ドーモプラスがオススメのライブ・イベントを定期的に紹介。今回は、11月4日(金)に渋谷CRAWLで開催された、『衣食住音vol.15~来世は東京のイケメンバンドマンにしてくださーい~』の模様をお届けします! 全国から未来を担う若手バンドが集結した特別な一夜をレポート。

いつか大きなステージに立つようなアーティストがライブハウスに集うのは、決して特別な日ではない。多くの人にとってはありきたりな1日を、彼らは積み上げていく。誰かにとっての『大事なバンド、忘れたくないバンド』になるために。

11月4日(金)、渋谷CRAWLで開催された『衣食住音vol.15~来世は東京のイケメンバンドマンにしてくださーい~』は、そんなひたむきに夢へ突き進む若者が肩を並べたイベントだった。北は北海道、南は福岡・広島から未来を担うバンドが集結した。

TRiFOLiUM



オープニングアクトを飾ったのは、札幌のTRiFOLiUMだ。前日まではフジタ(Gt./Vo.)のみが出演する予定だったのだが、メンバーからの熱いラブコールがあり、フジタの弾き語りで1曲・バンド編成で2曲を披露するステージとなった。

シーガルのアコースティックギターを片手に、弾き語りでフジタが披露したのは『anemone(acoustic ver.)』。どこか挑戦的な服装と相反する優しい歌声は、北海道の雪のように清らかで柔らかい。出で立ちは堂々としていて大人っぽい彼だが、時折見せる笑顔はまだあどけない18歳だ。

MCでフジタが「バンドー!」と叫ぶとメンバーが登場。バンド編成で披露した『Rainy Day』は、歌謡曲っぽいメロディーが特徴的なロックチューン。会場からは自然とクラップが沸き、メンバーはその光景に目を細めた。

間をあけず、フジタの弾き語りにより導かれたのは『muffler girl』。抑揚の表現が上手く、感情の波が随時押し寄せるような感覚に陥る。それに重なるフジタの歌声は甘く切なく、会場には一足早く冬の風が吹いていた。限られた15分という時間の中で、しっかりと爪痕を残しステージを後にした。

Substute



続いて登場したのは広島のSubstute。5つの拳をステージで合わせると、ショータイムのスタートだ。「全力で行きます!かかってこい!」という掛け声と共に始まったのは『クスリ』。レスポールとテレキャスターにより奏でる音は、腹の底に響くメロコアサウンドと軽やかさを併せ持っていた。1曲目から飛んで跳ねて騒ぎ倒す彼らの姿は、最後までスタミナが持つのか心配になってしまうほどである。

泥臭い曲調とハイトーンのきいたギターソロが特徴的な『ホームレス(仮)』、Substuteの熱さを凝縮したような『静止した世界』と曲は続いていく。『何も言わないで』は、ドラムのおしゃれなソロで導かれた。スィング調の曲は、これまでの曲とは打って変わってドポップである。曲中でRyosuke(Vo.)がKan(Gt.)に絡みながら歌う様子が、とても微笑ましい。

Ryosukeはブレスを深く吸い「『記憶』」と、最後の曲をコール。この日1番のグルーブを、これでもかと魅せつける演奏はまっすぐに胸に突き刺さる。がむしゃらで泥臭くて、まっすぐにしか進めない。そんな彼らの魅力が凝縮されたようなステージは、忘れてはいけない<何か>を人々に思い出させたことだろう。

J-ANKEN



衝撃的なMCで封を切ったのは北海道のJ-ANKENだ。SE代わりのセッションで一気に観客を惹きつけたかと思うと、1曲目の『アンダーグラウンド』から変態的な音楽を会場に響かせる。早口言葉のような歌詞もあおい(Vo.)にかかればお手の物だ。

続く『怪盗ダンスビート』は祭りのリズムが癖になるハッピーナンバー。あおいによる曲中の振付指導も行われ、サビでは会場全体で踊って盛り上がった。そのパフォーマスは、エンターテイナーそのものである。ギターの速弾きソロで始まる『フィクション』、あおいの声の良さが際立つ『calima』と自身の技量を余すことなく発揮する。

ラストソングとなったのはサイケデリックな空気感が漂う『urban girl』だ。妖艶なベースソロ、ハイトーンを効かせたギターソロと見せ場もしっかりとこなす。終盤あおいがフロアに降り、暴れながら全力で歌う姿は圧巻だった。リズムセンスが抜群で演奏力も兼ね備えた彼らが、本州で名を馳せる日も近いだろう。

BARICANG



ステージに登場した瞬間から圧倒的な貫禄を魅せつけたのは、BARICANGである。ノホリ(Vo.)がケガをしていたため、イトウ(Ba.)がボーカルも務めるというイレギュラーな体制での出演となったのだが、そのパフォーマンスは全く遜色がなく「4人揃ったらどれだけすごいことになるのだろう」と、期待せざるをえないものだった。

