ドーモプラスが注目の男子を紹介する連載インタビュー「レコメン図」。今回お迎えしたのは「ミュージカル『刀剣乱舞』」陸奥守吉行役や「最遊記歌劇伝-異聞-」峯明役など、話題を集める舞台で活躍中の、俳優「田村 心(たむら・しん)」さん。
11月からは「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜真剣乱舞祭 2018〜」への出演が控える田村さんに、後編では同志ともいうべき役者さんや、今後挑戦したいお仕事、アルバイト時代のエピソードについて語っていただきました。
インタビュー前編はコチラ
背中を追いたい」共通点の多い同志とは
――これまでさまざまな役者さんと共演されてきたかと思いますが、刺激しあえる同志、もしくはライバルのような存在の方はいますか?
刺激し合えているのかは分からないですけど、僕自身は有澤樟太郎がすごく気になっちゃいますね。同じ年齢ですし、活動を始めた年もたしか同じく2015年なんですよ。樟太郎と共演したり、(出演作を)観る度に差を感じますし、すごいなって思います。
――以前、有澤さんの取材の際にうかがったのですが、俳優のお仕事を始めた経緯がお二人は似ていますよね。
樟太郎ともそう話してたんです。あちこち事務所に履歴書を出して演技学校に入り、アンサンブルでのスタートから役を勝ち取って、けっこう同じ道を辿ってるよねって(笑)。でも今は、樟太郎との間には圧倒的な差があるので、その背中を追って行きたいし、樟太郎にとっても刺激になる、そんな存在になりたいなって思いますね。
――「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜幕末天狼傳〜」で有澤さんと出会った当時、田村さんはスタッフをされていたことを考えると、同じ役者として向き合えるようになったのは大躍進だと思いますよ。
でもまだまだなので、自分が頑張らないと。スタッフをやらせていただいてた時は“有澤さん”って呼んでましたから。その後(「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~結びの響、始まりの音~」での)共演が決まってもしばらくは“有澤さん”のままで、稽古期間中で“樟太郎”に直したんです。今ではご飯もたまにいっしょに行ったりしますね。50公演をいっしょにやり抜いたので、ほかの共演者のみんなとも、絆はあると思います。
――50公演を超えたら、家族みたいな感覚になりそうですね。そこまで仲良くなると照れ臭さもあるかもしれませんが、有澤さんの「ここが特にすごい」と思うのはどこですか?
えぇ!?(笑) そうですね、演出家さんから何か言われたら、すぐに変えられたりする対応力であったり、瞬発力であったり。あと、歌も上手いですし、身長もありますし、人としても役者としてもカッコいいなぁって思います。樟太郎、優しいんですよ。スタッフをしていた頃からよく話しかけてくれましたし、いい人なんです。
――尊敬できるところがたくさんある同志って、得がたい存在だと思います。ミュージカル『刀剣乱舞』ではもちろん、ほかの作品でもまた共演できたらいいですね。
共演したいですね。全然ちがう役だったらまた面白そうですし。だから、自分が頑張って成長しなきゃなって思います。
――それでは、尊敬している役者さんや、影響を受けた役者さんはいたりしますか?
「ちっちゃな英雄(ヒーロー)」でアンサンブルとして初舞台に上がった時、座長をされていた加藤真央さんと味方良介さんです。初めてで何も分からなかった自分をかわいがってくださって、いろいろアドバイスもいただきましたし、役者をやっていく上での芯みたいなものを作っていただいたなという気がします。
――舞台経験のあるお二人に、一から教えてもらった形だったんですね。
そうです。何も持っていない僕からしたら「すごい人と仕事をさせていただいてるんだな」って日々感じてましたし、この前(「最遊記歌劇伝-異聞-」峯明役で)座長を経験して、また改めてあの頃のお二人のすごさを感じました。長い公演期間、7人のキャストの面倒を見ながら一番運動量のある役をこなしていたので、大変だっただろうなと思います。
ミュージカル主演俳優の意外な過去
――「ちっちゃな英雄(ヒーロー)」から「最遊記歌劇伝-異聞-」まで、ミュージカルに何作も出演されていますが、歌はもともと得意だったのでしょうか?
