「パントマイム」って、ご存知ですか? 大道芸で観たことがあると、お答えになる方が多いのではないでしょうか。しかしパントマイムは、もっと身近なもので、私たちは知らず知らずのうち、日常的に使っていることにお気付きでしょうか。

外出時、顔に水滴を感じたら思わず手の平を空にかざしてみるでしょう。その仕草を他の人が見たら、「あら、雨が降ってきたの?」と思うかもしれません。

仕草ひとつで何かを表現する、それが「パントマイム」なのです。

静岡のパントマイム集団、「異~空間」



今回、静岡でパントマイムを勉強中の「異~空間」さんに取材をさせていただきました。

静岡の大道芸人あまる氏のパートナー、パントマイミストのHICkeeさんが主宰する、異~空間の公演は、今年で7回目を迎えています。


HICkeeさんの「おばあさん」と「動物」の演技は絶品で、今年の出し物「おばぁと卵」も大絶賛。客席が終始笑いで溢れていました。

異~空間メンバーが、自分で見つけたそれぞれの居場所



取材に伺うと、本番を明日に控えた最終稽古の真っ最中でした。

彼らのパントマイムは、それそれが自分で台本を書き、監修の山田とうし氏と共に演出を練りながら作り上げるオリジナル作品。その日の稽古は、出来上がった各自のパントマイムを、最終チェックで山田氏に指導を仰ぐという感じでした。

パントマイムはすべてを身体で表現するので、普通のお芝居のように感情や言葉の意味をセリフに託すことが出来ない、イマジネーションとの勝負です。共感してもらうためには、観客に理解してもらう演技であることが重要なのです。

今、目の前にあるはずのないものを見えるように感じさせる、それが、パントマイム。

コップ一杯の水を飲む、という動作でも人それぞれ演じ方が違うように、観客も同じ目線で見ているとは限りません。より多くの人に伝わるためには、どうしたらいいのかを考えて演じて、指導を受けて、また考えて、演じる。その繰り返し。何度も、何度も。

この表現の仕方でいいのか、もっと伝わる表現が他にあるのではないか。表現に限界はなく、果てしなく続く自分との闘いの中で、投げ出しそうなってもまた考えて、演じる。表現者には、常に自分と闘い続ける熱意が必要なのかもしれません。

その中で自分の個性を確立し、メンバーたちはそれぞれ自分の居場所を、舞台の上に作り上げていくのです。

パントマイムに情熱を傾ける、山田とうし氏の魅力



この公演の監修をされている山田とうし氏は、東京で活躍されているパントマイミスト。ソロでのパントマイム公演や講師をする傍ら、パントマイムスタジオ「新空間」を手掛けています。HICkeeさんは東京在住時代からの、山田氏の愛弟子なのです。

異~空間メンバーが演じているのをじっと客席で見ていた山田氏が、指導のために舞台に立つと、空気がピリッと引き締まるようなその空間だけ色が違うような、そんな錯覚を覚えるほど佇まいからオーラを感じます。

山田氏は、もともと演劇の世界に居た方でした。ある時ふと「セリフ」が演技を狭めている、窮屈だと感じたそうです。もっと自由に演じるためには、セリフじゃなく身体だけで感情を表現するパントマイムの方が自分には合っている気がすると、パントマイムの世界に入ったとおっしゃいます。

まず最初に感情があって、身体の動作でそれを追いかける。そこに「セリフ」は必要ない。観ている人たちそれぞれに感じてもらえれば、それでいい。

山田氏は、もっと自由に、ありったけの情熱を注いで、感情を表現したかったのです。

彼のイマジネーションは、日常のあらゆることに及びます。リンゴをかじろうとしたら虫食いがあった。そんな状況から、宇宙にまで広がる荒唐無稽な想像を働かせます。彼のすべては、パントマイムを作る情熱に繋がる。発想の豊かさで、もっと自由に生き生きと、独自のパントマイムの世界を広げていくのです。

表現に終わりはない、次は来年の構想へ



7回目の公演「はじまりの夏」を終えて、異~空間メンバーが思うことは何なのでしょうか。彼らに話を聞くと、心はすでに来年の夏へ向いているようでした。





「次はもっとコメディ要素の強いもので人を笑わせてみたい」

思うように表現し切れなかった反省も挟みつつ、表現をもっと高みへと引き上げようとする意欲が言葉の端々から溢れます。

山田とうし氏のパントマイムの情熱は、しっかりと受け継がれているようです。



「パントマイム」っておもしろそうと思われた方は、時々あそVIVA!劇場で公演が行なわれる場合もあるので、HPで「公演案内」をご確認ください。

日常生活の中に埋もれてしまっているあらゆることが、パントマイムを通して新鮮に見えてくるかもしれませんよ。



『山田とうし氏 ソロパントマイム公演』
2017年9月15日(金)千葉 美浜文化ホール
詳細はコチラ


<ライター>

猫たぬき
時に、舞台の脚本を書くシナリオライター。趣味、主婦業。静岡に住み始めて十年以上経つのに未だ関西弁が抜けない生粋の関西人。いつまでも新鮮な目で静岡を見つめ、楽しくおもしろい記事を綴っていきたいと思います。

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