ドーモプラスが俳優をはじめ、さまざまな分野で光を放っている仕事ビトにクローズアップし、これまでの道のりを辿る連載企画「マイ・ブックマーク」。第2回に登場いただくのは「『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Memory of Marionette~」天祥院英智役などで注目される俳優・笹森裕貴(ささもり・ひろき)さん。


舞台「ガラスの仮面・愛のメソッド 2019」東京公演、「MANKAI STAGE『A3!』~SPRING 2019~」水野 茅役と出演作が続々控える笹森さんに、前編では初めて舞台に上がったことで自分に起きた変化や、プレッシャーと向かい合いながら覚悟を持って臨んだ役作りなどについて、とことん語っていただきました。


インタビュー後編はコチラ


「ゴッドファーザー」のあの名優に憧れて


――笹森さんには、本連載の前身となる企画「レコメン図」でも取材をさせていただきましたが(【レコメン図 vol.09】笹森 裕貴インタビュー)、今回改めて伺わせてください。モデルとしてお仕事を始めた中で、演技に挑戦したいと思うようになったきっかけは何だったのでしょうか?


理由はいろいろあったんですが、そのうちのひとつが……映画の「ゴッドファーザー」を観て、アル・パチーノにやられたんです。「カッコいい! あんなふうになりたい!」って思って。そんな単純な理由なんですけど(笑)。


――そこまで魅了されるとは、さすが名作です。ご覧になったのはいつ頃ですか?


映画自体は前からよく観ていたんですが、「ゴッドファーザー」を観たのは1年半くらい前だった気がします。それがちょうど、モデルの仕事をしながらも、今後をどうしていこうか考えていたタイミングで。それまで銃をドンパチする系の作品はあまり観たことがなかったんですけど、男としての生き方というか、アル・パチーノの芝居に引き込まれましたね。それで「こういう役者さんになりたい」と思って。


もちろん、海外の作品だし、スケールの大きさも撮影方法も全くちがうんですけど、きっかけとして考えるとこれなのかなと思います。ここで「ゴッドファーザー」を語り出すと、3時間くらいかかるのでこれくらいにしておきます(笑)。






――ではその後から、映像作品に挑戦されるようになったんですね。


そうですね。事務所の方に「役者をやらせてほしい」と伝えて、映像の仕事のオーディションをたくさん受けさせてもらったんですけど、もう落ちまくりました。そのうちに少しずつお仕事が決まりだして、セリフも一言二言くらいもらえるようになって。そんな中で、舞台のお仕事にも挑戦する機会をいただいたんです。





――それがミラクル☆ステージ『サンリオ男子』(※1)だったんですね。


はい。舞台はお芝居の基本だというのはよく聞いていたので、いつか挑戦してみたいという思いはあったんですけど、初めてで右も左も分からないし、2.5次元作品についてもよく知らなかったので、不安もかなりあって。いろいろ考えたり、周りの方から話をうかがったりもして、挑戦することに決めました。


今になって思うと、何事もやってみなきゃ分からないし、本当に体験したことしか語れないんですよね。『サンリオ男子』がきっかけで「あんステ」(※2)への出演も決まりましたし、思い切ってみてよかったなって思います。


(※1 同じ高校に通う、サンリオ・キャラクターを愛する“サンリオ男子”たちの、出会いと青春を描く物語。笹森さんは、マイメロディが好きな高校生「水野 祐(みずの・ゆう)」役で出演)


(※2 『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』シリーズの通称。スマートフォン向けアプリゲーム『あんさんぶるスターズ』を原作とし、アイドル養成学校「私立夢ノ咲学院」を舞台に、個性豊かな登場人物たちの成長を描く。笹森さんは「『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Memory of Marionette~」 に「天祥院英智(てんしょういん・えいち)」役で出演)





――『サンリオ男子』では、初舞台から歌もダンスもと幅広い要素のある作品にトライされたわけですよね?


