
会社を辞めて失業状態にある場合、いわゆる「失業保険」があることはご存知の方も多いでしょうが、中には「失業保険が3ヵ月もらえるんだから、3ヵ月経ってから仕事に就いた方がトクだ」と勘違いしている人もいるようです。
今回ご紹介する「再就職手当」は、そんな誤解をしている方にぜひ知っていただきたい制度です。
パートでももらえる「再就職手当」とは
失業保険を受給している人、あるいは受給予定である人が、めでたく早期に就職先が決定した場合、「再就職手当」というお祝い金のような手当を受け取ることができます。
ただし、再就職手当の対象とならないケースもいくつかありますので、以下で詳しく説明します。
再就職手当とは:
『基本手当の受給資格の決定を受けた後に早期に安定した職業に就き、または事業を開始した場合に支給することにより、より早期の再就職を促進するための制度』
参照:再就職手当のご案内 – 厚生労働省
パートが再就職手当を受給するための条件6つ
「再就職手当は正社員しか受けられない」と思い込んでいませんか? 条件を満たしていればパート勤務の人も対象になります。以下の条件を満たしているか、確認してみましょう。
1.雇用保険に加入していること
パートでも一定条件を満たせば雇用保険に加入することになりますが、「再就職手当」をもらうには、まずこの雇用保険に加入していることが絶対条件です。
雇用保険に加入しているかどうかは、給与明細の「控除欄」で「雇用保険料」がひかれているかどうかで確認できます。もし対象になっているはずなのに雇用保険料がひかれていない場合は、会社に確認してみましょう。
1-1.31日以上雇用されることが見込まれる
30日未満の短期的なパート仕事の場合は、そもそも雇用保険に加入することができません。以下のいずれかに当てはまる場合は、雇用保険に加入することできます。
期間の定めがなく雇用される場合
・雇用期間が31日以上である場合
・雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
・雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合
( 注 )
[(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。]
参照:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか! - 厚生労働省
1-2.週の所定労働時間が20時間以上である
「週の所定労働時間」とは、1週間に働くことになっている雇用契約で定めた時間数のことです。雇用保険に加入するには31日以上の契約である他、週に20時間以上働くことが条件です。
もし、「最初の契約では週18時間だったけど、結局残業などで20時間を超えている」という場合、雇用契約を20時間に変更できないか会社に相談しましょう。雇用契約で20時間以上となった時点で雇用保険加入することになります。労働時間数は契約書に書かれたものではなく、実態に合わせてチェックしてください。
2.雇用保険の基本手当(失業保険)における条件を満たしている
雇用保険の基本手当、いわゆる「失業手当」を受給している場合、再就職手当を受給できるかどうか以下の条件を確認してください。
2-1.基本手当の給付日数が3分の1以上残っていること
再就職の前日までに、給付日数が3分の1以上残っていることが条件です。例えば90日間分の基本手当がもらえる場合は、待期期間を除き、30日以上残っている必要があります。
2-2.待期期間(7日間)を過ぎてから就職した
雇用保険の基本手当を受給するには、7日間の待期期間があります。この7日のうちに再就職できた場合は再就職手当の受給対象にはなりません。7日を過ぎてから再就職することが条件です。
2-3.給付制限中はハローワーク/職業紹介事業者を通して就職する必要あり
自己都合で退職した場合、7日間の待期期間満了後1ヶ月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業者を通じて就職する必要があります。
例えば「前職を自己都合で退職したけれども、離職後1週間で友人の紹介により、新しいパート先が決まった」という場合には、再就職手当の対象外になるということです。
7日間の待期期間満了後1ヶ月を経過した後は、友人の紹介で再就職しても手当の対象となります。
3.ハローワークで求職申し込みをしてから再就職が決まった
そもそも、ハローワークで求職申し込みをする前に再就職が決まった場合には、対象になりません。そのため、離職をしたらなるべく早くハローワークで手続きを進めることをお勧めします。
4.再就職先の企業が受給対象である
再就職ができればどんな会社でもよいというわけではなく、一部対象外となる企業がありますので、以下にご注意ください。
4-1.今までに働いた会社ではない
「やっぱり前のパート先の方がよかった」と前の会社に戻ることもありますが、離職/退職した企業に復帰する場合は再就職手当の対象になりません。
4-2.今までに働いた会社の関連企業ではない
自分が働いたことがある会社でなくとも、その会社の子会社やグループ会社であったり、仕事の取引があって密接な関係のあった会社への就職は再就職手当の対象外になります。
5.過去3年間の間に再就職手当を受給していない
再就職手当は何度も受給できますが、一度受給すると、先3年間は受給できないことになっています。また、「常用就職支度手当」も同様で、こちらを受給したことが過去3年のうちにある場合は、再就職手当の対象外となります。
常用就職支度手当とは
6.新しいパート先で1年以上働く契約になっている
再就職手当を受給するには、この先も長く働くことが条件です。そのため、契約更新ができない契約や、そもそも1年未満の契約である場合は対象外となります。
この条件に当てはまらない場合、「就業手当」の対象となる可能性はあります。
就業手当とは - ハローワークHP
再就職手当はいくらぐらいもらえるの?
