
ドーモプラスが俳優をはじめ、さまざまな分野で光を放っている仕事ビトにクローズアップし、これまでの道のりを辿る連載企画「マイ・ブックマーク」。第2回に登場いただくのは「『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Memory of Marionette~」天祥院英智役などで注目される俳優・笹森裕貴(ささもり・ひろき)さん。
舞台「ガラスの仮面・愛のメソッド 2019」東京公演、「MANKAI STAGE『A3!』~SPRING 2019~」水野 茅役と出演作が続々控える笹森さんに、後編では役者として舞台に挑戦したことで得た大きな気付きや、日々の支えとなっているもの、そしてやってみたいアルバイトなどについてお話を伺いました!
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笹森裕貴が「舞台に上がって見えたもの」
――前回の取材がちょうどモデルから役者へお仕事を切り替えようとされていた時期で、「テレビに出ている俳優さんに憧れを持っている」といったお話をしていただいたのですが、実際お芝居の世界に本格的に足を踏み入れてみて、今の心境はいかがですか?
そうですねぇ……テレビに出るって、とてつもなくハードルの高いことなんだと、改めて思います。決して舞台のほうがハードルが低いっていうわけではないんですけど。でも幸運にも、2作目に出演した「あんステ」で梅田芸術劇場メインホール、約2000人入る会場に立てたんですよ。でもそれは、僕がすごいわけじゃなくて、周りの方や、今まで作品を築き上げてきてくれた方、それを応援してくれたファンの方たちのお陰なんです。
そういう舞台に立って、1000人単位の人からの視線を意識すると、一瞬も気が抜けないなと感じました。一秒たりとも自分でいちゃいけないというか、キャラクターでいないといけない。指先の動きから、表情の作り方、瞬きの回数まで。
――瞬きまでとは……神経の末端まで役作りをされているんですね。
最前列の人からは本当に近い距離から見られることになるので、そこは徹底しないといけないなと思うようになりました。何というか……前は「テレビに出たい」「有名になりたい」ってすごく思ってたんですけど、こうやってお仕事をいただけるようになってきた今だからこそ感じているのは、そういう大きな目標や「自分はこれがやりたいんだ」っていうものが、いい意味であまりなくなったなって。
前の自分は高い目標ばかり見ていて、自分がその時置かれている位置からそこに至るまでの、過程を見ていなかったんですよね、結局。最大級の目標だけを追っていた。でも、一歩一歩進みながら、少しずつやってきたことが形になり、いろいろな舞台へ出演する機会をいただいている中で「今は目の前のことを全力で頑張って、実力をつけていこう」と。こうやって過程の話もできるようになりましたし、すごく充実していて楽しいです。
――そういった気付きは大変得難いものですよね。お芝居と向き合う時間がよりしっかりとれるからと、映像作品の仕事の合間を縫って、舞台に出られる役者さんもいると聞いたことがあります。
そうなんですよね。僕もそんなに語れるような感じではないですけど、舞台には1ヶ月くらいの稽古期間がありますし。本番の期間も含めて、同じことを何回も、それもキャスト全員揃ってやるじゃないですか。だから他人の変化にも気付けるなというのを感じて。芝居の面で「これはもうちょっとこうしたほうがいいんじゃない?」って言ったり、言ってもらったり。「顔色がよくないけど大丈夫かな」とか体調面のことでも、毎日いっしょにいたからこそ些細なことにも気が付くんだなと思いました。
これは気の持ちようかもしれませんけど、共に過ごした時間が長いほど、本番に出せる熱量も高くなったりもするんじゃないかなって。こうやっていろいろ分かったことがあったので、舞台に出られて本当によかったなと思います。
大切にしている手紙「届いたんだなと思えた」
――日々の稽古や本番に臨むにあたって、モチベーションになっているものは何ですか?
これは綺麗事とかではなく本当なんですけど、ファンの方からいただいたお手紙はもう、めっちゃ読みます。もらったらすぐ、電車の中でも読んじゃうくらいに。だって感想が直で聞けるじゃないですか。これまでのお手紙は全部嬉しかったんですけど、初めて舞台に出た『サンリオ男子』の時にもらったものの中にすごく印象に残っているお手紙があって。
僕はモデルの仕事を始めた頃からずっと、人の心に届くというか、いい意味で人に影響を与えられる人間になりたいなっていう願望があったんですけど、それを一番実感できたのがそのお手紙を読んだ時だったんです。「舞台に出ているあなたを見て、人生が楽しくなりました」「誰かの気持ちを動かせるのはすごいこと。それだけの魅力があなたにはあるから、自信を持ってやってください」って。
――頑張るためのお守りになりそうですね。
この言葉をもらって、自分も人のためになってるんだなって、ボロボロ泣いちゃいました。自分なりに死ぬ気で頑張っていた時だったので、すごく素直に「よかったな、届いたんだな」って思いましたし、そうやって文章にして僕に直接くださった人がいたのが本当にありがたかったです。お手紙をいただけるのはとっても嬉しいですね。
――直接、それもお手紙で伝えてもらえると、届いている人がいるのが肌で感じられますよね。
それまでなかなか実感できなかったですから。自分では自分のことを客観視できないし、人間は自分が一番かわいかったり贔屓目に見てしまうところがあると思うので。だから、自分の価値は自分が決めるものじゃなく、ほかの人から評価されることで決まると思うし、こういう仕事をしていたらなおさらですよね。僕を観てくれていた人から評価を受けたっていう事実がとても嬉しかったです。
心の支えとなってくれる存在「僕、じじばばっ子なんです」
――オフの日にはどんなことをして過ごされますか? 笹森さんなりのストレス解消法や、気持ちの切り替え方を聞かせてください。
バッティングセンターには結構行きますね。やっぱり野球をやってたので。映画もよく観るんですけど、夜にちょっと観たりもできますし……。それから、昔からの友達と会って話したりするのが一番かなぁ。地元に応援してくれているヤツがいて、この前、みんなで大阪まで来てくれたんですよ。
――それは、大阪での公演を観に来てくださったんですか?