歌はもともと、特に上手いわけではないなりに好きだったんですけど、ダンスはこの時が初めての挑戦でした。運動や体を動かすことは前からすごく好きなので、やっているうちに上手くなっていってるかなと……実際、公演期間中にも周りの人から「上手くなったね」って言われて嬉しかったですし、お芝居だけでなくダンスや歌にも挑戦できるのが楽しいなと思いましたね。





妥協ゼロで挑んだ役作り


――「あんステ」では優雅でキレのあるダンスを披露されていましたよね。舞台出演2作目にしての大抜擢とあって、役作りの面でも相当な努力をされたのではと思います。


たくさんの人に愛されるキャラクター像が既にある中でやらせていただくので、リスペクトを忘れずに、まずは自分の演じる役がどんなキャラクターなのか知るところから始めました。


今回の役は……本当に難しかったですね。誰よりもアイドルという存在、そして学園のことが好きなんですけど、身体の弱さを抱えながら「学園を変えないといけない」という思いに駆られて、すごく焦っている。これまで、英智には“強い皇帝”っていうイメージがあったんですけど、儚いところもあるし「この人、もしかして一番人間っぽいんじゃないかな」って思ったんです。


これが分かるまでにかなり時間がかかって、あれこれ本を読んだりもしました。彼はビジネス的なこともやっているということで経営の本も手に取ってみたり。あとは、役作り的なことでいうなら、背中にハンガーを入れたりもしましたね。





――ハンガー! それはまたなぜですか?


僕自身が猫背なので、それを矯正するために、家でずっと背中にハンガーを入れて生活していたことがあったんです。


――儚いながらに背筋のすっと伸びた立ち姿には、そんな裏話があったとは……。


あはは。自分はもともと細いほうなんですが、より病弱さや儚さを出したいなと思って、絞ったというほどでもないんですけど、少し気にした部分はあります。僕は経験的にも実力的にもまだまだで、そんな中でも「自分なりにできることは何だろう?」って考えて、これかなと。今回は強めの視線で好戦的にいくシーンも多かったので、少し頰がこけているくらいでもいい気がしていて。でも、目力をずっと入れていたらこけすぎちゃいました(苦笑)。今はちゃんと食べるようにして戻しているところです。





――彼らしい美しい所作も見られましたが、何か工夫をされたことはありますか?


僕は小学校、中学校と野球しかやってこなかったので、綺麗な所作や歩き方をするというのが、自分にとってはかなり難しくて。だから役作りで一番最初にやったのは、そういった雰囲気作りでした。


前作のお芝居を観た時に、役者として心に届くものを感じたんです。自分が演じる役だからという贔屓目もあるのかもしれないですけど、一番美しくて可憐で、でも強くて。すごく圧倒されちゃいました。それで「これが自分にできるのか?」と思ったんですけど、それはもう死に物狂いでやってやろうと。そうでなくては、僕を選んでくれた方や、応援してくれている人たちにも申し訳ないので。だから、稽古の1ヶ月間は妥協は一切せずに臨みましたね。寝てる時にも夢に出てくるくらい、ずっと考えてました。





――それほどの覚悟をされて挑まれたんですね。公演期間中もその試行錯誤は続いているのでしょうか?


いやもう、ゴールはないと思っているので。ずーっとやってますけど、それも面白いんです。例えばダンスは先生のお手本があるので、もちろんそれは完璧にこなせないといけないんですけど、自分たちなりに「このキャラだったらこうするんじゃない?」とか「こういう時には、多分ここで目線を合わせて、こういう動きをするよね」とか考えたりもして。


公演後には毎回そういう話が出るくらい、発見が多いです。演出がしっかりついているお芝居パートに対して、ダンスパートは自由度が高いので、課題が尽きないですね。





――役が自分に馴染んでくるにつれて、どんどん新しいものが見えてくるんですね。


本当ですよね。本来なら初日を迎える前に全部クリアするべきだと思うんですけど、やる度に新しい気付きがあるので……。何度か観てくださっている方も、最初の頃と最近を比べると「全然ちがう」という感想をくれたりするんです。でも、それもいいことなのか悪いことなのか……。


――舞台はナマモノですから、その成長を観るのが楽しいという方もいらっしゃいますよね。


そう言ってもらえると助かりますね(笑)。今なら、より狂った英智をお見せできると思います。





「人が好きになった」初舞台の経験がもたらした大きな変化


――これまでの流れですと、笹森さん自身が大きく変われたと感じたタイミングは、2作目の出演作との出会いだったのでしょうか?


