
“大正のシャーロック・ホームズ”東堂解が、武道の使い手で優秀な助手・北早翔太と、少々抜けているものの瞬間記憶能力を有する助手・南澤譲とともに、謎めいた事件に挑む推理劇を描いた「大正浪漫探偵譚」シリーズ(通称「ろまたん」)。その3作目となる「大正浪漫探偵譚−六つのマリア像−」が、2018年4月に東京で上演されます。
気になるキャストには、今作で舞台デビューを飾るフレッシャーから、渋みのあるたたずまいが光るベテラン層まで、注目の俳優陣がずらり。過去に、連載中のインタビュー企画「レコメン図」にご登場いただいた面々もいらっしゃいますよ!
今回の記事ではドーモプラス編集部が、稽古開始直前のキャストのみなさん、そして脚本・演出の鈴木茉美さんに、作品の見どころなどをうかがってきました!(スケジュールの都合でいらっしゃらない方もいますが、何卒ご容赦を)
「大正浪漫探偵譚−六つのマリア像−」あらすじ&キャスト
とある屋敷の家政婦が殺された。凶器は屋敷にあった聖母マリアの彫刻。一見ただの強盗殺人かと思われるその事件に疑いを持った佐々木刑事は、部下の伊藤刑事とともに東堂探偵事務所を訪れる。
別の場所では政府関係者が自宅で殺害される事件が発生。凶器は不明であるものの、自宅にあったはずのマリア像が盗まれていた。政府機関の黄島と黒川は、その事件の真相を追って東堂探偵事務所を訪れる。
そして、次々と明かされる事件――それは六つのマリア像の存在によって繋がっていた。新たな敵も現れる中、東堂は北早と南澤、そして彼らを手助けする少年探偵団とともに、複雑に絡み合った事件をどう解き明かすのか!?
鈴木茉美さん(脚本・演出担当)
左から東堂解役 山本芳樹(Studio Life)さん、南澤譲役 木津つばささん、脚本・演出担当 鈴木茉美さん
――今回の作品の見どころは?
鈴木:まずストーリーで言うと“大正時代の探偵モノ”という、今までにない物語を楽しんでいただけたらと思います。少年探偵団や警察官、政府の人間と、いろいろなキャラクターが登場し事件の謎を深くしていきます。そのあたりも見どころでしょうか。様々な畑で活躍している役者さんが揃っていますので、いい化学反応が起こるんじゃないかと思っています。
――東堂探偵事務所の3名が主役ということで、鈴木さんの視点から、それぞれの注目ポイントは?
鈴木:私はシャーロック・ホームズがすごく好きなんですが、このシリーズは「ホームズが大正時代にいたら?」という発想で話を作っているんです。“大正のホームズ”東堂については、推理力や観察力という視野の広さが魅力だと思っているので、そこに注目していただきたいですね。助手の北早は、いつも笑顔を絶やさず、得意なことは家事と武道という東堂の右腕的存在です。彼はそのキャラクター性が魅力だと思いますね。
もう1人の助手である南澤は、ちょっとドジなところがあったりして、時には東堂に迷惑をかけたりもするんですが、“瞬間記憶能力”という一度見たものを画像のように記憶できる能力があるので、その能力を使って東堂の力になっていく部分を見ていただければ。それから、東堂、北早、南澤という3人の組み合わせは、作中でとても重要であり魅力的なので、その関係性にも注目していただきたいです。
――少年探偵団についての要チェックポイントは?
鈴木:少年探偵団の5人には日替わりのアドリブコーナーで、みんなでゲームをしてもらおうと思っています。きっと、みんな弾けてくれると思うので、毎回楽しんでいただけるのではと(笑)。ぜひ何度でも見ていただけたらと思います。
東堂探偵事務所チーム(山本芳樹さん、木津つばささん)
――それぞれの役の見どころと、意気込みを聞かせてください。
山本:前作のシリーズ2作には出演していなかったんですが、東堂はみなさん相当期待を込めてイメージしていただいている役だと思いますので、その期待を裏切らないように努めたいと思います。とにかく魅力たっぷりな役なので、それを出していきたいですね。
木津:南澤譲役は2代に渡って受け継がれてきて、僕で3代目になります。東堂解さんの助手でもあり、新聞記者でもあるんですけど、いい意味で事件の解決のお手伝いをしつつ(その場の空気を)かき乱していけたらと思いますね。オリジナル脚本の舞台もかなり久しぶりというか、ほぼ初めてに近いので、みなさんに受け入れてもらえるよう本当に頑張りたいです。稽古が始まってからでないと分からない部分もあるとは思うんですが、演出家の鈴木さんや、東堂さん役の山本さん、いっしょに助手をやる北早役の横田くんを始め、先輩や大先輩のみなさんといっしょに切磋琢磨して、いい作品を作っていけたらと思います。
――「大正浪漫探偵譚」にちなんで、あなたがロマンを感じるものは?
