
飲食店でバイトをしていると、お皿やグラスなどの食器を割ってしまうことはあり得る事です。「割れたグラス代、バイト代から引いておくよ!」などと冗談で言われることもありますが、バイト代から弁償代を引くことは、法律で禁止されています。
この記事では、バイト中に備品を壊したり紛失したりした場合などに、「弁償して」と言われるケースについて解説します。
バイト中に壊した/紛失した備品は弁償すべき?
バイトで備品を壊したり紛失したりした場合、それが悪質な故意でなければ弁償する必要はありません。
もし、バイト先から「弁償するように」と言われても、応じる必要はありませんので安心してください。
裁判所は、会社から従業員への損害賠償請求を認めない、または一定の限度でしか認めない判断をしています。
会社は利益を出すために活動しているのだから、損失も会社が負うべき(報償責任の法理)という考え方が根拠となっています。
一方、従業員が金品を横領した場合や故意による不法行為で会社に損害を与えたような場合には、全額の損害賠償請求が認められます。
勤務中にミスをしたり、食器などの備品を壊したりすることはよくあることです。
さまざまな事態も想定して、高価な食器を使わないとか、ガラス食器を木製食器に変えるとか、予想される損害に対して保険をかけるなどの工夫をすることはできますが、これらを行うのは会社側であり、従業員側に責任はありません。
レジ打ちバイトで、金額が合わない場合は弁償すべき?
レジ打ちのバイトの場合、退勤時にレジ内の金額が正しいかどうかを確認することがあります。万が一、残高が合わないことがあっても、「そのレジを担当していた人が不足分を補う(弁償する)」などということはできません。
自動的にお釣りを計算してくれるレジを導入したり、物品に保険をかけたりするなど、企業側の努力が求められます。
販売ノルマの穴埋めも法律違反
クリスマスケーキの販売バイトなどで、「予定していた個数が売れなければ、買い取らないといけない」などという話を聞いたことはないでしょうか。
俗に「自爆営業」とも呼ばれるものです。
「弁償」とは少し違いますが、「売れなかった分は、バイト・社員が買い取る」というルールも法律違反です。
「罰金」や「損害賠償」を会社のルールにすることは法律で禁止されている
罰金や損害賠償をあらかじめルールにすること自体、労働基準法第16条で禁止されています。
他にも、「契約途中で退職したら違約金●●円を払うこと」「レジの合計額が合わなければ罰金●●円」なども法律違反です。
バイトが弁償しなればならない場合とは?
万が一、「悪質な故意や悪意で備品を壊した」というようなことがあれば話は別で、民法709条により、会社側がバイトを訴え、弁償や損害賠償を請求する権利が発生します。
企業の名誉や信頼を失ったり、ビジネスで不利益を与えたりした場合にも、訴えられることあるでしょう。
また、バイトに突然行かなくなった(ばっくれた)て、会社に損害が発生した場合にも、バイトが訴えられて、損害賠償を請求される可能性はあります。
会社側は損害を明確にしなければなりませんが、訴えられる可能性があることだけは知っておいてください。
バイトを数日で辞めることは避けたいものの、実際にはあり得ることです。そのような場合には、きちんと退職の連絡をするように留意しましょう。
ただし、ばっくれた場合でも、働いた分のバイト代はもらう権利があります。
いずれの場合も「給与から天引き」は違法!
バイト側に責任が発生する可能性はありますが、どのような事情であれ、給与から無断で天引きすることはできません。労働基準法24条には、以下のように定められています。
「全額を支払わなければならない」ということは、弁償代などをひいてはいけないということです。
状況がひどい場合には法的処置も考える
罰金や賠償を求められた場合は労働基準監督署や、厚生労働省が運営している「労働条件相談ホットライン」、各都道府県に設置されている「総合労働相談コーナー」などに相談しましょう。
そこで正しい対処法を教えてもらえるはずですが、最悪の場合には、弁護士に相談したり、「労働審判」や「訴訟」などの法的処置をとったりすることもあり得ます。
この場合にも、上記の相談窓口が相談に乗ってくれるはずです。
まとめ
よほど悪質なケースでない限り、働く側が弁償を迫られるようなことはないと考えてよいでしょう。
困ったことがあれば、バイト仲間などではなく、上記のような専門機関に相談するようにしてください。一人で悩まず、早い段階で誰かに助けを求めることが大切です。
2023年8月29日公開
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