うーん、確かにそうでもあるんですけど。舞台に関して言うなら、やっぱり最初の作品かなと思います。それがなければ今の自分はないですし、この時に舞台に出演できたから、2.5次元作品の魅力に気付けたんだなって。原作がある既存のキャラクターを忠実に演じるだけでなく、演じる人なりの「このキャラならこうするだろうな」という解釈がのるから、いろいろな人が観て面白いと感じるんだろうと思うんですよ。





――なるほど。


セリフ量も相当多かったりとめちゃくちゃ大変ではありましたけど、初舞台からそんな役をいただけたのはすごくありがたいことでしたね。ひとりのシーンもありましたし、700人もの大勢の人の前でお芝居をすることなんてそれまでになかったので、かなり緊張しましたけど(笑)。


あと、その時の役はそれまでに映像作品でもやったことのないような、テンションの高いキャラだったんです。それを舞台でやるとなったら、もう何十倍も(エネルギーを)出さないといけない。さらに、その中に優しさもあったりして。最初は役を掴むのが難しくて、壁にぶつかったりもしましたが、それがなかったら今の自分はいないし、出会えてよかったなと思います。





――初めての舞台で、それほどの高いハードルに挑もうと思えたのは、どういう理由からだったのですか?


その頃は映像作品に少しずつ出られるようになってきていた時期で、そのままの路線で頑張りたいという気持ちがあったり、2.5次元の作品についても“既存のキャラクターを演じる”というイメージだけがあって、まだ実際にどういうものなのかよく分からなかったりしたんです。それで、なかなか一歩を踏み出せなかったんですけど、度胸付けというか、いろんなことに挑戦してみたいなと思えて。さっきも言ったんですけど、やってみないと分からないことだらけだし、経験している人に(経験していないままで)は勝てないなと。





――やらないで後悔するより、やったほうがいいことって、きっと多いですよね。


僕、やる前からすごくいろいろ考えてしまう癖があるんです。それで結局一歩を踏み出せずにダメだったっていう経験をこれまで何度もしてきて。野球をやっていた頃もそうだったし、失敗が苦手で好きな映画を何度も観たり、同じ本を読んだり、同じものばかり食べたり……人付き合いも「最低限の友達だけいたらいいや」みたいに、今までは新しいことになかなか手を出さない性格だったんです。


でも舞台を始めてから、人と絡むのが好きになりましたね。今までよりほかの人に興味が湧いて、人間が好きになりました。役者さんと絡むのが初めてだったので、芝居の面でも勉強になりましたし、プライベートでも仲よくしてもらったりして、本当に1から10まで教えてもらったなと思います。





――すてきな出会いができたんですね。今でも共演者の方と会ったりすることはありますか?


けっこう会いますよ。それこそ、翼くんとはめっちゃ仲よしですし。ご飯をいっしょに食べたり、この前は「何してるの?」ってLINEが来ました。「いや公演期間中だわ」って返しましたけど、淋しかったらしいです(笑)。いろいろと近況報告をしたりしながら次に会う約束をして、バカっぽい顔をした写真を送りあったりしてます。あの人、すごく面白くて大好きなんですよ。





――本当に仲よしですね(笑)。演技面では、特にお世話になったという方はいらっしゃいますか?


それはもう、全員です。稽古中の動画を見ながら演技やダンスを参考にさせてもらったり、直接教えてもらったりもしました。みんなが師匠だった感覚です。





――そういう経験もあって、人との関わり方が変わったのでしょうか。


変わりましたね。「自分から行かないと、誰も来てくれないな」と思って。自分から何かを聞きにいったりするのが、それまではなかなかできなかったんですけど、やらないと舞台が成立しないので。全員で1つのものを作り上げるという意味では、「俺は一人でやるから」みたいな人が1人でもいたら形にならないなと思いましたし。だからというわけではないんですけど、いろいろな人と積極的に話すようになりました。


最近たまに、久しぶりに会う友達から「何だか表情が明るくなったね」って言われることがあって。それくらい、中のモノって表に出るんですよね。





役作りには探究心と愛情を



――先ほど役作りについてのくだりでも少しお話しいただきましたが、演技を仕事とする上で、大切にしているのはどんなことですか?


