
定年後、年金だけで生活できるかどうかは誰もが抱える不安でしょう。しかし、そもそも自分が働く会社の定年が何歳なのか、はたまた自分に「定年制」が適用されるのかどうか、きちんと把握しているでしょうか。
パート、正社員などの雇用体系によっても異なる定年制度。その時になって驚かないように、今からきちんと確認しておきましょう。
意外と知らない「定年」の定義
定年制の定義は以下の通りです。
「一定の年齢に達するとその職を退くことを定めた制度」(Weblio -三省堂 大辞林)
ポイントは、定年制が「期間の定めなく働く人のためにつくられた制度である」ということ。
1年ごとに契約更新をするような有期契約であれば、定年を定めなくとも「契約更新をしない」という方法があります。しかし、正社員のように期間の定めがない場合には、定年が一つの区切りとなっているのです。
パートにも定年制度は適用される?
パート勤務の方でも正社員と同じく、契約期間の区切りを決めず働いていることもあるでしょう。パートにも定年があるかというと、それは就業規則にどう書かれていて従業員に周知されているかがポイントです。
パートタイマー用の就業規則があり、そこに「定年は65歳」と書かれていれば、パートの定年は65歳となります。しかし、「パートタイマー用の就業規則に定年が特に書かれていない場合は、定年はないこととなります。また、「そもそもパートタイマー用の就業規則がない」という場合には、正社員の就業規則が原則適用となります。
65歳から70歳に定年引き上げが推奨されている
2013年に改定された「高年齢者雇用安定法」により、定年は60歳を下回ることはできないことになりました。また、2021年4月1日以降は企業に対し、定年年齢を70歳に引き上げることや、定年制の廃止などの努力を求めています。
背景にあるのは「少子高齢化」ですが、今の70歳と言えばまだまだ元気!仕事をすることで生きがいが保て、より元気でいられるという声も多々あります。
また、企業は高齢者が解雇などで離職する場合で、本人が希望する場合には求職活動における金銭的な支援や再就職先のあっせんなどのサポートなど、「再就職援助措置」をとることが努力義務として定められました。
1ヶ月以内に高齢者を5人以上解雇などで離職する場合は、「多数離職届」という届け出をハローワークに提出することが企業に課せられることになりました。
このように、高齢者の離職に対して企業が慎重になるように、国としても制度を整えつつあります。
高年齢者雇用安定法とは – 厚生労働省
パート・正社員に限らず「定年制の廃止」も進んでいる
パートタイマーにせよ、正社員にせよ、定年を定める時にはきちんと就業規則に明記しなければなりませんが、「あえて定年を設けていない」という会社もあります。その場合、年齢によって雇用契約が終わるということはありません。
2021年の厚生労働省調査によると、中小企業において、定年制を廃止した企業は3.3%、大企業では0.6%でした。規模の小さい会社の方が定年制を廃止したり、定年を70歳に引き上げたりする処置を実施していることがわかります。
図版:令和3年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果 – 厚生労働省
なるべく長く働きたいという人は、定年について確認されるとよいでしょう。
パートで定年を迎える時は要注意
パートタイマー向けの就業規則で定年が明記されていたり、一定期間ごとに契約が管理・更新されていたりすれば心配ありませんが、期間をきちんと定めず、かつパートタイマー用の規則が定まっていない場合は問題になり得ます。
65歳になる前に「定年が定められていないのに定年を理由」として退職を促される場合は、「会社都合の退職」にあたる可能性もあります。そのような場合はハローワークや労働基準監督署に相談してみてください。
定年を考える時に、「自分は何歳まで働きたいのか」というビジョンを持つことが必要になります。まだまだ先のことと思わずに、今から少し考えてみるとよいですね!
2019年7月11日公開/2022年12月22日更新