなものがあればと思って作った作品かもしれません。
※今回のスプリットアルバムはそれぞれのバンドから1枚ずつをリリース。ADAM at側は「Dr.Jekyll」、PHONO TONES側からは「Mr.Hyde」というタイトルでそれぞれ別の新録曲を収録。
――通勤・通学ですか。音楽を一番聴きやすいタイミングのひとつだなとは思うのですが、何か着想はあったのでしょうか。
ADAM at:これは僕自身が東京へよく足を運ぶようになって感心したことのひとつに“電車通勤を頑張る人たち”というのがあったからですね。最初も話した通り、浜松は車社会なので通勤って車だったり、通学は自転車だったり、プライベートが確保されているんです。
だから移動そのものにはストレスがなかったんですけど、東京に行って「この人たちはこんなにも通勤・通学を頑張っているんだ」と。毎朝満員の電車に乗り込むために人でごった返したホームへ吸い込まれるように歩いて行って……。これはすごいな、頑張ってるなと。
――確かに大変な瞬間かもしれません。
ADAM at:ですよね(笑)。それを直球に表現したのが、「Dr.Jekyll」の2曲目に収録した「カラクサロケット山手ガール」という曲で。まんまなネーミングですけど(笑)。
ぜひこれを聴いて朝の憂鬱な電車の時間を気持ち良い時間にしてくれたらって思います。
――DOMOはご存知の通り、静岡県を中心とする求人を紹介する媒体です。ADAM atさんもデビューまでアルバイトや就職を経験しているのかと思うのですが、印象に残っているエピソードはありますか?
ADAM at:僕は、学生時代から音楽に関係する仕事に就けたらいいなあ、なんて思ってたんですね。それで、高校生のころにコンサートスタッフのアルバイトを見つけて、その時に「なんて面白い仕事なんだ」と。華やかに感じたんですよね。だからこの仕事はほとんど初めて働くという経験をしたところでもありながら印象深いです。
というのも、ものすごく長い間携わるからで、高校卒業後は普通に営業職として企業に就職したものの、コンサートスタッフの楽しさが忘れられなくて、そのまま続けるんですよね。
――二足の草鞋ですか。
ADAM at:そうです。平日は会社行って、週末になるとコンサートスタッフという……。でも、当時はとにかく面白かったので苦じゃなかったですね。楽しかったです。で、結局のところコンサートスタッフのほうが楽しくなってしまって、仕事は辞めてそっちに絞り込んだと。
ADAM at:これは僕のなかでも大きな転機だったんです。ここからこの経験を活かして仕事をしようと、イベント制作会社に就職しなおしてスタッフとして働き、さらにコンサート会社に入って企画を立てて。それで、その後独立してイベンターになるんです。
――ここから冒頭のADAM atの活動がはじまるきっかけになるわけですね。
ADAM at:そうなんです。だから、ものすごく若いころに“やりたい”と思った仕事が今に活きてますね。
――そのほかにもアルバイトのエピソードはありますか?
ADAM at:もう一つエピソードがあって。これは、もうほんとにDOMOさんにお世話になったお話なんですが。
――え? そうなんですね!
ADAM at:独立してイベンターをしているときなんですが、当時は独り立ちした直後ということもあって、食べていくのも大変なくらいで。そこでDOMOを眺めて他の仕事も探して、ピアノの修理工房の求人を見つけたんですよ。「これはやりたいぞ」と。
早速電話してみたんですけど、応募した時点で、採用が決まってしまっていたんです。でも、諦めきれなくてもう一回電話したんですよ。
ADAM at:そしたらたまたま社長が対応してくれて「締め切っているということは聞いているんです。でも、どうしても働きたくて」と、ちょうどADAM atの活動を始めたこともあって、それも含めて話をさせていただいたら「そんなに働きたいのか」と。それでなんとアルバイトとして雇ってもらえることになったんですよ。
――粘り強くチャレンジして手に入れた結果ですね。
ADAM at:でも確かに僕、諦め悪いんですよ。巳年だから(笑)。そういう諦めないってことでたくさんのきっかけやチャンスをつかんできたとも思っていて……。
――それはアーティスト活動においても活きているんですか?
ADAM at:もちろんです。デビューのきっかけになったときもレコード会社の人に一生懸命アピールしましたし、いろいろなところへ足を運んでチャレンジしたからここまでこれたんだって自分でも思っていますね。やりたいと思ったことには、とにかく苦しくても挑戦し続けることって大事ですよ。
だって、それこそ独立したときは今日食べるご飯にも困るような状況でしたから。でも、なんとかやってこれたのって、若かったのもあるし目標や理想があったからだな、って今でも感じます。
――今の若い人たちに伝えたいことといえばチャレンジってことになりますかね?
