
2022年4月から、段階的に改正されている育児・介護休業法。今回の改正では主に「パパ育休」が注目されていますが、具体的に育休を取得する条件や職場環境はどう変わるのか知っていますか?この記事では、育児・介護休業法の改正について、わかりやすく解説するので参考にしてください。
育児・介護休業法とは?
「育児・介護休業法」は、育児や介護をしながら働く労働者が、継続的で働きやすい環境を作るための法律です。主に以下の制度が、育児・介護休業法で定められています。
育児・介護休業法はこれまで何度も改正されていますが、今回は2022年4月、2022年10月、2023年4月と段階的に改正が進められています。今回の法改正で注目されているポイントとしては、女性だけでなく男性も育休を取得しやすくする「産後パパ育休」の創設や、「育休の分割取得」が可能になることなどが挙げられます。
育児・介護休業法が改正される背景と目的
今回の改正内容は、男性も育児休業を取得しやすくすることなど、ワークライフバランスの改善や働き方改革に則したものとなっています。改正の背景には、出産意欲の低下による少子化に歯止めをかけ、女性のキャリア形成を促進するという目的があります。
近年では共働き世帯が増えていますが、その一方で、男性が育児や家事に参加するケースは増えていません。内閣府男女共同参画局の調査によると、夫が家事・育児関連に費やす時間は1日あたり平均1時間5分でした。これは、アメリカやイギリス、フランス、ドイツなどの他先進国に比べて低い水準です。
また、2021年時点で女性の育休取得率は85.1%なのに対し、男性の育休取得率は13.79%に留まっています。こうした日本の実情が出産意欲の低下につながっているのではないかという考え方から、育児・介護休業法の改正が進められているのです。
育児・介護休業法の改正で何が変わる?
2022年10月に行われた法改正で、具体的には何が変わったのでしょうか。また、実際に育休は取得しやすくなるのでしょうか。ここでは、育児・介護休業法の改正で注目すべきポイントについて簡単に解説します。
■ パパも育休を取得できるように!
今回の改正で1番注目が集まるのは、やはり「産後パパ育休(正式名称は、「出生時育児休業」)」でしょう。産後パパ育休は産後8週以内に最大4週間(28日間)の取得が可能です。なお、「育児休業(以下育休という)」という法改正前まであった制度を利用すると、1歳まで育休の取得が可能です。
この産後パパ育休と育休は、両方利用しても、どちらかだけでも問題ありません。ただし、産後パパ育休は原則2週間前まで、育休は原則1ヶ月前までに申出が必要です。
従来までの法律ですでに定められていた育休との大きな違いとしては、産後パパ育休に限り、労使協定の締結によって休業中も就業できるようになったことが挙げられます(条件付き)。
今までは休業中における就業は原則不可でしたが、長く業務を離れられない仕事に就いている場合でも、育休を取得しやすくするために変更が加えられました。
また、産後パパ育休の創設に際し、雇用保険の改正も行われました。この改正により、一定の条件を満たしていれば、産後パパ育休の期間中に「社会保険料の免除」と「出生時育児休業給付金の支給」を受けられるようになったのです。
■ アルバイトや契約社員も育休を取得しやすくなる
2022年4月の改正では、アルバイトやパート、契約社員といった「有期雇用労働者」も育休を取得しやすくなりました。もちろん産後パパ育休も対象です。
有期雇用労働者の場合、今までは同じ会社で1年以上継続して雇用された実績がないと育休の取得はできませんでした。
しかしこのルールが撤廃され、子が1歳6ヵ月になるまでの間に退職することが決まっていなければ、育休を取得できるようになりました。ただし、労使協定を結ぶことにより、(雇用形態にかかわらず)入社から1年未満の社員を対象外にすることは可能なので注意しましょう。
■ 育休の分割取得が可能に
2022年10月からは、育休の分割取得ができるようになります。これまでの育休では、取得は2回までで、延長は決められたタイミングでないとできないなどの制限があり、夫婦で交代しながら育休を取得するなどの柔軟な取得はできませんでした。
しかし、これからは家庭や仕事の状況に応じて、夫婦交代で育休を取得するといったケースも可能になります。男性の場合は、産後パパ育休と育休を組み合わせることで最大4回に分割しての取得が可能です。
例えば、妻が子を出産して退院する際に夫が産後パパ育休を取得します。その後、妻が実家での療養を終え帰ってくるタイミングで、再度産後パパ育休を取得。妻の職場復帰のタイミングで育休制度を取得し、その後は状況に応じて妻と夫が、交代で育休を取得するなどといったフレキシブルな取得が可能となります。
人事労務担当者の義務1
ここまでは主に男性の育休取得に関して解説してきましたが、「法改正がされたとしても、実際育休を取得する男性はほとんどいないのでは?」と疑問を抱く方もいるでしょう。
今回の法改正では、制度を創設するだけでなく、企業に対して実際に育休を取得しやすい環境作りが求められています。今までの風潮から育休を言い出しにくい男性であっても、利用したい時に気兼ねなく育休を取得できるように、企業の担当者は努めなければなりません。
■ パパ育休に関する研修などの実施と制度の創設
2022年4月の改正により、相談窓口ができたり対象者へ研修が行われたりと、パパ育休を取得するための情報提供が行われています。企業によって環境整備の仕方は異なりますが、取得を検討している方は人事担当に聞いてみるのがおすすめです。
相談は、面談のほか、書面やFAX、メールでも可能です。詳しく話を聞きたいのならば、対面もしくはオンラインで面談をするのもいいでしょう。
相談することを周りに知られたくない場合には、まず人事にメールを送ってみるという方法もあります。相談しやすい環境整備が進んでいるので、悩んだらまず相談することが大切です。
人事労務担当者の義務2
本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た社員に対して、人事労務担当者は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認を、個別に行う必要があります。
■ 育児休業の利用状況を公表
2023年4月から、常時雇用する従業員数が1001人以上の企業の担当者は、男性の育休取得状況を公表しなければならなくなります。利用状況を数値化して社員へ公表するだけでなく、男性の育休取得に関する情報を社内報で発信したり、実際に育休を取得した男性社員へインタビューしてみたりといった活動も求められます。
また、男性の育休取得に関する自社の情報を新卒採用サイトや、採用動画などに掲載することで、学生に向けて「ワークライフバランスの取れた企業である」とアピールすることも可能です。
■ 就業規則の見直し
2022年4月から有期雇用労働者の育休取得範囲が変わりましたが、前述したように労使協定と就業規則を変更することで、勤続年数1年未満の社員は育休取得の対象外にすることもできます。
今後は男性社員の育休取得が増える可能性も考慮し、労使協定や就業規則を確認し社内体制も整えておく必要があるでしょう。
制度を利用しやすい環境整備が重要!
改正により育休の分割取得が可能になったものの、「分割取得によって周りに迷惑をかけてしまうのではないか」「どのように育休を分割すべきかがわからない」といった社員も多くいます。
これを受け、企業は分割取得の具体例を紹介するなどして、まずは社員の考え方を見直すための研修の実施や、社内報での発信が求められます。企業が率先して育休を取得しやすい環境を作れるよう、努めていきましょう。
2022年11月26日公開
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