いや、全然なんです。「ちっちゃな英雄(ヒーロー)」時には、初めてでソロもあったりしたのでかなり苦戦しました。実は、小さい頃から、人前で歌うっていうのに抵抗があって。カラオケに行っても1曲も歌わなかったりしたのに、今はなんか不思議ですね(笑)。
――歌うのが苦手だったとは思えないほど、堂々とされていると思いますよ。
いやいやいや……全然ですよ。今だにどうやったら成長できるのかな、上手くなれるのかなって思いますもん。頑張らなきゃ。今だと、2.5次元と呼ばれる作品には歌とダンスが外せないですし。
――殺陣も要素としてあるかと思いますが、こちらはいかがですか?
殺陣は演技学校の時に習っていたので、そこで少しだけ基礎は学んでました。殺陣って、ゼロか1か、少しでも経験があるかどうかの差がけっこう大きいって聞くので、そこはやっていてよかったなと。ミュージカル『刀剣乱舞』のオーディションの時も木刀を持って行って振ってみたりしたので、それがつながったのかなって思ったりもしました。刀を握ったことがないと、基本の所作から分からなかったりもするらしいので、ゼロスタートだったらもっと稽古も大変だったのかもしれないですね。
――陸奥守吉行は刀に加えて、拳銃も持っていますし。
刀と拳銃、両方使うのでなおさら苦労しました。動きもちがうし「音響さんが銃声を合わせなきゃいけないから、撃った時の反動をちゃんと表現して」って言われて、その練習もしましたし。撃ち方や斬り方はけっこう考えましたね。稽古中以外の時も、銃を常に持っていたんです。稽古場にもあったし、家にも持って帰って触るようにしてました。
「真剣乱舞祭2018」へ向けて、その熱い思い
――11月、12月には「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜真剣乱舞祭2018〜」が開催されますが、それを控えての意気込みを聞かせてください。
乱舞祭、本当に憧れだったんです! 1回目の乱舞祭があった時なんか――多分、どうしても観たかったんでしょうね――チケットがないのに会場に行って、警備員に取り押さえられるっていう夢を見ました。それくらい、憧れで。
――なんと! 夢に出るくらい憧れていたんですね。
2回目にはお客さんとして観させていただいたんですけど、今回は出演させていただけるので、本当に楽しみです。しかもステージも大きいですし、好きなアーティストのライブを観に行ったこともある場所に、自分が立つなんて。ヤバイっすね、ドキドキですよ! 詳細が決まるのはこれからなので、今は過去の乱舞祭を観たりしながら、イメトレしてます。
――共演者の方と再会できるのはもちろん、ほかの出演者の方とも会えますもんね。
そうなんですよ。僕も(客席から)刀剣男士を観ていたので、その方たちとお仕事ができるなんてすごいことだし、緊張しますけどありがたいですよね。先輩方ばかりなので、頑張って食らいついていこうと思います。
「いただく役、全てが挑戦」真っ向勝負で挑む未来
――今後はどんなお仕事に挑戦してみたいですか?
いろいろ役をやらせていただくうちに思ったんですけど、結局いただく役が挑戦だなって。どの役も何かしら越えなきゃならない壁があって、苦労することでその役になれたので、これからもいただける役を全力でやりたいなと思っています。それから、今は舞台を中心にお仕事をさせていただいて、舞台はとても楽しいですけど、機会があったら映像の仕事もやってみたいなと思っています。
――「こんな役をやってみたい」という役柄はあります?
暗い役はやったことがないので、どうなるかなって興味があります。あと、朗読劇もこの前初めて観たんですけど、とても面白いなぁと思ったので、自分もやってみたいですね。動いてお芝居するのも面白いですけど、声だけでお芝居をするのも楽しそうだなって、興味が湧いたので。
――これまで経験したお芝居とは、またちがったやりがいがありそうですよね。……ちなみに、今気が付いたんですが、田村さんの出演作を見てみると“現代に生きている普通の人間”って、やったことない……ですか?
ないですね! ねずみ、刀剣男士、アニドル……うん、やってないです。ネズミや刀剣男士と比べたら、アニドルは少し人間っぽさもありましたけど、ケモミミや尻尾がついてましたし、最近やったのは修行僧……普通の人、やってみたいです(笑)。
――学園モノとか楽しそうですよね。
おー、やってみたいですねぇ! ドラマとかで観てたので、やっぱり憧れはあります。
――例えばですが、不良っぽい役なんていかがでしょう?
