パート契約を1年ごと、2年ごとと定期的に更新している人の場合、「会社側から更新を止められるのではないか」という不安がある人もいれば、「更新しないと伝えたところ、引き止められて困っている」というケースもあるでしょう。
この記事では、そもそも有期契約とは何か、パートの方が契約を更新しない場合にどう伝えればよいかなどを解説します。
主婦・主夫歓迎の求人をさがす
そもそも労働契約には「無期雇用」と「有期雇用」がある
「有期労働契約」について
「有期労働契約」とは、バイト・パート・契約社員などの雇用形態には関係ありません。
あくまでも「2022年1月1日~2024年12月31日までの契約」などと、期間を限定して雇用契約という意味であり、契約終了日がくると、「契約を更新するのか、契約満了として退社するのか」の判断をすることになります。
本人が契約更新したくても、会社(雇用側)には「12月31日で契約満了とします。2年間ありがとうございました」と言う権利があります。
逆に、会社が契約を更新して長く勤めてほしいと希望しても、本人が「来年から新しい仕事に就くので契約満了とし、退社します」と言うことも可能です。
「無期労働契約」について
「無期労働契約」とは、契約終了日が設定されていない契約です。
一般的に「正社員」と呼ばれる人は、この契約で働いていることが多いでしょう。
途中で転職しなければ、就業規則で定められた「定年」の年齢まで働くことになります。
契約更新をしないで辞めてもOK!伝え方と注意点
有期労働契約の人は「期間」ごとに契約をしているため、期間が満了するタイミングで契約を終了することは全く問題ありませんが、期間の途中で辞めることは、基本的には契約違反となります。
契約満了で辞める時は、いつまでに退社の意思を伝えるべきかが契約書などで定められているはずなので、その日までには伝えるようにしてください。
・退職を伝えるタイミングは重要!
本来であれば、契約更新日の1ヵ月~3カ月前に人事担当者と従業員本人が面談をし、契約更新の意思が確認されます。
しかし、新しい期間に突入してから形式的に面談が行われたり、面談がまったく行われなかったりする会社も中にはあるようです。
契約書に「1カ月前までに申し出る」などと書かれている場合は、決められたとおり事前に申し出をしてください。
その時期までに面談が行われる場合は、面談で伝えればよいでしょう。
・退職届は原則不要
有期労働契約は契約期間満了と同時に契約が終了するため、本来、退職届は不要です。
ただし、会社から求められた場合は「退職理由欄」に「契約期間満了」と書いて提出するとよいでしょう。
・退職の伝え方
面談がない場合は、定められた時期までに自分から上長に伝えるようにしてください。
「本日勤務終了後、少しお時間よろしいでしょうか」とひとこと声をかけ、
「家庭の事情があり、5月末の契約期間終了をもって、退職させていただこうと思います」などと、簡単に伝えれば大丈夫です。
引き止められることを避けたい場合は、「家庭の事情」や「健康上の理由」などとすれば、あまり深く聞かれずにすみます。
退職理由は上記の通り「契約満了」と書けばよく、詳しく話す必要はありません。
会社の退職届フォーマットに「自己都合・会社都合」の2つしかない場合は「自己都合」に印をつけ、「契約満了のため」と備考欄に書くとよいでしょう。
・契約更新をしないで退職した場合の失業保険の扱い
契約更新をしないで退職し、次の会社を探すまでの間、条件に合致すれば「失業保険」を受給することができます。
通常、自己都合で退職すると7日間の待期期間の後、2カ月は受給できません。
しかし契約満了により退職した場合、7日間の待期期間はありますが、2カ月の受給制限はありませんので、失業認定後すぐに受給することができます。
有期労働契約が5年を超えると「無期労働契約」に転換申し入れができる
有期労働契約で働いている人の中には、「更新されるかどうかの心配なく、無期労働契約で働きたい」と思っている人もいるでしょう。
そのような人のため、「有期労働契約が5年過ぎた人は、無期労働契約に転換できる」というルールができました。
図:無期転換申込権の発生・行使の要件等について
以下に、契約が1年の人の例を見てみましょう。
2020年1月1日 有期労働契約開始
2021年1月1日 契約更新1回目(勤続満1年)
2022年1月1日 契約更新2回目(勤続満2年)
2023年1月1日 契約更新3回目(勤続満3年)
2024年1月1日 契約更新4回目(勤続満4年)
2025年1月1日 契約更新5回目(勤続満5年)
→この時点で無期労働契約の権利が発生する
これは2013年4月1日から施行されたルールですので、その日から数えて勤務5年が過ぎている必要があります。
・自動的には切り替わらない!必ず申し入れをすること
5年間を過ぎたからと言って、自動的に契約が有期から無期になるわけではありません。
必ず本人から、以下のように伝えて、無期契約への転換希望を申し出る必要があります。
「今度の契約更新で勤続年数が5年になります。今度の期間満了日の翌日から、無期労働契約でお願いします。」
・無期労働契約=正社員になる、ということではない
無期労働契約に変わっても、「正社員になる」ということではありません。
あくまでも期間の定めがなくなるというだけで、給与や福利厚生などが改善されるとは限りません。
・長期にわたって雇用/複数回契約更新があるのに更新を断られた場合
5年を超えて働いていて、無期労働契約に転換する資格がある人に対し、会社側が「契約更新はしない」と打ち切った場合には、契約期間の満了日前であれば、会社に対し無期労働契約への転換を申し込むことが可能です。
無期労働契約に転換したにもかかわらず、会社が契約終了を行う場合は、「解雇」となります。
自分の有期労働契約がいつ5年を超えるのかによって、会社の対応が大きく変わります。
あらかじめ確かめておきましょう。
・5年になる直前に「契約更新をしない」と言われる可能性も
無期労働契約で働く人員を増やしたくないという意向がある会社は、「あの人はもうすぐ5年になるから、契約更新をしないと伝えよう」と考えて、あらかじめ契約更新をしないと伝達してくるかもしれません。
2024年4月1日の法改正により、契約期間の上限を新たに設ける場合は、その理由をあらかじめ説明することが必要となりました。
会社もこのルールを遵守しなければなりません。このルールを無視して、契約終了をした場合、労働問題に発展するケースもありますので、十分ご注意いただきたいと思います。
まとめ
有期労働契約にも関わらず、きちんと契約書を発行しない会社もあります。
上記の通り、契約期間は大変重要な情報ですから、きちんと書面で受け取るようにしてください。
依頼しても会社が発行してくれない場合は、地域内の労働基準監督署に相談をしてみるとよいでしょう。
2024年6月20日公開
主婦・主夫歓迎の求人をさがす