アルバイトの求人を見ると、「1時間1,000円、22時以降は1,250円」などというような記載がよくありますが、時と場合によっては22時以降が1,500円支払われるべきことがあるのです。

「給与計算を間違えているかもしれないなんて、信じられない!」と思われるかもしれませんが、意外と法律をきちんと確認していない会社も多く、皆さんの残業代が少なくなっている可能性があります。

少し難しいかもしれませんが、きちんと知っておけば今後正社員になるときにも必ず役立ちます。

1.残業代は週40時間・1日8時間をこえたときにでる



1週間40時間、1日は8時間をこえると残業手当がつきます。

シフトで6時間勤務の人が、「あと1時間残業してもらえる?」と言われた場合でも、8時間を超えないので通常の時給で計算されます。

ではどういう「残業」のときに残業手当がつくのでしょうか。

2.意外としらない残業の計算方法




残業手当は通常時給1.25倍になると聞いたことはあるのではないでしょうか。残業代が出ない、というのは論外ですが、意外と見逃しているのが「深夜残業手当」です。

「22時以降に残業が重なった場合」はさらに0.25が加算されて1.5倍になります。

時給1,000円で以下の場合、お給料はいくらになるでしょう。一度答えを見ずに計算してみてください。

①シフトが18時~24時(休憩なし)の場合

18時~22時        4時間×1,000円=4,000円
22時~24時(深夜)    2時間×1,000円×1.25=2500円
合計:6,500円
 
②シフトが9時~18時(1時間休憩)で、23時まで働いたとき

9時~18時(休憩1時間) 8時間×1,000円=8,000円
18時~22時         4時間×(1,000×1.25)=5000円
22時~23時(深夜)    1時間×1,000×(1.25+0.25)=1500円
合計:14,500円



②は①と違い、22時以降は深夜残業(×1.25)でありながら、かつ1日8時間以上の時間帯なので通常の残業手当(×1.25)がつき、合計1.5倍になっていることに気づいたでしょうか。

働く側もこのルールを知らない人がおおいですし、小さな会社であれば事務担当の人が法律を知らずに、1.5倍のところを1.25倍で計算していることがあります。

3.出社の指示があれば、時間外ミーティングも「勤務時間」



9時勤務開始の場合、9時少し前には仕事場で準備をしているのではないでしょうか。

一般的には5分、10分前ぐらいに余裕を持って仕事場に向かうのは許容範囲かと思いますが、例えば出勤時間が9時なのに、「毎朝8:30から朝礼をするので必ず出席して下さい」などと、30分、60分にも及ぶときは考えものです。

会社側から「8:30にきなさい」という命令があるか、命令がなくても絶対に参加しなければならないミーティングや反省会などの場合、きちんと主張すればお給料が出る可能性があります。

この場合、強制的に参加させられているかどうか、会社の人から「30分前にきて●●するように」という指示があったかどうか、目安として30分程度の拘束時間があるかどうかが重要なポイントです。

もちろん、アルバイトがおわって仲間と話しているような時間は対象になりません。たとえそれが仕事に関する話であっても、「話し合ってください」という指示がない限りは残業にはならないのです。

4.未払い残業代がある場合に備え、やっておくべきこと



例えば深夜残業手当がついていなかったり、30分以上無給で強制的に拘束されるなどということがある場合、さかのぼって支払いを請求することができます。

ただし、さかのぼれるのは2年前までですので、もし「前のアルバイトで残業代出ていなかったな……」という人がいれば、急いで専門家に相談したほうが良いでしょう。その時に必要になるのは以下のようなものです。

1) タイムカードのコピー: 何時から何時まで働いたのかがわかる客観的な資料を用意します

2) タイムカードがなければ自分でメモを残す: これは客観性が薄くなるのでタイムカードのほうがよいですが、なければとりあえず以下のようにメモを残しておきます。

「3/1(月) 15:00-19:00(休憩なし)
3/2(火) 11:00-16:00(休憩1時間)  等」

3) シフト表が配られるならそれもとっておく

4) 業務日報などを付けている場合は、毎日コピーか写メで控えを残しておく

5) リーダーや正社員からひどい暴言などを受けているような場合は、具体的な発言内容などをメモしておきましょう。残業代とは関係ないですが、ハラスメントの事実も一緒に訴えられるかもしれません。

現在の職場で残業代が出ていないという場合は、やめることを覚悟の上になるかもしれませんが、社員の人や本社人事部などに相談してみるのも一つの手です。

会社以外の相談窓口としては「労働基準監督署(労基署)」がありますが、よほどきちんと書類をそろえていかないと動いてくれないかもしれませんし、いずれ誰が訴えたかはわかるかもしれません。「静岡 労働基準監督署」などと、地域の窓口を検索してみてください。

また、費用は掛かりますが、未払い残業代請求につよい弁護士事務所もたくさんあります。しかしやはり相談費用が掛かるところが多いので気を付けてください。

もらえる権利があるのに支払われないというのは悔しいですよね!できるだけきちんと法律を把握し、自分のお財布を守りましょう。

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<取材協力>

星野陽子(ほしの・ようこ)

一安裕美(いちやす・ひろみ)
http://www.officesato.jp/

HRプラス社会保険労務士法人所属の社会保険労務士。東京都渋谷区恵比寿を拠点に、「HR(人事部)に安心、情報、改善という付加価値をプラスしていく」いうコンセプトのもと、全国の顧問先に対し人事労務に関するソリューション提案を行っている。企業が元気にならないと雇用は生まれない、賃上げはできないとの思いから「人事労務で疲弊する日本中の経営者・人事マンを元気にする!」をミッションに掲げ、人事労務担当者の立場に立った人事労務相談、就業規則や諸規程の整備、IPO支援、海外進出支援、社会保険事務のアウトソーシングなどを展開。品質と信頼を担保するために、担当するスタッフ全員が社会保険労務士有資格者。万全のセキュリティ体制でマイナンバー制度へも対応している。






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