アスリートがより良いパフォーマンスを発揮するために、食の面からサポートするアスリートフードマイスター。

今回インタビューした加藤扶美さん(静岡市在住)は、小学校教師から思い切ってその世界に転身し、充実した毎日を送っています。


50歳でキャリアチェンジを決意した思いやそのプロセス、勤め先の藤枝市「くるみキッチンプラス+」のこと、仕事のやりがいなどをお伺いしました。



未知へのチャレンジは、息子たちの応援から始まった



加藤さんには2人の息子さんがいます。

どちらもサッカーの名門・藤枝東高校のサッカー部に入部し、長男は高校卒業後も大学でサッカーを続け今は社会人。

高校1年生の次男は現役のサッカー部員です。(2022年8月現在)


「親が部活のサポートをできるのは送り迎えくらい」。
 

今から5~6年ほど前、小学校で教師をしながら長男のサッカーを応援していた加藤さんは、子どもの成長を嬉しく思う反面、サポートできることが限られてどこかもどかしさを感じていました。

そんな時、アスリートフードマイスターという資格のことを知ります。

「体作りに合わせた栄養摂取や試合前・試合後の食事など、食事面なら息子たちの役に立てるかもしれない。ビビッときたんです!」と加藤さん。

さっそくアスリートフードマイスター取得のための講座を受け、3級を取得します。

そこから、知れば知るほど奥が深い「スポーツと食」の世界にのめり込んでいったそうです。


「もう少し本格的に勉強したい」と思っていたところ、隣町の藤枝にスポーツ栄養士の中野ヤスコさんという、その道の第一人者がいることを知ります。

「すぐ、彼女に会いに行きました。当時、伸び悩んでいた長男の相談をしてみたんです」。

加藤さんが考案していた食事メニューを、中野さんの手ほどきによって改善したところ、長男はみるみるサッカーの調子を上げたそうです。


「ちょっとしたことで、本当に変わったんです!息子も“体のキレがよくなった”と喜んでいました」と加藤さん。

成果が目に見えるプロの仕事に感銘を受け、一念発起で中野さんが主宰する「くるみキッチン(現・くるみキッチンプラス)」の門を叩きます。
 

その時、加藤さんは50歳。

安定した公務員からの転身ということもあって周囲から反対の声もありましたが、背中を押してくれる人がたくさん!迷うことなく新しい世界に飛び込みました。



実は料理が得意ではなかった私。最初は半泣きでした(笑)



第二の人生を歩み始めた加藤さんですが、その道のりは決して順風満帆とはいきませんでした。


「実は私、あんまり料理が得意じゃなかったんです。できればやりたくない派(笑)」。

未経験からプロの調理技術を身に付け、同時に栄養やスポーツに関する専門知識を学んでいくことは、なかなか大変なことでした。


「うまくいかないことばかりで、最初の半年は泣きながら通ったこともありました」という加藤さんですが、情熱的に仕事と向き合い、修業期間を乗り越えました。

2年の修業期間を経て調理師免許を取得、同時期にアスリートフードマイスター1級の資格も取得しています。


くるみキッチンプラスでの仕事は主に調理担当。

水曜日~日曜日の5日間、筋力アップやリカバリーに効くメニューや、グルテンフリーメニューなど、栄養バランスに優れたさまざまな料理を作っています。


特に忙しいのは毎週金曜日。

次男も所属している藤枝東高校サッカー部のお弁当を作っているのですが、その数はおよそ100個!



少人数で作っているため、早朝3時30分起きの時もあるそうです。

(ちなみに写真のボリューミーなお弁当は、藤枝東高サッカー部員が食べる「エネルギーチャージ弁当」。エネルギー消費が激しいため、胚芽米だけで毎食500ℊ以上食べているそう!)