1曲目の『BAYSIS』から熱い演奏は繰り広げられる。フルアコの響きを十分に理解したギターは、雑音になりがちなハウリングさえも音の厚みに変えていた。勢いそのままに『ありふれた日々』へと続いていく。イトウが披露する渾身のボーカルは、ノホリの分までやり遂げるのだという強い意志が感じられた。

ハイハットにより導かれたのは、バスドラのビートが気持ちのいい『HalloDay』。ポップ・ロックといった感じの曲調は、初めての人でも聞きやすく耳なじみがいい。『バイバイ遊び』は、テクニカルなドラムソロから始まった。それに続くセッションの一体感が最高で、体の芯から揺さぶられる。

締めの1曲となったのは『タイムカプセル』。目の前には大勢の観客がいるのにも関わらず、一人一人に届けるように唄うイトウの姿は勇ましく熱いものがこみあげる。汗を垂らしながら手を抜くことなくライブする彼らの姿は、“全身全霊”そのものだった。「最高に楽しかった、ありがとう!」と叫び、彼らはステージを後にした。

ポルカドットスティングレイ



打ち込みが流れるなか登場したのは、福岡のポルカドットスティングレイだ。雫(Vo.)は不敵な笑みで、『ハルシオン』から観客を悩殺する。グルーブ感満載の演奏に、フロアからは自然とクラップが沸く。「新曲やります」と宣言し始まったのは『ミドリ』である。ドラムとベースのビートが効いている曲で、それに乗るギターはキラキラとしていて星屑をこぼしたようだ。

キラーチューンである『テレキャスター・ストライプ』、ギターのカッティングの響きが心地よい『シンクロニシカ』とノンストップな演奏が続いていく。「高学歴キャバ嬢になったつもりで聴いてください」と紹介されたのは、全国流通したE.P『骨抜き』のリードトラックである『人魚』。

ダンスホールに流れているムーディーな曲調は、雫の妖艶さがよく引き立つ。チョーキングを駆使したギターソロとスラップを効かせたベースのフレーズが、色っぽさをより一層増幅させていた。

ラストを飾ったのは、祭りのリズムがきいた『エレクトリックパブリック』である。自然と体が動いてしまう曲調に、会場が大きく揺れた。その実力とカリスマ性で、オーディエンスを“骨抜き”にしたのだ。

kobore



トリを飾ったのは府中のkoboreである。深いブレスを合図に披露された『声』は、佐藤(Vo.)の響きある優しい声が引き立つ1曲だ。その曲の穏やかさだけでも感慨深くなってしまうほどなのに、セミアコにより奏でられる響きのあるギターソロは更に涙腺を刺激する。

続く『幸せ』でも、まっすぐな思いを会場にぶつける。難しい言葉を使わず変な言い回しもせず、真っ向勝負で今を伝える彼らは間違いなく“かっこいい”。「最高のラブソングを歌います」と告げ始まったのは『おやすみ』。スローテンポで優しい曲の中には、感情がギュウギュウに詰め込まれていてエモい。

ハイハットの刻みによって、間髪あけずに『涙のあと』へと導かれる。突如、佐藤のギターから音が出なくなるハプニングに見舞われたが、「こういうこともあります!ハッピーに行こう!」と全く動じる様子を見せない。

ピンボーカルのままラストの『当たり前の日々に』でも、堂々のパフォーマンスを魅せつけた。切ない歌詞とは真逆ともいえるポップな曲調に、会場の熱気も最高潮だ。中間部でのエモーショナルなセッションからのキラキラとしたギターソロは、星空を流星が駆け抜けていくよう。最後の「愛している」という歌詞も大切に伝えきり、“今”という“ズレのない0秒の世界”を観客に伝えて彼らはステージを去った。
誰かにとっての『大事なバンド、忘れたくないバンド』になるのは容易いことではない。それでも彼らは届け続ける。『ずっと何かを、誰かを探している』人に届くその日まで。

文:坂井彩花
Photo:飯島春子


12月3日(土)、横浜Bayjungleにて『衣食住音Vol.16~来世は東京のイケメンバンドマンにしてくださーい~』が開催されます。今回のイベントの後夜祭と銘打たれたイベントで、今年の『未確認フェス』優勝バンドであるYAJICO GIRLや準優勝のThe Lump of Sugarなどが出演!これからのバンドシーンにとって欠かせないバンドが目白押しです。

【LIVE INFO】

【衣食住音 Vol.16~来世は東京のイケメンバンドマンにしてくださーい~】
2016/12/03(土) open 14:15/start 14:45
前売り ¥2000/当日 ¥2500 (各1D別)
O.A. 室井雅也/オレスカバンド/Su凸koD凹koi/デフォルメニッポン/ユレニワ
リリィ、さよなら。/Althea/加速するラブズ(京都)/kobore
YAJICO GIRL(大阪)/The Lump of Sugar(京都)
Food:ちのちー屋台

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