山本:温泉はこの冬も行きましたね。冬に限らず、夏にも行きます。温泉っていうと冬というイメージがありますけど、逆に気候がいい時期の方が行きやすいんですよね。夏の草津とかけっこういいですよ。まぁ、温泉についてはロマンを感じるというか、ただ単純に好きっていうだけなんですけど(笑)。癒される。年中入りたいですね。ロマンっていうなら「うちに温泉が引けたらいいのに」って思いますね。
木津:僕は声ですね。いろんな人がいて、それぞれの声があって、同じ声をしてる人なんて、世界に1人もいないと思うので。そこにすごく、いろんなロマンを感じます。「自分がこの声だったら、もっとこんな感じにできただろうな」って羨ましさを感じる時もありますけど、そういう意味では、自分の声も自分以外には一生持てないものなんですよね。うん、声にはロマンを感じますね。僕、声フェチなんですよ。
山本:俺も声フェチ。ビジュアルもそうですけど、声って一番最初に入ってくる情報で、ビジュアルより先にこちらへ飛んでくるものだから。そう考えると声って魅力的な部分がありますよね。役者をしているから、声についてはより意識をしているんでしょうけど、結局は“どれだけ自分の声が出せるのか”っていうところに行き着くんだろうなぁと思うんですよ。なかなかそれも難しいとは思うけれども、その人の“本当の声”が出た時に一番(客席へ)届く気がしますね。
――それぞれの役柄にちなんだ質問なんですが、東堂役の山本さんは推理力や観察力に自信があったり、勘がよかったりしますか?
山本:勘はいいと思います! だけどやっぱり、けっこう鈍感だなって思う部分もあるんですよね。最近になって気づいたんですよ、「女心が分からない」とか(笑)。東堂さんは……どっちだろうな。東堂さんも女心は分かんないだろうな。そんなわけでまぁ、いろんな勘はいいほうではあります。あとは、直感を信じるところはありますね。最初に思ったことって、なかなか覆らなかったりして、結局そこに正解があったりするので。直感は大事だと思います。
――南澤は記憶力が優れているということですが、木津さん自身はどうですか?
山本:記憶能力は一番ほしいよ!
木津:記憶能力は僕もほしいです。ファンの子にも言われるくらいに記憶力がなくて、本当に覚えが悪いんですよ。でも、この役と関わることで、もしかしたら瞬間記憶能力がつくかもしれないなって。そうしたら、見たものを一瞬で覚えられるし……まぁほぼないでしょうけど。
山本:まず最初の戦いは、台本を覚えること。台本を覚えた上で、さらにその上を行かなきゃいけないんですけど、スタートはどうしてもそこになるんですよ。
木津:そうなんですよね。僕は記憶能力はよくないほうですけど、人より絶対に頑張るので、努力で絶対(足りない部分を)返してみせます。自分にはないところがある分、自分なりに模索してちゃんと役に近付けていきたいですね。
山本:こうやってつばさくんと会うのは2回目くらいなんですけど、やっぱりだんだん南澤に見えてくるんですよ。キャスティングの妙というか、そのキャラクターにはまっていってるなって思いますよね。
木津:ハードルがすごい……(笑)。嬉しいですけど、その言葉に仇で返さないようにしないと。期待を裏切ることにならないように……。
山本:大丈夫だって(笑)。
少年探偵団チーム(竹中凌平さん、宮崎湧さん、夏目雄大さん、高橋文哉さん)
左からいの(猪俣裕)役 竹中凌平さん、ぴょん(宇佐美登)役 高橋文哉さん、ちゅうた(子津洋平)役 宮崎湧さん、もーちゃん(牛中崇)役 夏目雄大さん
――それぞれの役の見どころと、意気込みを聞かせてください。
竹中:少年探偵団は5人いて、みんなそれぞれにカラーが違います。だけど、5人がひとつになった時にはさらにすごいパワーが発揮されると思うんです。皆さんには、ぜひ、その個々の魅力にも注目して観ていただけると、より楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。
宮崎:今回チームリーダーというポジションをいただいたんですけども。チームでものごとを作る経験は何度かしてきましたが、リーダーというのは初めてなので、みんなを引っ張っていけるよう「メンバーを家族のように思って頑張る」という心構えで臨みたいと思っています。少年探偵団はいい意味でシーンを乱せて、舞台上に動きを付けられるグループだと思うので、そこの強みをしっかりと出していけるように稽古を頑張ります。
夏目:少年探偵団というグループは、いろんな方に期待をされて、東堂探偵事務所とはまたちがった活躍をしているグループだと思うんです。全体でのシーンを乱しながら、少年探偵団だけでのシーンでも輝けるよう、個々のストーリーを確立しながら僕らも頑張っていきたいです。自分が演じる“もーちゃん”についても、台本を読ませていただくうちにつかめてきた役柄の雰囲気があるんですけど、それをもっと明確に発展させて、すてきなキャラクターにしていけたらと思います。
高橋:自分は舞台が初めてで、この作品でデビューさせていただきます。少年探偵団の中でも一番最年少でやらせてもらうので、わんぱくさや、元気さといった、若さで出せる部分を出して頑張っていきたいなと思います。
――「大正浪漫探偵譚」にちなんで、あなたがロマンを感じるものは?