ADAM at:その通りかもしれないです。若いうちって体力もそうですけど、環境もそうだなと。歳を取ると気持ち的にも、やれることってだんだん限られてきちゃうんですその点若いころに“自分にあった仕事”を探すのってすごく大切じゃないかなと。それで見つけたらとにかく飛び込むこと。
それこそ、食べるのに困っても“やり直し”もできますし、精神的にも立ち直れるんで、どんどんチャレンジしよう、ってことですかね。そういう意味では「貧乏は恥じゃないぞ!」って言ってあげたいです(笑)。
とにかく足を動かし続けていけば何かしらは得られるので、希望や夢があれば諦めずにやってみてほしいですね。
自分の好きなことに向かってひたすらに挑戦を続けたADAM atさん。お話をお伺いして印象的だったのは、どんな話をしていても笑顔で楽しく話している表情でした。相手を楽しませようとする言い回しも含めて、生粋のエンターテイナーと感じさせます。その口ではなく指先から奏でられる音色も楽しさにあふれているのはこうして“やりたいことに挑戦し続ける”彼の姿勢があってこそのものなのかもしれませんね。
“朝の通勤・通学が一番憂鬱な時間”と話すADAM atさんの新作「Dr.Jekyll」は7月26日より発売中。どんよりとした1日のスタートを吹き飛ばす爽快なインストナンバーでADAM atの元気をおすそ分けしてもらえば、ちょっと楽しく過ごせそう!
Photo:SHIMIZU Kumiko(totocoto design)
きっかけは“前座”だった。イベンターからアーティストへの転身
――ADAM atとしての活動開始のきっかけについて聞かせてください。
ADAM at:もともとは音楽イベントを企画するイベンターだったんです。地元が浜松(静岡県浜松市)なんですが、ここ窓枠さんやそのほかのライブハウスでイベントをやらせていただいてまして。地元のバンドを何組か呼んで、それに東京のバンドも含めてやるようなスタイルのイベントですね。
――はじめはアーティスト活動ではなかったんですね。
ADAM at:そうなんですよ。全然やるつもりはなかったというか……。で、はじめるきっかけになったのはといいますと、自分のイベントで前座をやるようになったことがきっかけでした。
――前座ですか! でもイベントを企画する側の方が前座というのはすごく異色に感じるのですが……。
ADAM at:そうですよね。でも、きちんと理由もございまして。というのも、地方都市は地下鉄なんかがないので基本は車移動になるんですよね。だから、仕事終わりにライブハウスに来ようとしても、たまたま渋滞とかに巻き込まれると、目当てのバンドに間に合わなくなっちゃうのが地方なんです。
それで、「これはなんとかしたいな」と思って「あ、自分ピアノ弾けるじゃん」となったのがADAM atとしての活動のはじまりです。
――ちなみにそれっていつごろのことなんですか。
ADAM at:2011年ですから、いまから6年くらい前ですね。しかも12月24日だったんですよ(笑)。クリスマスイブですよ。自分のイベントなんですけど「こんな日に人が来るわけないじゃん」って。でも、僕にとってはスタートになった思い出深い日ですね。
大嫌いだったピアノのレッスンの日“よくほっぽりだして”友達の家へ行った日々
――ADAM atさんといえば、ピアノの綺麗な音色が特徴のインストバンドだとも思うのですが、ご自身はいつごろからピアノをはじめたんですか?