手当の額は、失業認定を受けた後の支給残日数によって異なります。
所定給付日数の「3分の2以上」を残して就職した場合は残日数の70%を、3分の1以上残して再就職した場合は残日数の60%を受け取れます。
計算式:
基本手当日額×残日数×60%または70%
図版:再就職手当のご案内 - 厚生労働省
もし給付日数が3分の2以上残っており、手当日額が5,000円・残日数が80日である場合、以下のような計算式になります。
5,000円×80日×70%=280,000円
また、再就職手当を受給し、新しい職場で6か月以上雇用された場合は新しい職場の賃金を確認しましょう。もし前の職場より賃金が下がっている場合は「就業促進定着手当」という別の手当てが受けられる可能性があります!
ちなみに、「再就職」ではなく自分で事業を開始する「起業」の場合も再就職手当の対象になります。起業を考えている方も対象になりますので、お手続きをお忘れなく!
就業促進定着手当とは - ハローワークHP
勤務時間が週20時間未満の場合はどうなる?
再就職手当や失業保険などは、すべて「雇用保険に加入している人」が受けられる給付です。雇用保険に加入する条件に「週所定労働時間が20時間以上であること」とありますので、20時間未満の場合は雇用保険から外れ、諸々の給付を受けられないことになります。
給付を受けられるなど、安心して働きたい方は、雇用保険に加入できる条件で職場を探すようにしてください。
申請書提出期限は1ヶ月!再就職手当を受け取るまでの流れ
手当を受け取るまでの流れを見てみましょう。
申請書提出の期限は、再就職した翌日から1か月以内ですので、手際よく進めることが肝要です。
5-1.新しい就職先から「採用証明書」をもらい、ハローワークに提出
新しい職場が決まったら、条件が合うかを確認し、「採用証明書」を発行してもらってください。受け取ったら速やかに、お近くのハローワークに提出しましょう。
5-2.「再就職手当支給申請書」に記入し、新しい就職先へ提出
ハローワークから「再就職手当支給申請書」という用紙が渡されますので、記入・捺印してください。その申請書には、新しい就職先に書いてもらう欄がありますので、自分が書くべきところを記入したら、新しい就職先に記入を依頼しましょう。
就職先企業が書くべき欄については、代理で書いたりしないように注意してください。
5-3.再就職手当申請書に雇用保険受給資格者証を添えて提出
再就職先企業欄もすべて記入できた申請書をハローワークに提出します。この時、新しい職場から受け取った「雇用保険受給資格者証」も添えて出すようにしてください。
ここまでを、再就職の翌日から1か月以内に終える必要があります!
5-4.調査完了後、再就職手当が指定口座に振り込まれる
ハローワークで調査が行われたのちに、再就職手当が振り込まれます。
再就職手当があれば安心して転職が可能!
転職活動はストレスがたまるものですが、頑張れば再就職手当がもらえるのはうれしいこですよね!わからないことがあればハローワークの相談窓口などを活用し、受給条件などを確認してください。
2019年10月29日公開/2022年12月23日更新