コロナ禍で変わった選手との関わり方


実はそのお弁当は、コロナ後にテイクアウトメニューとして始まったもの。


2017年に藤枝東高サッカー部の指導者から相談を受け、2018年からチーム全体として取り組む「食トレプロジェクト」がスタートしました。


当時は、水・木・金曜日に3チームに分かれて選手たちが店を訪れ、食堂でわいわい夕飯を食べながら、加藤さんや中野さんがアスリートに必要な食事や栄養についてレクチャーしていました。


しかし、ここ2年間はまともにできていないといいます。(写真は、コロナ禍前の食トレ風景)



「食トレ」のほか、身体組成測定や簡易貧血チェックなども行ってきましたが、その機会も2か月に1回程度。選手に会う機会はかなり減ったそうです。


「私はご飯を食べにきたアスリートが気軽に相談してくれる食堂のおばちゃん(笑)を目指していたので、選手と会いづらくなりとても残念」という加藤さん。


現在もLINEやSNSを通じて、お弁当の栄養価を説明したり、選手やその保護者の方から食に関する相談を受けたりしていますが、「直接対話して悩みや体調のことを聞き出だすことが大切ですし、楽しい時間なんです」といいます。


アスリートにとってやりきれないことも多いコロナ禍が早く落ち着き、食堂が彼らの笑顔であふれることを願っています。



選んでよかった!アスリートフードマイスターの道



「藤枝東の選手は試合の後半になっても足がつらなくなった」「スタミナがついた」。


最近、加藤さんは周りからそんな声を聞くようになったそうです。

「筋肉の動きとミネラルは深く関わっています。

選手たちにミネラルが豊富な野菜、海藻、キノコを食べなさい!と、口酸っぱく言ってきましたが、効果が出ているのかもしれません。嬉しいですね」


また、「くるみキッチンプラスのお弁当を食べると調子がいい」と、試合がある度にお弁当を注文してくれる中学陸上選手もいるそうです。

試合後「お弁当のおかげで東海大会出場が決まったよ!」そんな嬉しい報告をしてくれたこともあったそうです。


転職から4年が経ち、地道に積み重ねてきた努力が実を結び始めた加藤さん。

活躍のフィールドは、さらに広がっています。
 

「1年ほど前から、女子大学生フィギュアスケート選手の個人サポートをしています。私にとっては新たな挑戦で、大きな学びの機会になっています。

さらに、藤枝市から料理教室の依頼あり、今年5月から地区交流センターで、生涯学習講座としての料理教室を開いています。料理が苦手だった私が、まさか教える側になるなんて(笑)」


加藤さんは振り返ります。

「教師とアスリートフードマイスターの仕事は別物だと考えていましたが、実は根底でつながっているんじゃないか、そう思うようになりました。

教師時代は子ども自身に気づかせる教育を大切にしていましたが、今も、食を通じて“自分がどうなりたいのか”考えることができるアスリートを育てたい。やりたいことは同じで、子どもやアスリートに寄り添っていたいんだなって」


今後はもっと、いろいろな団体やチームのアスリートとつながって、食や健康の大切さを伝えていきたいという加藤さん。


思い切って飛び込んだ転職先は、分岐点ではなく、「やりたいこと」の延長線として、真っすぐにつながっていたのかもしれません。




加藤さんから新しいことを始めたい方へアドバイス


「転職してから、もちろん壁にぶち当たりましたし、慣れない環境で辛いこともありました。

でも、思い続けて勉強していると、いつも助けてくれる人がいたり、不思議なもので、自分のやりたい仕事が、向こうから近寄ってくるんです。

思い続けることって大事ですね。


主婦であり教師であった私は50歳から再スタートしましたが、何かを始めることに年齢は関係ないし、やり直しは必ず利きます。

ワクワクすることが見つかればそれはチャンスです。まずは始めてみましょう!」



2022年8月30日公開





くるみキッチンプラス+

藤枝市青木1-21-12 フジエダオガワホテル1F

open 7:30~15:00

定休日/月・火曜日&第1日曜日

tel&fax 054-646-4397

くるみキッチンプラス+
 

管理栄養士・公認スポーツ栄養士の中野ヤスコさんをはじめ、調理師、アスリートフードマイスター等の有資格スタッフが、お客様それぞれの「からだづくり」の情報とお食事を、地域食材とともにおいしくたのしく提供しています。大豆ミート、鹿肉、焼津小川サバなどの人気食材、フレッシュ野菜や果物だけでつくるスムージーや大豆スイーツも人気。全品テイクアウト可能です。



<執筆>

DOMO+編集部

アルバイト・パートお役立ち情報を収集・配信しています。現在就業中の方にはお仕事ライフがもっと充実したものになるように、これからシゴト探しをする方には自分にぴったりのお仕事に出会えるよう情報提供でサポートします。

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