カフェというのは、新聞や雑誌を読みながら、静かにゆっくりとお茶を楽しむところ。もしくは、恋人同士、友達同士がコーヒーなどを飲みながら、楽しく語り合うところです。しかし、静岡のとあるカフェでは、なぜか朗読会が行なわれているとのこと。「カフェで朗読?」と驚くなかれ。今、なぜかカフェで朗読会が流行っているのです。今回は「よんでみるかい」という朗読会を月に一度開催している、cafe' Pianoさんにお邪魔してお話を聞いてきました。


「よんでみるかい」主催者は、言葉遊びゲームの達人



「よんでみるかい」は、平日夜、学校や会社が終わってから集まるので、始まるまでの時間は、お茶やジュースを飲んだりお菓子を食べたり、名物のハヤシライスを注文したりと、cafe' Pianoさんの居心地の良さなのか、まるで自宅の居間で過ごすように、皆さんまったりと寛いでいました。

「よんでみるかいって、参加者が順番に本を朗読する会ですか?」と伺うと、会の主催者であり、静岡で舞台の役者さんをされている滝浪さんが、「いや、最初はまず発声練習とか、一文字(一文)作文とか、シャッフル俳句などをするよ」と、説明してくださいました。

「一文字作文」とは、滝浪さん考案の言葉ゲームで、テーマを決めて、一人1語ずつ言って繋いでいき、文章にするのだとか。例えば、テーマを「桜」として、最初の人が「は」と言うとする。次が「る」と言えば、次々に「に」「さ」「く」「ぴ」「ん」「く」「の」「は」「な」と繋いだら、「春に咲くピンクの花」となり、桜を表現する言葉になる。みんなが同じ発想だったら上手く繋ぐことが出来るが、とんでもない繋ぎになって文章にならなかったり、意味不明だったりすることもあるそうです。

「一文作文」は、1語じゃなく、1文章でする応用編です。「シャッフル俳句」も同じ要領で、「桜」をテーマに5、7、5文字に分けて俳句を詠んで、三枚の紙に分けて書く。その紙をバラバラにシャッフルして皆でトランプのように引き、まったく別の5、7、5文字で繋いだ俳句を詠む。文章として無理があったとしても、それでも何とか意味を考え、上手く俳句として成立させようとするところに、言葉遊びの面白さがある。そうやって言葉で遊びながら、自然に声を出せるようにして、自分の中にある「構え」を取り除いてから本を読んでみる、という環境を作りたいと話してくれた、滝浪さん。

幼い頃、母親に枕元で絵本を読んでもらった記憶はあれど、自分が大人になって、子供に読み聞かせるのではなく、人前で本を朗読するのは、ほとんどの人が体験しないこと。それをあえてやる、というのは、どんな意図があるのでしょうか。

「ダメ出し」ではなく、「良い出し」をする、よんでみるかい



「よんでみるかい」で個人が読むものには、さまざまなジャンルがあります。小説、詩、絵本、マンガ、紙芝居。変わったものでは、料理のレシピに、通信販売の広告、薬の処方箋まで。「何でそんなものを読む必要があるの?」とお思いでしょうが、この「よんでみるかい」では、「人前で読む」ということに意味があるのです。

今の時代、人前で失敗したくない、笑われたくない、恥をかきたくない。皆、そう思って生きているのではないでしょうか? しかし、もし授業中、先生に教科書の本読みに指名されたら? 会社の会議中に意見を求められたら? バイト先でお客様に商品の説明を求められたら? スラスラ読まなきゃ、ハキハキと発言しなきゃ、上手に説明しなきゃと焦るあまり、したくない失敗をしてしまうかもしれません。

もし「よんでみるかい」に参加していたら、人前で読む、発言するときの緊張は軽減するはずです。なぜなら、「よんでみるかい」では、上手に読めなくても、言葉を間違えたり、つっかえたりしても、誰もダメ出しをしないからです。人の読んでいるのを聞きながら、相手の良いところを探す、「良い出し」をするのです。
「あなたの声はキレイで聞き取りやすいね」「感情を込めるのが上手いね」そんな風に褒められたら、誰だって、嫌な気はしませんよね。何でも最初から上手に出来るはずがない。まずは「やってみる」ことが大事。だからこその「よんでみるかい?」なのです。

「春なのに…」という名のユニット公演



café Pianoさんでは、滝浪さん主催で、毎年3月に「春なのに…」という名のユニット芝居公演があります。
お芝居あり、落語あり、講談あり、音楽あり。もちろん、「よんでみるかい」メンバーの朗読ありです。「春なのに…」という舞台は、「人前で「何か」を表現する」という試みを公演という形にしたものです。

取材にお邪魔した時は、いつものように本を朗読するのではなく、ユニット公演で発表するため、特別に書いた脚本を皆さんで読んでいました。「よんでみるかい」のメンバーの中から4人が、「カンタと3人の奇妙な家庭教師」という題で「起」「承」「転」「結」を、それぞれ違う人が書いて繋いだ物語です。一文字作文の応用ですね。さてさて、どんな物語になったのでしょうか?

「春なのに…2017 ~にっこり五目春巻き~」は、3月18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)の、昼の部14時からと、夜の部18時からです。(昼の部14時からは、19日と20日のみ)客席に限りがありますので、まずは予約をされるのがベターです。詳細等は、café Pianoさん、もしくは、春なのにHPから滝浪さんへ直接お問い合わせください。

【よんでみるかい】
ホームページ:http://www12.plala.or.jp/m-taki/yonde.html



【春なのに…2017~にっこり五目春巻き~】
ホームページ:http://www12.plala.or.jp/m-taki/haru2017.html



【café Piano】
ホームページ:http://www.geocities.jp/cafe_piano88/



<ライター>

猫たぬき
時に、舞台の脚本を書くシナリオライター。趣味、主婦業。静岡に住み始めて十年以上経つのに未だ関西弁が抜けない生粋の関西人。いつまでも新鮮な目で静岡を見つめ、楽しくおもしろい記事を綴っていきたいと思います。

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