そうなんです、6人くらいで。高校の時にモデルを始めたこともあって、学校や地元では少し浮いたりもしてたんですけど、そんな中でも応援していてくれていた数少ない友達なんです。僕が仕事をしている姿を初めて見せたんですけど「超感動した、めっちゃよかったよ」って言ってくれて。彼らはかなり僕の心の支えになってくれているので、そういう人たちに恩返ししたいなって思います。
――応援してくれる身近な存在はかけがえがないですよね。ご家族の方も舞台を観に来られたりはされますか?
この前も観に来てくれました。家族もすごく応援してくれていて、特にばあちゃんが。僕は昔からじじばばっ子で、今度いっしょに旅行にも行こうって計画してるんです。もっと頑張って、じいちゃんばあちゃんにも早く恩返ししたいですね。
――おじいさま、おばあさまは、舞台を観てどんな反応をされていたのでしょうか。
ストーリーはあまり分からなかったかなと思うんですけど、そこに存在している孫の姿を見るだけで喜んでくれてました。『サンリオ男子』に招待した時には、たまたま近くに僕のファンの方がいて「よかったね」って感想を言ってくれているのを聞いたらしく、ばあちゃんったら鼻高々で自分の友達にその話をしたらしいです(笑)。
――では、今後の目標についても聞かせてください。先ほど「目の前のことを全力でやる」とおっしゃっていましたが、これからどんな役者になっていきたいですか?
人の心を動かせる人間になりたいです。僕の存在によって、誰かの心が救われたりしたらというか……言い方が難しいですけど。これからもお芝居はやっていきたいですし、自分のやりたいことで人に認めてもらえるのは、奇跡だと思っているので。現状に感謝ですね。可能性がある限りは一生続けていきたいです。
芝居にも役立つ!? 意外な特技とは
――お次はDOMOがアルバイト求人媒体であることにちなんで、アルバイトのお話を伺いたいのですが。もしも今、一日だけ、もしくは短期でアルバイトができるなら、どんなことをやってみたいですか?
運動が好きなので、スポーツインストラクター的なものとか。ジムよりはむしろ、いっしょに身体を動かしたいので……あ、バイトはなさそうですけど(笑)、体育の先生をやってみたいです! 実際にやれそうなところだと、駄菓子屋さん。お菓子がかなり好きで、いつもカバンの中にいろいろ入ってるんですよ。
――駄菓子屋さんというと、昔ながらのお店のイメージでしょうか?
ですです。僕の地元の近所にあるんですよ、おばあちゃんが昔からやっている感じのお店が。最近だとあんまりないんですかね、コンビニが主流になってますし……。あとは、交通量を測る人とか!
――道路脇で椅子に座って、カチカチとカウンターを押している方々ですね。
僕、前々から人間観察をするのがけっこう好きなんです。「この人は何を考えてるんだろう?」って。それで一時期、心理学の本をめっちゃ読んだりして独学で勉強したことがあるんですけど。通りすがりの人を見て、服装や歩いている感じから「こういう人なのかな、こういう仕事をしているのかな」って考えたりするのが好きなので、交通量を測る仕事をしながら、人間観察をしたいなぁと。
――服装や動きから、そこまで予想できるんですか? メンタリストみたいです(笑)。
けっこう分かるんですよ(にやり)。仕草から、心理状況が分かったりもしますし。例えば、話をしている時に「そうなんですか!」(と言いつつ、ソファの背もたれにどっかり寄りかかる)っていう感じの人、いません? こういう時は、身体が後ろにいっちゃってるので、実は話を聞いてないんですよ。会話に疲れているか、興味を持っていないか。人間って本当に話に興味がある時には、前のめりになるらしいです。
――(自らの姿勢を省みて)今の私のような感じ、ということですね(笑)。
あはは! 大丈夫ですよ、今は取材中ですから! 観察とかしてないです(笑)。面白いですよね、こういうの。性格が云々っていうよりも「この人はこういう時に、こういう行動をするんだな」っていうのが興味深いです。
――役作りにも使えそうですよね。心情を仕草で表現したりする時に。
そうかもしれないです。メガネをかけている役だった時には、メガネの人をめちゃくちゃ観察したりもしましたし。――って、アルバイトの話からかなり脱線しましたね。すみません。
――いえいえ、楽しかったです。では最後に、夢に向かって頑張っている読者の方へ向けて、応援のメッセージをお願いします。
自分としての人生は一度きりですし、まずはやりたいことに挑戦してみましょう! 迷ったら、やる。後ろに退かずにやってみる。一歩を踏み出すのに時間がかかるかもしれないけど、もし失敗したとしても、それは絶対経験にはなるので。
結局、経験を積んだ人が一番エライと思うんですよ。どんなことも、やってみなければ分からないし。だから、例えば……借金したり、人間関係が壊れるような、そういうすごいリスクがない限りは、とりあえずやってみましょう。自分はいくら犠牲にしてもいいんです。どれだけ疲れても大変でも、その経験が自分のためになるので。僕はそう思います。
ファンの方からの手紙が本当に嬉しいと話してくれた笹森さん。「前の自分は高い目標ばかり見ていて、そこまでの過程が見えていなかった」――そう言い切る晴れ晴れとした表情は、役者として、人間として、日々進化している人のもののように感じられました。この春も出演作が続く笹森さんが、次はどんな姿を見せてくれるのか楽しみですね♪
取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)
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