ADAM at:5歳からですね。浜松市が“音楽の街”なんて呼ばれていたりもするんですが、そんな街のカラーもあってか、まあ親に習えと連れていかれまして(笑)。でも、まったくもって面白くないんですよ。特にレッスンが嫌いで……。あるじゃないですか。手の形がどうとか、弾き方の話ですね。あれがとにかく嫌でした。
当時ってファミコン全盛期だったから友達はみんなどこそこの家に集まってゲーム三昧。「なんで俺はピアノに行かなきゃならんの」と思いましたね。思ったどころか、実際に逃げ回りました。レッスンの日になると友達の家に出かけて行って。
――確かに遊び盛りの男の子にとっては嫌な日だったかもしれませんね(笑)。一方でADAM atさんは、“とにかく踊れる”というのもひとつのキャッチコピーかと思うのですが。今は楽しくやれていますよね。
ADAM at:おかげさまで、とても楽しくやってますよ。やっぱりクラシックよりもジャズ。もちろんスカみたいな踊れる音楽が大好きで。そういうものを取り入れてどんどんフリーな感じでやっていったら自分も楽しくなれたんです。
2017年「マグロック」への出演と地元でのライブは最高
――地元、浜松市のお話が出ましたが、幼少期はちょっとピアノに関しては苦い思い出もありつつ、でも地元でイベンターとして活動なさったり、今年の4月には浜松のライブハウス窓枠さんでワンマンライブも成功させたりと地元への愛着も感じます。
ADAM at:窓枠さんは昔からある浜松のライブハウスのひとつで、ずっとライブはやりたかったんですよ。実は、この前ワンマンライブを開催するまでは一回もワンマンはできていなくて。だから、お話をいただいて、実現できたときはやっぱり光栄でしたし嬉しかったですね。素晴らしい、良い光景でした。
――お客さんの反応も地元と他の地域では違うのでしょうか。
ADAM at:そうですね。地元だからこその盛り上がりも感じたし、僕自身も熱くやれたなと思います。
しかも、今だからというのもあって、その日は東京はもちろんいろいろな地方からもお客さんが足を運んでくださって。そのうえ遠方から来てくださった方が、普段僕が飲みに行っている居酒屋とか餃子屋にも足を運んでくれていたみたいなんです。
浜松は良いところで好きな街。今でも住んでいるくらいなので、そうやって僕のつながりで少しでも地元に元気が出たら嬉しいことですね。
――直虎かADAM atかみたいな。
ADAM at:いや、おこがましいですよ、それは(笑)。でも、そうやって僕が発信した情報で広まるものがあるのであれば貢献したいと思ってますね。いつかは観光大使……なんて思っちゃったりしてなくもないです(笑)。
――地元といえば、今年はワンマンライブだけでなく静岡市で開催されるフェス「マグロック 2017」にも出演が決まりました。こちらにも思い入れはありますか。
ADAM at:マグロックは地元へのフィーチャーが強いイベントなので、呼ばれて光栄だなあと感じています。前日開催のフジソニックは特に地元色が濃くて、静岡にゆかりのあるバンドだったり、アーティストだったりを呼んでいるのでそういうイベントがあること自体も誇りですし。
あと、僕が呼ばれたことはもちろんですけど、これをきっかけに県内の音楽活動をしている他の方々もどんどん進出していってほしいなって気持ちがあります。これは地元出身だからかなとも思ってますね。
――ADAM atさんに続いていってほしいみたいな。
ADAM at:僕をひとつの目標にしてもらってもよいですし、この道を通っていってほしいな、なんて考えたりもしています。
NEW ALBUMへ込めた“インストバンドの楽しみ方”
――少し話が変わりますが、7月26日にインストバンドのPHONO TONESさんとコラボしたスプリットアルバム「Dr.Jekyll」をリリースされましたが、ずばり聴きどころはどこでしょう?
ADAM at:僕らインストバンドっていうのは、歌詞がないバンドで、BGMとかで聴くぐらいしか普通のリスナーって興味を持たないジャンルじゃないかって思っているんです。今回のスプリットアルバムは、そんなジャンル・シーンにいる2組が集まって盛り上げようとしているわけなんですけれども……。
我々としても“歌がなくても歌える曲”をコンセプトに、“これ誰なんだろう?”みたいに思ってもらえるようなキャッチーさは意識して曲作りをしています。
聴きどころは曲ごとにもあるんですが、僕側の「Dr.Jekyll」※では“通勤・通学中に聴ける音楽”というのを意識しました。仕事に行く朝ほど憂鬱なものはないと思うんですけど、裏を返せばここでなにか気分を変えられるようなものがあればと思って作った作品かもしれません。
※今回のスプリットアルバムはそれぞれのバンドから1枚ずつをリリース。ADAM at側は「Dr.Jekyll」、PHONO TONES側からは「Mr.Hyde」というタイトルでそれぞれ別の新録曲を収録。
――通勤・通学ですか。音楽を一番聴きやすいタイミングのひとつだなとは思うのですが、何か着想はあったのでしょうか。
ADAM at:これは僕自身が東京へよく足を運ぶようになって感心したことのひとつに“電車通勤を頑張る人たち”というのがあったからですね。最初も話した通り、浜松は車社会なので通勤って車だったり、通学は自転車だったり、プライベートが確保されているんです。
だから移動そのものにはストレスがなかったんですけど、東京に行って「この人たちはこんなにも通勤・通学を頑張っているんだ」と。毎朝満員の電車に乗り込むために人でごった返したホームへ吸い込まれるように歩いて行って……。これはすごいな、頑張ってるなと。
――確かに大変な瞬間かもしれません。
ADAM at:ですよね(笑)。それを直球に表現したのが、「Dr.Jekyll」の2曲目に収録した「カラクサロケット山手ガール」という曲で。まんまなネーミングですけど(笑)。
ぜひこれを聴いて朝の憂鬱な電車の時間を気持ち良い時間にしてくれたらって思います。
高校生の頃にであったアルバイトが今の仕事に
――DOMOはご存知の通り、静岡県を中心とする求人を紹介する媒体です。ADAM atさんもデビューまでアルバイトや就職を経験しているのかと思うのですが、印象に残っているエピソードはありますか?