今、やらせていただいているのが2.5次元作品なので、そこでの話をするなら。ファンの方々はキャラクターをすごく愛しているし、その方たちなくしてはアニメやゲームが舞台化されることもなかったでしょうし。


だからまずは、ファンの方たち第一だなって思います。自分がどんな芝居をしたいかの前に、自分が演じるキャラクターをまず一番に、ファンの方たちより深く知らないといけない。もちろん、100人いたら100通りの考えがあって、全員に認められるということはないとは思うんですけど。もっと根本的に、キャラクターを好きになる、というか。





――役者さんが愛情を持って演じてくれているのは、ファンの方にも伝わりますよね。


今回演じたキャラクターは大人だし、努力する才能を持っている人なんです。そして彼は、五奇人という才能溢れる人たちに憧れを抱いた、ひとりの人間でもあって。だけど自分には突出した才能もなく、身体も弱かった。だから彼なりに努力した。その様を見て、素直にリスペクトしましたね。


大事なことって、人から言われてやるんじゃなく、自分で気付くことだと思うんです。それができる高校生って、すげぇなって思います。だからこそ、そういうファンの方たちが思い描いているキャラクターの人間性を、まずは一番大事にしたいですね。


――努力する才能という言葉、すごくしっくりきました。愛ある役作りですね。


今はまだ、演技へのこだわりなんて持てるほどの経験がないと思っているので、自分に向き合ってくれる人たちに真正面からしっかり向き合って、自分しか見せられないものを見せられたらいいなって考えています。





「ガラスの仮面・愛のメソッド」での初座長を控えて



――では、3月14日からシアターグリーン BASE THEATERにて開幕予定の舞台「ガラスの仮面・愛のメソッド 2019」東京公演について聞かせてください。この作品は、新人女優の育成のため2016年から3度上演され、今回は若手男性俳優をキャスティングしたリメイク版となるそうですね(※4)。主演の西島マオ役への意気込みはいかがですか?


3作目で座長を任せていただけるということで、自分がほかのキャストのみなさんを引っ張っていけるのかなと、挑戦にもなると思いますし、すごくわくわくしてます。原作のあるキャラクターを演じるのではなく、自分のお芝居で舞台に出るのが初めてなので、それがどう評価されるのか、好きになってくれる人がいるかどうかがすごく楽しみです。





――初座長となるわけですが、プレッシャーよりも嬉しい気持ちが優っている感じでしょうか?


嬉しいですね。それに、やらせていだだくには、あんまり謙虚過ぎるのも少しちがうかなって。思い切って言うなら、目立ちたいですし、自分は目標に対して貪欲な生き物だと思っているので(笑)。そういうチャンスがいただけるのならラッキーだなって。僕、昔から運だけはいいんですよ。


――頼もしいコメントです(笑)。


その代わり、やるからには全力でやりますよ! 不安とかはなく、ただただ楽しみです。こうやって挑戦できる機会があるのはいいことだと思うので。


(※4 「ガラスの仮面・愛のメソッド」とは、劇中作品の幻の名作・「紅天女」をめぐり演技を競うマヤと亜弓が月影先生から与えられた課題である。それは、愛する人へ思いを告げるバレンタインチョコレートをテーマとした、愛の演技表現を得るためのメソッド。


このエピソードは、2016年2月に高島屋のバレンタイン「アムール・デュ・ショコラ」のカタログの為の書き下ろし漫画「ガラスの仮面 特別番外編『愛のメソッド』」で描かれた。


そしてそのスピンオフ公演として上演されたのが、スタジオ公演『愛のメソッド』である。この企画は、新人女優育成のため、原作者美内すずえが作品を提供したことで実現された。ストーリーだけでなく、新人女優の成長も楽しめることが話題を呼び、2018年までキャストを変えて再演を繰り返した。
2019年は、3年連続で上演される中、劇中で女優をサポートしてきた男優たちに注目。「若手男優対決」としてのリメイクが決定した)





舞台期間中の寒い日だったにも関わらず、爽やかに取材に応じてくださった笹森さん。役やお芝居について生き生きと語ってくれる姿からは、多忙な中でも気持ちが充実している様が伺えました。後編では、役者として舞台に挑戦したことで得た気付きや、日々の支えとなっているもの、やってみたいアルバイトなどについて語っていただいたので、どうぞお楽しみに!


取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)


インタビュー後編はコチラ


【プロフィール】
笹森 裕貴(ささもり・ひろき)
1997年6月21日生まれ、東京都出身。ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』水野 祐役、『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Memory of Marionette~ 天祥院英智役など様々な作品に出演。3月14日(木)から「ガラスの仮面・愛のメソッド 2019」に主演 西島マオ役での出演が控えている。


<告知情報>
「ガラスの仮面・愛のメソッド 2019」
主演 西島マオ役

2019年3月14日(木)〜24日(日)  シアターグリーン BASE THEATER


【笹森裕貴さん動画コメント】

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