宮崎:自分は廃墟巡りですね。人で賑わっていたところが廃れて、今は音ひとつない空間になっているっていうところに、魅力を感じます。
夏目:僕は自然やあんまり人がいないところに、ノスタルジーみたいなものを感じます。夏には、よく秩父のほうに行ったりするんですけど、電車での景色も楽しんだりと1人で巡ったりして。そういう時にはロマンを感じますね。
高橋:自分はすごく温泉が好きで。
宮崎:え、16歳なのに……。
高橋:おじいちゃん、おばあちゃんも本当に温泉が好きなので、家族でよく行くんですよ。お兄ちゃんも温泉好きなんですけど、いっしょに行っても絶対同じ所には入らなくて、別々に、自分の好きなところに好きなだけ入るっていう感じです。僕は露天風呂が一番好きで、湯船に浸かりながら空を見てる時が気に入ってます。
竹中:ロマンですよねぇ……。うーん、僕は本を読んでいる時にロマンを感じるかもしれないです。ただ、最近は時間が足りなくてそんなに読めていないんですけど、高校生くらいの頃には特に近代文学なんかにちょっとロマンを感じてましたね。そうそう、その頃から今までずっと好きな本は、山田かまちさんっていう画家の画集と詩集が一緒になったような本です。それを見てるととても不思議な気持ちになるんです。そして、作品にもよりますけど、オリジナル脚本の舞台の前には、よく本を読んだりしてますね。
容疑者チーム(栗田学武さん、村川翔一さん、正木航平さん、末野卓磨さん、磯野大さん、天野眞隆さん、舘形比呂一さん)
左から佐々木一役 栗田学武(Allen suwaru)さん、黒川修役 天野眞隆さん、水本雄西役 正木航平さん、西条克幸役 舘形比呂一(THE CONVOY)さん、小西秀人役 末野卓磨さん、西尾昌平役 磯野大さん、伊藤六太役 村川翔一さん
――それぞれの役の見どころと、意気込みを聞かせてください。
栗田:僕は「ろまたん」シリーズへの出演は3作目で、佐々木一役と続投でやらせていただきます。この役といっしょに成長していってるなと思っているので、2年ぶりの役柄ではありますが、どう成長しているのかを楽しみにしていただきたいです。「ろまたん」ファンの方は楽しみ方を分かっていると思いますので、何度でも楽しく観ていただければ嬉しいですね。
村川:自分が演じる伊藤は警察官で、真面目で察しのいい人間ということなので、正義感のある行動がとれるよう、ちゃんと警察官らしく見せられたらいいなと思っています。
正木:僕が演じる水本は、何でも屋をしている兄弟なんですけども。容疑者の1人ということなので「犯人なのか?ちがうのか?」というあやしさを、三谷くん演じる弟といっしょに出していけたらと思います。兄弟ならではの絆みたいなものも、見せていきたいですね。
末野:小西という役は実業家なんですけれども、とにかくムダなことはしたくない性格で「俺の時間をムダに使うな」「またくだらない時間を過ごしてしまった」みたいなことを言う役なんですよ。演じる上ではそういうクールな感じを出せたらいいなと。お客様にも「何だあいつ、イヤなヤツだな」ってところと、「ちょっとカッコいいな」ってところが見せられたらいいなと思ってます。
磯野:今回、西尾という政治家の息子役をやらせていただくんですが、容疑者が14人もいるということなので、これからどう作り上げていくのかワクワクしています。政治家の息子ということもあって、西尾は僕自身とは性格が真逆な感じなんです。そこもどうやって作り込んでいくかも考えながら、4月にはお客さんに楽しんでもらえるよう、これから頑張っていきたいと思います。……これで大丈夫そうかな?
