コロナ禍で、勤めていたデザイン系の会社が形を変えることになり、じゃあ農業へと思い切ってシフトチェンジした杉山さん。


なかなか自分らしい仕事に出会えなかったという若い頃から、今農業の仕事にたどり着くまで。新たな目標に向かう日々のことをお聞きしました。



デザインを基礎から学ぶために、仕事を辞めて専門学校に



実はデザインの仕事に就くまでも、回り道をしていたと言う杉山さん。


「大学で法学を学び公務員志望のはずだったんですが(笑)、いろいろ受けた中で害虫駆除の会社に入りました」。

経験が浅いながらも“スーパーサブ”と呼ばれ信頼されていた杉山さんでしたが、体力面のきつさからわずか1年で退社。

次は好きなことを仕事にしようと、もともと関心があったデザインをしっかり学ぶために専門学校へ入学することに。


「専門学校で3年学びました。卒業すればデザインの仕事に就ける“証”を得られると思ったのが学校に行った理由。卒業時に新卒として就職できるメリットも考えていました」。

卒業後は、いくつかのデザイン会社を経ることに。



楽しかったデザインの仕事、自分の能力を発揮できる幸せな職場



31歳で子供が生まれ、一時期はデザイン会社から建築関係に転職。

「そこで2年頑張ったけどやっぱり自分には違うなと気がついて」。


その後編集プロダクションで再びデザインの仕事に就くことに。

「デザインの仕事は若いほど重宝されると思っていましたが、当時36歳の僕をひろってくれたことに感謝。

そこでの仕事はとにかく楽しくて。時には同僚と喧々諤々しながらだけど、いいものを作ろうという気持ちにあふれていましたから。ここでの仕事は自分に合っていました」。

旅行会社のパンフから、行政の広報誌。観光系フリーペーパー、さらには企業の広報誌も。


「深く考えながら作業できる、常に脳みそが煮え切るような感覚を味わっていました。デザインのトレンドを吸収しようと常に勉強もしていたし、お客さんが望むものとこちらのやりたいことのスレスレ、その中で最大限やれることをやる充実感。アイデア出して、発注者の想定を上回るものを作ろうとワクワクしていました」。



気分転換に始めた家庭菜園、その楽しさに気が付いて



ところが、チームを組んでいた人が辞めてしまったり、手応えがある仕事が少なくなったり。と同時に杉山さんがもともと抱えていた難聴が悪化し始めてしまったそうです。


「ストレスを抱えることになって、眠れない日が続きました。このままじゃまずい、気分転換になればと実家の空いていた畑で家庭菜園を始めました。

右も左もわからないながらやったのに、うまくいって。定年後、菜園をやるのもいいななんて思い始めていました」。


そこにコロナが追い打ちを。

「会社が形を変えて再出発ということになってしまい、どうしようと。農業のおもしろさを感じていたし。さらに実家はもともと茶農家で土地はあるから、ここを畑に変えようと。

妻は好きにさせてくれていましたね。気持ちがふさぎがちだったので、環境を変えたほうがいいと思ってくれていたようです」。



本気を認められて、先輩農家に入門を許される!



「農業をやろう」と決めた杉山さんは、行動力を発揮します。


「まず、県の就農を支援している部署で話を聞いてもらいました。すると、JAの担当課を紹介してくれたんです。ただ、最初は真剣には取り合ってもらえませんでしたね(笑)

でも簡単にはあきらめずあれこれ調べたところ、農業計画書をもっていくといいらしいと。ネットや書籍を参考につくって出直しました。

今思うと無謀で現実離れした計画書だったけれど、それでもこっちの本気度はちゃんと伝わりました」。

そして、農業を教えてくれる先輩農家を紹介してもらうことに。


先輩農家の元で1年、覚えたことを次の日には自分の畑で実践。問題が生じたらすぐに聞いて、先輩農家で体験した作業を繰り返して必死で勉強しました」。



芽キャベツってこんなにおいしいんだと、作って実感



2年目に入った2022年4月、いよいよ独り立ちです。


「夏はナス、枝豆、シカクマメ、トウモロコシ、トマト。冬は芽キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、キャベツ、白菜を栽培。

去年の冬は芽キャベツがうまくできました。収穫量も想定通りで、味も良かった」。

それまで芽キャベツを食べたことなかったという杉山さん。食べたらすごく美味しかったと笑います。


「じまん市(直売所)に出荷する時は名前をつけて出すんです。そうするとリピーターがついてくれる。食べてもらえるのももちろんうれしいけど、自分としては種を植えてちゃんと収穫できたことの喜びが大きい。見届けて、卒業させた気分ですね」。



大失敗も楽しい、全部自分が決めたことなんだからと受け入れて



今は毎日充実しているといいます。


「農業は楽しいです。人にとやかく言われずに自分自身の考えで切り盛りできる。こんなやり方があるのかと試して大失敗も。全部自分の責任として降りかかってくるけど、それも悪くない。自分で決めてやったことですからね。

まだいろいろ試している段階。やってみて、自分で培っていくしかないですから。唯一悔しいのは病害虫にやられること、出荷間際まで育てたのに!!と失敗が知識になって、教訓になっていく。


今年がいいからといっても、次の年がうまくいくとは限らない。難しいけれど、手応えを感じるところでもありますね」。



目下の課題は、農業だけで食べていけるように!収入の安定を



収入面ではまだまだ苦戦中とのこと。


「茶畑だったところを整地したり、軽トラ、耕運機、噴霧器、草刈機なども購入したり。初期投資で数百万円かけたから、もう後には引けないですよ。農業に入り口はあるけど、出口がない(笑)

2年目もまだマイナス。資材代のほうがかかっています。当面の目標は、農業の収入だけで生活していきたいという、けっこうリアルな目標です(笑)」。



“この野菜なら杉山がいちばん”と言われる作物をつくっていきたい


もうひとつ、生産者としての目標が。

この野菜なら杉山くんだね、と言われるような作物を作りたい。そのために、ライバルが少なそうな作物にもチャレンジしているんです。芽キャベツがその候補」。


これまでを振り返りながら、杉山さんは言います。

「農業のいいところは、…簡単に痩せられますよ!(笑)肉体的にはきついときもあるけど精神的に健全。

まだ途中だけど、自分で選んだ道を進んでいるし、農業を選んで間違ってなかった。

ふさぎこんでいた時と比べると本来の自分に戻ってきています。今はまだ収入では満たされていないけど(笑)、心は満たされていますね。」。


南部じまん市のチラシのデザインも手がけている杉山さん。



「細かなものまでいろいろ作業をして、デザイン費もいくらかもらっていますが、収入を得たい訳ではなくお世話になったので恩返し」。


晴れた日には畑に出て、雨の日にデザインして。子どもたちも時々畑に来てくれたり、家族も応援してくれている。杉山さんの到達した理想の生活はちゃんと真ん中に自分がいる、誰より豊かな生活かもしれません。


2023年6月28日公開


杉山さんが作った野菜はここで買えます
JA静岡市南部じまん市・マックスバリュエクスプレス上足洗店・マックスバリュエクスプレス静岡大岩店で販売中。杉山さんの名前入りのシールが目印です。その時々の旬の野菜を出荷しています。


<執筆>

DOMO+編集部

アルバイト・パートお役立ち情報を収集・配信しています。現在就業中の方にはお仕事ライフがもっと充実したものになるように、これからシゴト探しをする方には自分にぴったりのお仕事に出会えるよう情報提供でサポートします。

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