今回インタビューした伊藤さんは、2020年、藤枝市にはかりうりの店 toi tou(トイ トウ)をオープンさせた店主さん。


〝はかりうり〟への思いや、開業するまでのストーリー、そしてこれからのことまでお聞きしました。



カラダにも、環境にもうれしい、オーガニックのはかりうり。



藤枝市の蓮華寺池公園から脇道を一本入ったところにある古民家「nicica(ニシカ)」。

複合店舗の一角に伊藤さんのお店「はかりうりtoi tou」があります。


並べられたガラス瓶に入っているのは、ドライフルーツ、チョコレート、ナッツ、香辛料、パスタ。

それから、パンやオリーブオイル、石鹸などもすべてはかりうり。

お客さんが必要な分だけ買っていきます。


必要な分だけを買うと、
・食品ロスを出さない
・パッケージなどプラスチック製のゴミを出さない

と環境的にもいいことばかり。


また、少量ずつ買えるので、お試し購入にも便利です。

さらに、自分で必要な量を考えるという行動を伴うことで、コミュニケーションが生まれやすいというメリットもあります。


「10gってどれくらい?」「どんな味?」「どんな料理にあうの?」

ひとつの商品から、会話が広がり、人と人をつなげていきます。


子供たちがお小遣いの300円分を「何にどれくらい使えるか」お金の価値を学ぶきっかけにもなっているそうです。


ただ物を売り買いする場所ではなく、みんなが居心地のいい場所をつくりたいという伊藤さんの思いにあふれたお店です。



前職ではバイトから店長、正社員に。でも、知人からの言葉にハッとして。



伊藤さんがどうしてはかりうりの店を開くことになったのか、そのいきさつも気になります。


学生時代は東京で美術を学んでいた伊藤さん、卒業後デザイン事務所で働いていましたが、家族の事情で静岡に帰郷することに。


静岡では、オーガニック専門店でアルバイト。

全国展開しているし、確かなものを売っているステキなお店だけれど、働くとなると覚えることばかり。


オーナーは他店舗にいたために、伊藤さんの働く店は先輩アルバイトと伊藤さんの2人だけでした。


「すべてバイトの2人でまわしていました。イベントの企画、ディスプレイのアイデア、贈答の`のし`を書くのもはじめて。

とまどうことは多かったけれど、知らないことを知っていくことは楽しくもありました。

任せてくれる働き方のスタイルが自分にはあっていたのだと思います」。


勤め続けて、やがてアルバイトで店長に。

さらに、正社員に昇格。本社からも頼られるようになり居心地は悪くありませんが、任されることが多くとにかく忙しい日々でした。


はたからから見たら順調に昇進していると思われていた伊藤さんが、
自分のお店をもつという転機を迎えたのは、知人からの唐突な質問がきっかけでした。



「やりたいことってなんだろう」を突き詰めたら、「はかりうり」の店に!



「店長の責任とか店のこととか、全部取っ払って考えたとして、何をやりたい?」


目の前のことにまっしぐらに向き合う日々の中で、「本当にやりたいことって何?」という知人の問いかけは、衝撃的。


「その時ふってきたのが、“はかりうり”というワード」と、伊藤さんは満面の笑みで、天を指差して答えてくれました。


思いついたこの言葉にとてつもなくワクワクしてしまったそうです。


こうして、伊藤さんの心に蒔かれた“はかりうり”という種が芽吹き、じわじわと育っていきました。


とはいえ、日々の仕事に追われ、なかなか実現できないのが現実。気を紛らわせるために、はかりうりのメリットや店のレイアウトなどを盛り込んだ提案資料をつくり、理想の店舗像をアップデートする作業を続けていました。



ここでお店をやりたい!この壁、この柱、出会った古民家に一目惚れ。



思い立ってからオープンまで、大げさに紹介すると構想10年。

いろんなタイミングが重なり、出会ったのがリノベーションを予定していた古民家。
現在お店を開いているこの場所です。


ここで!この壁のところではかりうりをしたい!と、伊藤さんは一気に動き出します。

この時、つくりためていた資料が威力を発揮、大家さんや運営団体を納得させることに成功。


伊藤さんの本気が伝わり、いよいよ実現へ。

勤めていた会社も、なんとか引き継ぎを終え退社となりました。



私の考えに時代が追いついてきた(笑)。なんてね。



前職のツテには頼らず、新たにすべての仕入先を開拓。


食料をいれるビンは新調しましたが、他の備品は譲り受けたり、すでに集めていたりしたもの。

開店資金はそれほどかからなかったそうです。


「はかりうりを喜んでくれる人が多く、やっと時代が追いついてきた感がありますね。
自分で買いたい物を考え、その量を考える。いくつもの決定を迫られる買い物だから、暮らしも能動的になります。
食べてオーガニックの良さがわかると、生産者の技術や思いに賛同し、その価値にお金も出してくれる、そういう仲間が増えることがうれしいですね」。


伊藤さんの心に蒔かれたはかりうりの種は、いろんなカタチで広がりはじめています。


「ひとりだからできることも多いです。興味があること、思いついたことをやりやすくなりました」。


新たにヴィーガンランチを始め、今後はデザインの仕事も計画中。

お店のロゴや店内POP、商品案内のデザインも自作。


「デザインの依頼を受けるようになり、うれしい反面自分のつくったものに値段をつけることが難しい。それが今後の課題です」。



今まで経験してきたことは一つも無駄になっていません。



“働くこと”についてもお聞きしました。


「目の前の仕事にきちんと向き合うことが大切だなと考えています。それが少し不得意な仕事でも、まずはやってみる」。


正社員だったときにも、組織の仕組みや上司と部下の間での振る舞い方も学べ、良い経験となっているそうです。


働き方を悩んでいる人には、
「どうしても、できないことにフォーカスをあてがち。そうすると働くことがつらくなってしまう。
得意なことをよろこんでもらえると、働く楽しさが発見できます」。


「自分が当たり前と思っていることもやってもらってうれしいという人が案外多いことにも気づきました。
自分という資源をいかせる方法はまだあるかもしれない、そう考えるとワクワクしますよね。
思い描いていたはかりうりの店も実現できたことは、私の大きな自信になっています。」と満面の笑顔です。


働くって、誰かにはたらきかけていくことでもあるんじゃないかな。
うちの店に来たことで、はかりうりの良さや、オーガニックの価値を別の誰かに伝えて広がっていく。
そういうはたらきかけのできる場所でありたいですね」。


もともと、大企業や、正社員という枠には興味がなかったという伊藤さん。
自分を枠にはめなくてもいいんだよ、と心強い言葉で締めくくってくれました。

2022年9月22日公開



はかりうり toi tou

藤枝市藤枝5-5-23 (nicica内)

open 11:00~18:00

木・金・土・日

tel 090 4406 5358

はかりうり toi tou
 

蓮華寺池公園近くのはかりうりのお店。オーガニックのものを中心にカラダにやさしいものを販売。買い物には、器を持っていくことをおすすめします。スープとパン、選べる惣菜2種のヴィーガンランチもスタート(11:30〜)。古民家をリノベした複合店舗にはカフェやイベントスペースもあり、蓮華寺池公園の散歩のついでにふらりと立ち寄りたくなるお店です。




<執筆>

DOMO+編集部

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