どうかなー、僕、不良じゃなかったんだよな……でも、やってみたいですね! いじめっ子的な感じで、スクールカーストのトップみたいなのは楽しそう。いじわるな役にもトライしたいです。
「毎日湯船に!」こだわりのリラックスタイム
――では話題は変わりまして、お仕事の合間のオフの時間に、楽しみにしていることや、気分転換にしていることはありますか?
オフは基本的に家にいるんですよ。ゲームが好きなので、ゲームをやったり。出かけるにしても、友達とご飯に行くか、映画館や舞台観劇くらいにしか行かない、そんな感じです。でも、夏でも毎日お風呂には浸かって汗をかいてます。
――お風呂に浸かる、それがこだわりなんですね。
もう、お風呂に入んないと気持ちが悪いんです。シャワーだけじゃイヤで「あー、お風呂入りたい」って。パソコンを持ち込んで、動画なんかを見ながら30〜40分平気で入ってます。
――携帯を持ち込むというのはよく聞きますけど、パソコンを持ち込む人ってなかなかいないですよね。水、大丈夫なんですか?
ダメです。
――ダメなんですね(笑)。
タオルに包んで、なるべく濡れないように置いてますね。携帯だと、画面が小さくてイヤなんですよ。それで、稽古動画や映画を観たり、YouTubeを観たりしてます。お風呂って落ち着くから好きなんです。
――大事なリラックスタイムなんですね。料理もプロフィールに特技として挙げられていますが、よくされるんですか?
最近は時間がなくて全然やれてないんですけど、お仕事がない頃はお金もなかったので、よく自炊をしてました。それが結局一番節約にもなりますし。ご飯を炊いて、何かしらおかずを作ったりしていたので、特技……料理かなって。それだけなんですけど。時間があったらまたやりたいです。
――ちなみに得意料理はなんですか?
なんだろう……。餃子って、作ってて楽しいですよね。包みながら、具とかも変えたりして。作っているうちに、予想以上の量ができちゃったりするんですけど。
――餃子パーティとかできそうですよね。
あ、やりたいですね。あとはカレーも好きです。カレーも一度作ったら、しばらく毎日カレーになりますけど、すごく節約になるんですよ。だからよく作ってましたね。
アルバイト時代を支えた反骨精神
――では、「DOMO」がアルバイト求人誌ということと絡めての質問なのですが。これまで経験したアルバイトの中で、印象に残っているものや、今のお仕事に役立っているものはどんなアルバイトですか?
アルバイト、2つしかやったことがないんです。スターバックス コーヒーと、しゃぶしゃぶ屋なんですけど。
――スタバ、いそうですね……! エプロン姿が目に浮かぶようです(笑)。期間はどれくらい続けられていたんですか?
スタバは1年ちょっとやってました。人見知りで、友達以外の人と話すのが苦手だったんですが、そこでお客さんと接するうちに人としゃべることに慣れたかなと思うので、そういう部分では今と少しつながってる気がします。
あと、バイトしてるのが悔しいっていう気持ちもあって。例えばバイトの先輩が、冗談で「お前、いつまでバイト続けてんだよ」みたいなことを言ってきたりしたんですけど、それもけっこう苦しくて悔しかった。それで「絶対バイト辞めてやる!」っていう反骨精神みたいなものは常に燃やせていたので、そういうところも今につながっているのかなとは思います。
――ちなみに、スタバでの業務は何をされていたんでしょうか?