ADAM at:僕は、学生時代から音楽に関係する仕事に就けたらいいなあ、なんて思ってたんですね。それで、高校生のころにコンサートスタッフのアルバイトを見つけて、その時に「なんて面白い仕事なんだ」と。華やかに感じたんですよね。だからこの仕事はほとんど初めて働くという経験をしたところでもありながら印象深いです。
というのも、ものすごく長い間携わるからで、高校卒業後は普通に営業職として企業に就職したものの、コンサートスタッフの楽しさが忘れられなくて、そのまま続けるんですよね。
――二足の草鞋ですか。
ADAM at:そうです。平日は会社行って、週末になるとコンサートスタッフという……。でも、当時はとにかく面白かったので苦じゃなかったですね。楽しかったです。で、結局のところコンサートスタッフのほうが楽しくなってしまって、仕事は辞めてそっちに絞り込んだと。
ADAM at:これは僕のなかでも大きな転機だったんです。ここからこの経験を活かして仕事をしようと、イベント制作会社に就職しなおしてスタッフとして働き、さらにコンサート会社に入って企画を立てて。それで、その後独立してイベンターになるんです。
――ここから冒頭のADAM atの活動がはじまるきっかけになるわけですね。
ADAM at:そうなんです。だから、ものすごく若いころに“やりたい”と思った仕事が今に活きてますね。
若いころこそエネルギッシュにチャレンジを
――そのほかにもアルバイトのエピソードはありますか?
ADAM at:もう一つエピソードがあって。これは、もうほんとにDOMOさんにお世話になったお話なんですが。
――え? そうなんですね!
ADAM at:独立してイベンターをしているときなんですが、当時は独り立ちした直後ということもあって、食べていくのも大変なくらいで。そこでDOMOを眺めて他の仕事も探して、ピアノの修理工房の求人を見つけたんですよ。「これはやりたいぞ」と。
早速電話してみたんですけど、応募した時点で、採用が決まってしまっていたんです。でも、諦めきれなくてもう一回電話したんですよ。
ADAM at:そしたらたまたま社長が対応してくれて「締め切っているということは聞いているんです。でも、どうしても働きたくて」と、ちょうどADAM atの活動を始めたこともあって、それも含めて話をさせていただいたら「そんなに働きたいのか」と。それでなんとアルバイトとして雇ってもらえることになったんですよ。
――粘り強くチャレンジして手に入れた結果ですね。
ADAM at:でも確かに僕、諦め悪いんですよ。巳年だから(笑)。そういう諦めないってことでたくさんのきっかけやチャンスをつかんできたとも思っていて……。
――それはアーティスト活動においても活きているんですか?
ADAM at:もちろんです。デビューのきっかけになったときもレコード会社の人に一生懸命アピールしましたし、いろいろなところへ足を運んでチャレンジしたからここまでこれたんだって自分でも思っていますね。やりたいと思ったことには、とにかく苦しくても挑戦し続けることって大事ですよ。
だって、それこそ独立したときは今日食べるご飯にも困るような状況でしたから。でも、なんとかやってこれたのって、若かったのもあるし目標や理想があったからだな、って今でも感じます。
――今の若い人たちに伝えたいことといえばチャレンジってことになりますかね?
ADAM at:その通りかもしれないです。若いうちって体力もそうですけど、環境もそうだなと。歳を取ると気持ち的にも、やれることってだんだん限られてきちゃうんですその点若いころに“自分にあった仕事”を探すのってすごく大切じゃないかなと。それで見つけたらとにかく飛び込むこと。
それこそ、食べるのに困っても“やり直し”もできますし、精神的にも立ち直れるんで、どんどんチャレンジしよう、ってことですかね。そういう意味では「貧乏は恥じゃないぞ!」って言ってあげたいです(笑)。
とにかく足を動かし続けていけば何かしらは得られるので、希望や夢があれば諦めずにやってみてほしいですね。
自分の好きなことに向かってひたすらに挑戦を続けたADAM atさん。お話をお伺いして印象的だったのは、どんな話をしていても笑顔で楽しく話している表情でした。相手を楽しませようとする言い回しも含めて、生粋のエンターテイナーと感じさせます。その口ではなく指先から奏でられる音色も楽しさにあふれているのはこうして“やりたいことに挑戦し続ける”彼の姿勢があってこそのものなのかもしれませんね。
“朝の通勤・通学が一番憂鬱な時間”と話すADAM atさんの新作「Dr.Jekyll」は7月26日より発売中。どんよりとした1日のスタートを吹き飛ばす爽快なインストナンバーでADAM atの元気をおすそ分けしてもらえば、ちょっと楽しく過ごせそう!
Photo:SHIMIZU Kumiko(totocoto design)