「クラウン」という存在を知っていますか?クラウンとは、赤鼻に派手な衣装とメイク、コミカルに動き回る道化師のことです。「ピエロのこと?」と思う方が多いでしょうが、クラウンとは、ピエロを含めた道化の総称です。今回は、皆さんが知ってるようで知らない、クラウンについてご紹介します。


クラウンって何?



クラウンとは、お祭りやイベント会場でジャグリングを披露して子供たちと遊んだり、時に細長い風船を膨らませ、あっという間に犬や花に作り変えてみせたり、マジックなどで観客を楽しませてくれる人たちのことです。

クラウンには様々な種類があり、涙のメイクがあるピエロ、顔全体を白く塗るのはホワイトフェイス、その他、独自のメイクでキャラクターを表現します。静岡では秋に大道芸ワールドカップが開催されますが、そのボランティアスタッフに「市民クラウン」というものがあります。

市民クラウンになるためには、まず大道芸カレッジという合宿に参加してクラウンの基礎を学び、ワールドカップでは、「おもてなしをする係」として会場を賑やかに闊歩します。


「くらうんのわッ」の皆さん



「くらうんのわッ」は、市民クラウン出身の人たちで立ち上げたクラウンサークルです。今回は、とある施設でパフォーマンスを披露する「くらうんのわッ」の皆さんに、取材させていただきました。

クラウンになった理由はそれぞれですが、「何か楽しいことがしたかったから」と陽気に明るく答えてくれたのは、メンバーの「モッピーさん」と「てんてんさん」。

それから、「黒猫さん」は、変身願望。メイクや衣装で、普段の自分とは違う自分になれる、そんな気持ちもクラウンの中にはあるのかもしれません。友人に誘われてジャグリングを始め、何となくの流れで市民クラウンになったと話すのは、「ようぺさん」。彼の掴みどころのないキャラクターそのままです。

「はなうたさん」と「カーンさん」は、静岡の劇団、らせん劇場の役者さん。はなうたさんは元々児童劇が好きで、子供と一緒に遊びたいと思ってクラウンになった初志貫徹の人。カーンさんは、そんなはなうたさんに出逢って人生を狂わされてしまったと嘆いていましたが、こんな楽しいことでなら、文句はないかもしれませんよね。

クラウン暦20年以上という方が多い中で、「レインボウさん」はクラウン暦10年。まだまだ若手だとお思いでしょうか? とんでもない。何とレインボウさんは、還暦クラウンデビュー! クラウン暦は短くとも、人生の大先輩なのです。そんなレインボウさんに、「クラウンの役割って何だと思いますか?」と質問したところ、返ってきた答えが、とても素敵でした。

クラウンの世界には、『オールフォーユー、イッツマイプレジャー』という言葉があると。
直訳すると、『すべてあなたのために、それが私の喜び』と、なります。


心は素顔のままで



人はひとりじゃ生きられない。生まれてから死ぬまでの間、一体、どれだけの人と出逢えるでしょうか。友人や人生の伴侶だけでなく、ふとした瞬間、一瞬の関わりも出逢いのひとつです。

派手な衣装にメイク、赤鼻のクラウンに扮していても、心は素顔のまま。ただひたすらに「あなたを笑顔にしたい」という素直な想いで人と向き合うとき、相手が返してくれる笑顔は、クラウンにとって最高の喜びなのだと教えてくれました。

人と人が出逢う時、自分と相手は合わせ鏡。自分が笑えば、相手も笑う。ピエロの顔に涙のメイクがあるのは、悲しいことがあったから。それでも、辛いこと悲しいことを飲み込んで笑うから、周りに笑顔が溢れるのです。


大道芸人としてショーを魅せるクラウン



おもてなしを得意とするクラウンもいれば、ジャグリングやバルーン、パントマイムを駆使して、コント仕立ての寸劇をショーとして魅せるクラウンもいます。

「ノン&モンモン」、彼らも市民クラウンを経てコンビを組んで6年。今は、様々なイベント会場でショーを披露しています。人が生活している中で、考えていること、思っていること、それを大げさに表現してみる。

「あ、わかる」「あるある」という共感を自分に投影して、嫌なことも、ユーモアや笑いに変えて昇華させる存在でありたいと話す、モンモンさん。人とのコミュニケーション能力を高めたくてクラウンになったけれど、やればやるほど、クラウンの奥深さに気付くと教えてくれました。


まとめ


どんな引っ込み思案な人も、きっと心の中ではおしゃべりなはず。クラウンを見て思わず笑顔になってしまうのは、彼らが、自分の心の中にある感情をユーモラスに体現してくれる存在だからです。

「オールフォーユー、イッツマイプレジャー」
この言葉は、クラウンだけでなく、誰にでも当てはまるとても美しい言葉だと思います。たまには笑顔をもらうばかりでなく、こちらから笑いかけてみませんか?


【取材協力】
「くらうんのわッ」

<ライター>

猫たぬき
時に、舞台の脚本を書くシナリオライター。趣味、主婦業。静岡に住み始めて十年以上経つのに未だ関西弁が抜けない生粋の関西人。いつまでも新鮮な目で静岡を見つめ、楽しくおもしろい記事を綴っていきたいと思います。

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