求人広告などを見ていると、「パート急募」「アルバイト募集」「契約社員求ム!」などといった言葉が並んでいますよね。
「パート」と「アルバイト」は、仕事内容や待遇に違いがあるのでしょうか?
また、「1年間の契約社員」はパートになるのでしょうか?
この記事ではパート・アルバイトの違いや、正社員との待遇格差について、知っておきたい法律などについて解説します。
パートとアルバイトは法律上の違いはナシ!
パートとアルバイトでは雇用形態が違うというイメージがありますが、法律上パートとアルバイトは同じです。
「パートタイム労働法」には以下のように表記されています。
「1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」
要は、正社員と比較して労働時間が短い人を「パートタイム労働者」としている、ということです。
しかし、世間一般ではパートとアルバイトを区別して使っているケースが多数あります。
具体的に、どのように使い分けられているのかを見てみましょう。
アルバイトもパートも「パートタイム労働者」
パートは「パートタイム」の略で、正社員が働くべき労働時間より短時間勤務する人のことを、「パートタイム労働者」と呼びます。
ですから、パート・アルバイトなどの呼び方に関わらず、正社員より短い時間働いていれば「パートタイム労働者」となります。
一方、パートやアルバイトの中には正社員と同じように、1日8時間、週5日働いているというケースもあります。
正社員と同じ時間数働くからといって、パートが正社員になるということではありません。
正社員が月給制であるのに対し、パートタイム労働者は時給で働くことが多いでしょう。
また、パートタイム労働者は正社員と比べて、任される仕事の範囲や責任の重さに制限があったり、転勤は無し、というような条件があったりします。
パートは主婦、アルバイトは学生、というイメージについて
一般的に「パート」というと、家事や育児と並行して仕事をする主婦/主夫の方、というイメージがありますよね。
一方で「アルバイト」という言葉は、ドイツ語の「Arbeit(仕事、働きの意味)」からきています。
もともとは「学生が学業の合間に行う仕事」という意味で、現在でも「アルバイト=学生」として広く認識されています。ただし、上記の分け方が全ての企業に当てはまるわけではありません。
ある一定期間で辞めてしまう学生アルバイトより、長期で働く人が多い主婦パートの方が業務に精通し、正社員の仕事に近い傾向があり、「短期=アルバイト、長期=パート」など、独自の定義をしている企業もあります。
パートやアルバイトの契約期間は、特に定められていないことが多いようです。
「働き方改革」でパートやアルバイト、有期雇用労働者の労働条件改善へ
かつては、「同じ仕事をしているのに、正社員というだけでパート・アルバイト・契約社員の自分より待遇がいい」、というようなことがまかり通っていました。
しかし政府は、こうした格差をなくしていこうと、様々な取り組みをはじめています。
その一環として2020年4月に制定されたのが「パートタイム・有期雇用労働法」。
1週間の所定労働時間が短い方や、期間の定めがある有期雇用の方などが対象で、大企業のみならず、中小企業にも適用されます。
「パートタイム・有期雇用労働法」は2021年4月から全面施行され、中小企業にも適用され、同一労働同一賃金であるべきことや、待遇格差について質問を受けた場合の説明責任などが盛り込まれました。
この法律は、パート、アルバイト、有期雇用者すべての方に適用されるものです。
詳しくは厚生労働省の「パートタイム・有期雇用労働法の概要」をご覧ください。
・2023年4月からは時間外労働の割増賃金率がアップ!
2023年4月以降、月60時間以上の時間外労働では、60時間以上の部分は割増賃金が25%から50%になるという法改正がありました。
パート・アルバイトも対象になりますので、月60時間以上の残業がある場合は必ず確認してください。
・就業規則に「交通費支給」とあれば、パート・アルバイトでももらえる
交通費については、支給しなければならないという法律はありません。
会社の就業規則に「交通費全額支給」とあれば、正社員、パート、アルバイトに関わらず、支給しなければなりません。
交通費支給と定めておきながら、「通学定期があるから、定期の範囲内の交通費は支給しない」という会社がありますが、これは間違いです。通学定期は学校に通うためのものであり、バイトに通うために使うのは本来間違った使い方です。
会社としては、定期券の範囲でも、きちんと交通費を支払う必要があります。このような取り扱いをされている会社でバイトをする場合は、「通学定期の不正利用になるので、正しく交通費を支給して欲しい」旨を伝えてみましょう。
扶養控除に関しても同様で、パートもアルバイトも条件は一緒です。詳しくは国税庁の公式サイトをご覧ください。
・パート・アルバイトでも有給休暇が付与される!
6か月以上継続して働いていること、全労働日の8割以上出勤していることなどを条件に、パート・アルバイトでも有給休暇が付与されます。
有給休暇をもらったことがないという人で、上記条件に当てはまる人は、上司に聞いてみてください。
図:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています 有給休暇」の付与日数は、法律で決まっています ―厚生労働省
・社会保険や扶養控除などの条件も同じ
労働条件によっては、パートとアルバイトの方も社会保険(厚生年金保険・健康保険)の加入が必要になります。
社会保険は、以下の【1】または【2】の条件を満たしている方なら加入することになります。
【1】 所定労働時間が週30時間以上であること
または
【2】・所定労働時間が週20時間以上で、以下の条件に全て当てはまること・月額賃金が8.8万円以上
・勤務期間が2か月を超える見込みがある
・従業員101人以上の企業(2022年10月より)
※従業員数が100人以下の企業の場合、社会保険に加入することについて労使で合意がなされていれば適用
※2024年10月からは、従業員51人以上の企業が対象になる
※ただし、昼間学生は除外
社会保険に加入すれば、将来受け取る年金が増えたり、医療保険の給付が充実したりするなど、手厚い保障を受けられます。
また、保険料を会社が半分負担してくれるため、労働者の負担が軽いというメリットもあります。
パート・アルバイトとして働くメリットも!
「正社員に比べて収入が低い」「正社員は労働条件が優遇されている」という声もまだ聞かれますが、パート・アルバイトとして働くメリットもたくさんあります。
学生であれば学業、主婦・主夫であれば家事や育児、フリーターであれば資格取得や目指す夢など、本業や目標に向けてのチャレンジに専念しながら、空いた時間で働けます。
仕事の範囲や責任範囲も限られることが多く、働く時間を自分で決められるのはメリットと言えるでしょう。
また、パートやアルバイトなら、複数の仕事を掛け持ちすることも可能です。
今でこそ、副業を解禁する企業が増えていますが、日本ではまだまだ副業がメジャーではありません。
やりたいことがたくさんある人は、「コールセンターで働きながら、空いた時間でWebサイト制作を請け負う」ということも可能なのです。
いろいろなことにチャレンジすれば、将来の可能性が広がるとも言えます。
まとめ
「責任も仕事内容もすべて正社員と同じなのに給与格差がある」「条件を満たしているのに有給休暇がない」などという不利益な条件で働いている方は、会社に説明を求めてみてください。
改善が見られない場合は、労働基準監督署などに相談をしたり、より良い条件の職場を探したりするということも検討するとよいでしょう。
2017年1月17日公開/2022年12月14日更新/2024年2月20日更新
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