全部やってましたよ。ホールもやったし、ドリンクも作ったし、レジもしてました。
――ドリンクを作っていたとなると、あの呪文のような注文を唱えられたりも……。
あれですよね、トールエキストラホイップ云々っていう(笑)。ちゃんと作ってましたよ。カップにメッセージを書くのは、得意じゃなかったのですが子どもには書いてました。わりと子どもがよく来るお店だったので、けっこう懐かれてたりもしていて。いつも来る親子連れのお客さんで、動物の絵を描いてほしいっていう子がいて、ゾウやライオンだったり、日によってリクエストがちがうんですよ。ある日「ミーアキャット!」って言われたことがあって。
――それは難しいですね!(笑)
ミーアキャット、本当に描けなかったですね。店長に断って一度バックヤードに行って、携帯で調べた画像を見ながら描いてあげたんですけど、それでも上手くいかなくて。その時は「練習しておくから、また来てね」って伝えて、それからミーアキャットをめっちゃ練習して、また別の日に描いてあげました。子どもって素直に喜んでくれるので、その姿を見るのはとても嬉しいし、かわいいなって思います。
――ほっこりするお話ですね。「ちっちゃな英雄(ヒーロー)」は小さなお客さんも多かったと思いますし、そこにもつながったのでしょうか。
確かに!「ちっちゃな英雄(ヒーロー)」はお子さんも観に来る作品だったので、子ども好きとしては出演できたのがすごく嬉しかったし、楽しかったです。
――ぴったりの役だったんですね。アルバイトは、スタバの後にしゃぶしゃぶ屋さんで働かれたのでしょうか?
そうです。しゃぶしゃぶ屋は、お酒のオーダーが大変でした。僕は普段お酒を飲まないので、全然お酒の種類とかが分からなくて、テンパっちゃうんですよ。ビールの注ぎ方も知らなかったから、初めは泡だらけにして叱られたこともありましたし(苦笑)。基本はホールだったんですが、お酒のオーダーからは全て逃げるようにして、フードのオーダーをとって、それを運ぶっていう作業をしてました。
――上手く逃げられましたね(笑)。そこでのバイトで印象に残っていることはありますか?
そこでもお客さんに「君、何やってるの?」みたいなことを聞かれることはあって。そこで役者と答えるのも、まだ何もやれていないし後ろめたさみたいなものを感じたりして、その頃は「いやいや、フリーターですよ」みたいに言ってましたけど、悔しかったですね。いつか胸張って「役者です」って答えられるようになってやろうって思いながら、常に燃えてました。
――「早く辞めてやる!」と。
いざ辞めるとなったら、何だかんだ淋しくもなっちゃって。今でも時々バイト先に行くんですけど、おまけしてくれたり、わりとよくしてくれるんですよね。今も会うバイト仲間もいますし、ここもひとつのホームなのかなって。
――そう思えるようになったのは、頑張れている今があるからこそなんでしょうね。では次に、バイト先で「こんな展開があったらキュンとする」という、憧れのシチュエーションはありますか? 妄想でもかまいません。
うーん。例えばですけど、先輩に何かを教えてもらって。それを別の日までにできるようにしておくんですけど、それを先輩が目にした時に「やるじゃん!」って褒められたりしたら、多分それだけで嬉しいですね。「あ、あざぁす!(照笑)」って、できるように練習して来ました、みたいな。
――けっこう褒められたいタイプなんですね。
ですね。そうやって先輩から褒められたりしたら、それだけでもキュンとしちゃいます。
――ありがとうございます。では最後に、夢に向かって頑張っている読者の方にメッセージをお願いします。
僕は「何かを始めるのに遅すぎることはない」という言葉が好きなんです。自分自身、その言葉を信じてこの世界に入って、自分でいろいろ動いてみるうちに環境も変わってきたので。
僕みたいに「夢があったけど、夢に正直になれなくて、恥ずかしくて言えなかった」っていう人、いると思うんです。夢があっても頑張れないとか、目指すことができないとか、いろいろ理由はあるのかもしれないですけど。夢に向かって頑張っている人は、それを信じてこれからも頑張ってほしいし、まだ夢へのスタートが切れていない人は、スタートを自分の力で切って、挑戦してみてほしいなと思いますね。
僕もまだまだ挑戦している身ですけど、自分を取り囲む環境って本当に変わるんだなって、いろいろ経験を積みながら感じています。だから、心から頑張ってほしいなと思います。
アルバイト時代の苦しかった気持ちを、隠すことなく真っ直ぐに語ってくれた田村さん。そこから自力で環境を変えていった彼の姿は、夢を追う全ての人の背中を押してくれるのではないでしょうか。文字通り、夢にまで見たという「真剣乱舞祭」で、どんな勇姿を見せてくれるのかが楽しみですね。役者への熱い気持ちだけでなく、そんなお茶目なところもある田村さんの、今後の活躍に乞うご期待です!
取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)