天野:どうしてこっち見るんですか!(笑) 今回、黒川という政府の人間の後輩のほうの役をやらせていだきます。自分の性格と真反対の役柄で、真面目で言葉遣いがすごく丁寧という、普段とのギャップは見せられるのかなと思います。あとは、先輩後輩の関係性がどうなっていくのか、そういうところも楽しみにしていただけたら嬉しいです。
舘形:西条という画家の役をやります。芸術に関してストイックというか、興奮気味な演技をするということなので、エキセントリックであり、人を寄せ付けないところのある役柄なんだと思っています。まぁ、僕は根は心優しいんですけど(笑)、心を鬼にして、負けないように頑張っていきたいと思います。
――「大正浪漫探偵譚」にちなんで、あなたがロマンを感じるものは?
村川:ロマンを感じるもの……あぁ! 僕、個人として、映画やドラマが好きなので、そういうストーリーのあるものはロマンを感じると思っております。以上です!
正木:そうですねぇ。僕の人生は野球だと思ってるので。プレイしてる時もドラマがあるし、観ている人にとってもドラマがあるなと感じるんですよ。僕にとっては、ロマンというと野球ですね。
天野:僕、ディズニーがすごく好きなんですよ。やっぱり夢があると思うんです。日常生活にはないものとか、キラキラしたもの、夢とか勇気とか希望、そういうものが全部詰まってるのがディズニーなので。だからディズニーにロマンを感じます。
磯野:何だろう。タルタルソースですかね。
一同:(爆笑)
栗田:もう、やめてよー!(笑)
磯野:タルタルソースってすごく奥が深いんですよ! ベースはやっぱりタルタルソースなんですけど、その中に入れる具材の切り方とかで、食感も変わると思うんです。僕はタルタルソースがあれば生きていける人間なんです、本当に好きなので。
栗田:ソースメインなの?
磯野:ソースメインだよ。ずっとチキン南蛮が好きだと思っていたんですけど、好きなのはソースのほうでしたね。自分で作ってみると「切り方はこうしたほうがいいんだな」とかって、永遠に追究できるところにロマンを感じますね。食感がしっかりしてたほうがいいのかなとか、玉子も白身が多いほうがより淡白に食えるのかなとか。何がベストなのかはまだ分かってないんですけど、それを追求するのがロマンかなって。
栗田:この後に言うのもっていう感じなんですど(笑)。僕は劇団に所属しているんですけど、メンバーが役者と脚本演出を入れて4人なんですよ。本当に毎日いっしょにいて、ご飯も毎日いっしょに食べていて。赤の他人だった人たちが、ずっといっしょにいることによって家族みたいになって、ひとつの作品を作るためみんなで一生懸命になる。それがすごくロマンだなって思いますね。
末野:役者っていう仕事にロマンを感じてますね。僕が役者をやってるということで、3歳の姪っ子が「お兄ちゃん、これやってる」って誰かに自慢をしてくれたり、たまたまロケで行った先の和歌山で、地元の方と仲良くなったんですけど、僕が「これに出るよ」って言うたびに「絶対観る」って言ってくれて。そういう方たちが楽しめる時間を与えられるような人間に、自分がどれだけなれるかだと思うんですよ。あとは、舞台っていう世界を知らない人たちが、映像で僕を知ってくれたのをきっかけに、舞台を観てくれるようになったらいいなと思います。そうやって舞台の世界を広げられる人間になりたいですね。
舘形:僕はTHE CONVOYっていうグループにいて、かれこれ30年くらいメンバーといっしょに活動していますけれども。平均年齢も50を過ぎて、リーダーは還暦を迎えるっていう状況なんです。昨日も写真撮りがあってみんなで顔を合わせたんですけど、ここまで年齢を重ねてきて、エンターテインメントの舞台などで共に時間を過ごしてくると、ほぼ家族のようなものなんですよね。いいところも、悪いところも、知り尽くしている付き合いで。
でも、改めて振り返って見ると、これだけ長い年月、同じメンバーと向き合って世界作りをやってこれたということが、何だかとてもすてきなことなのかなって、思う瞬間があるんですよ。色んなこともありますけど、このメンバーと出会えたことや、今でもこうして老体に鞭打って(笑)舞台で汗を流しているお互いの姿を見続けていられるっていうことが、もしかしたらロマンなのかなって。。。。。
いかがでしたか? 個性豊かな俳優陣が彩るあやしげな大正浪漫の世界、どんな作品になるのかとても楽しみですね。取材中もしばしば笑いが巻き起こっていたので、シリアスな推理シーンと、コミカルなシーンの対比も鮮やかに決まりそう。気になった方はぜひ劇場に足を運んでみては。
取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)
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